ヒトガタさんの小説1

本文

木板が整然と填められた廊下。火照った身体が、足元から静かに冷やされていく。
 ひたひたと、椎名真冬は足音を押さえながら、その廊下から自室へと向かっていた。
 血の繋がった姉とは別々の部屋。その姉があまり母親を迎え入れようとしないのに対し、真冬はそこまで拒絶をすることはない。
 床と同じように冷たいノブを捻って押し開けると、乱雑とした本やゲームが特に目立つ。ベッドは隅の方で静かに頓挫しており、その横ではパソコンが大半を占めた学習机が肩身が狭そうにしている。
 ふぅ……、と桜色の唇から小さく息を吐いて、真冬はベッドへと腰かける。
 調子が悪いのだろうか。今日は杉崎×中目黒のめくるめく物語も、まだレベル上げの途中のオンラインゲームも、全くする気になれない。
 いや、違う。ずっと一つのことばかり考えているからだ。脳裏には一人の少年のことばかりが浮かんでいた。
 生徒会の先輩である、杉崎鍵のことを。
 もう、季節は冬になってしまった。自分の名前の季節。それが過ぎれば、もう彼女たちはその聖域に入ることはできない。
 それすなわち、彼との別れ。
「…………っ、し、仕方がないことなんです。お姉ちゃんは、真冬のことを考えてくれているし、そんなお姉ちゃんにした約束を、真冬は、破りたくないんです」
 自らに言い聞かせるような独白は、夜の静けさに染み込んでいき……やがて、空しい寂しさだけが残る。
「……先輩」
 告白した時も、結局恥ずかしくて恥ずかしくて、心もともないことを彼に言い放ってしまった。そのことで嫌われていないのか、ずっと彼の顔色を窺っては安堵していた。
 けれど、本当のところはどうなのだろう。果たして自分は彼に好かれているのだろうか。
 廃人で、引き籠もりで、ニートで、ゲームばっかりしていて、しょっちゅう彼を題材にした小説を書いていて、いつも困らせている自分を。
 対して彼女の周りには、明らかに差がある。姉である椎名深夏は彼と同じクラスだし、紅葉知弦はスタイルが抜群、会長である桜野くりむに至っては、いつも鍵は彼女を見ている。
 諦めたつもりではない。けれど、彼を振り向かせれる自信が、自分には全くないのだ。
「…………うぅ」
 だから、逃げる。現実を見ずに、自分の世界へ。
 妄想が得意なのは幸か不幸か。真冬は目を閉じて、自分の都合の良いように世界を回転させた。

 *****

 そう、それは生徒会も終わった夕暮れ時。理由なんていらない。妄想に理由なんて求めなくていい。そして、彼と自分はその場所にいて。
『…………真冬ちゃん』
 いつになく真剣な表情で、彼の唇は望んでいた言葉を呟いてくれる。
『俺は、真冬ちゃんが大好きだ』
『えっ、ええぇっ』
 きっと自分はひどく狼狽するだろう。ひどく慌てているのを、彼はもう一度同じ言葉を贈って抑えてくれるんだ。
『真冬ちゃんのことが、大好きだ』
 いつも気取っている表情が、いつになく赤く染まっていて、自分はきっと、しばらく頬を染めながら忙しなく視線を移して、やがて、
『…………はい』
 頷くんだ。
 すると唐突に振りかかる、唇同士の重なり合い。
 驚いた自分を待たずに、こちらの唇を割ってその火のように舌が強引に入ってくる。

 *****

「……んっ」
 思わず洩れた、小さな声。気がつけば、いつの間にか己が秘部を細い指が、パジャマ越しに擦っていた。
 実は真冬、まだ直接そこを触ったことは一度もない。パジャマ越し、もしくは下着越しでなら、いくらかはあった。だが、その秘裂を直接触って弄ろうとまでは、少しばかり潔癖症の傾向がある彼女にとってはどこか躊躇われたのだ。
 こすこすと、そのまま服越しに、静かに、しかし強めに指で陰部を擦り続ける。

*****

『んっ……、んんっ、ふぅっ……』
 濃厚なキス。彼の舌が、魔女を炙る火刑の炎のように、熱く蹂躙していく。それを真冬は逆らうのではなく、あえて受け続ける。彼からの愛を受けるという感覚が、いつになく彼女を興奮させていく。
 だから鍵が息継ぎに唇を離した後も、身体の力が抜けて床に倒れ込み、荒く呼吸を繰り返しながら、物欲しそうにじっと彼を見つめる。
 彼はその視線に了解したかのように、真冬に近づくとスカートを捲り、地味な白色の下着越しに、恥部の部分を優しく擦った。
『ふぁっ』
 一瞬だけで快楽という名の情報が、一気に端末から全体へと広がって、身動きするのも身体が言うことを訊かない。やがてその行為が、少しずつ早くなっていく。

 *****

 妄想に合わせて、真冬の指の動きも同調するかのように、徐々に徐々に速くなっていく。その度に、慣れない刺激に秘裂は悲鳴を上げる。
 風呂あがりで、もう身体は冷えたはずが、自慰行為をしていく内に段々と熱くなってくる。
 風呂からあがったばかりというのは、血液の流れも良くなっている所為か、いつもよりも敏感に感じている。真冬は体を横にして、赤子のように丸くなって、さらに自慰を続ける。

 *****

 鍵は初めてだからか、与える刺激の緩急をつけるのもまだたどたどしかったが、しかし不慣れな真冬にとってはさほど変わらなかっただろう。しばらく互いに頬を赤らめながら、その行為に没頭する。
 ショーツがじくじくと濡れ出し、恥ずかしくて真冬が目を逸らしたその隙に、おもむろに鍵は彼女の胸を鷲掴みにする。『あ……っ』と真冬は小さく悲鳴を上げた。
 小さな胸を、優しく押したり捏ね繰り回したり。一瞬だけ胸の方へ意識が集中した瞬間、今度は秘部の方で鋭い刺激を受けて、声を洩らしてしまう。
『あっ、はぁぅ……っ』
 今までショーツから弄っていた手が、直接触れてきたのだ。男性にそこを触られるという嫌悪感と、それをはるかに上回る、彼がそこを触っている、ということの心地よさ、悦びが来襲してきて、同時に制服の上から弄られていた起伏の少ない胸も、いつの間にか露出され、同じように弄られていて、真冬はもう何が何だか分からなくなってきていた。

 *****

 そう、想像したと同時に真冬は身体を仰向けに体勢を変えて、パジャマのボタンを邪魔そうに外していき、そして白いフリルのついたブラを退けると、慎ましい胸が冷気に曝される。そして空いていた片方の手に、乳房を握らせた。
「ん……っ」
 身体を小さく震わせる。先端は屹立して自己主張しており、それが少しばかり自分の淫らさを突きつけられているような気がして、恥ずかしかった。
(ぁ……っ、それにしても、先輩、小さいのと大きいの、どっちが好きなんでしょう)
 脈絡もないことを、ふと考えた。

 *****

『はぁう……っ、は、あっ、ぅふ……っ』
 ゆっくりと慣れさせるような手つきで、女性性器と胸の両方を弄り続ける。少しずつ慣れてきたのか、緩急をつけて快楽の波を操られるようになっていた。
 とろとろと秘部から愛液が滴り落ちていく。彼はそれを救っては、リップクリームかなにかのように塗りたくっていく。それがまたさらに真冬の欲求を滾らせ、また漏らす。
 自身の下腹部と胸部の痺れに、真冬は喘ぐ他ない。

 *****

 とうとう真冬は、パジャマと一緒にショーツを太腿の中ほどまで下げた。それに愛液が釣り糸のように後を追い、勢いを失った後は力なく足の付け根に腰を下ろした。
 何度か恐る恐ると突こうとしてみたが、やはり直前に手を引っ込めてしまう。しかしふとした拍子に指が恥部に触れてしまい、
「ふぁっ……」
 ビリっと、体に電流が走った。
 一度触れたのなら、触らなくても大して変わらないと思い、真冬は意気込んで、無毛の陰部に恐る恐ると触れてみた。
 一瞬、腰を浮かせてしまう。
「ひゃ……っ」
 布置越しとは明らかに違う、あまりにも生々しい感触に、真冬はすぐに無心で触り始めた。その度に開き始めてきた口から、甘い声が洩れる。

 *****

 とうとう彼は弄っていた指をふと離し、わずかなアイコンタクトで合図すると、忙しなくズボンのベルトを外し始める。初めてということで緊張しているのか、指が悴んだように震えていたが、やがてズボンからぬっ、と巨大なイチモツを取り出した。
 すでに先走りでてかっているソレ。それを真冬の恥部に宛がい、擦り合わせると、両方から液が染み出てくる。
『はぁ……っ、んっ、はっ、あっ……』
 そして互いが程良く解れた頃に、彼は男性性器を、女性性器に照らし合わせる。一瞬、絡み合う視線。そして、―――挿入る。

 *****

 妄想と現実の快楽が大分引き離された気がして、真冬は寂しく思った。
 そこで真冬は、濡れた秘部に指を当てて、愛液を絡め取ると、それを潤滑液にして―――流石に怖いので―――人差し指を一本だけ、陰部を開いていき、中へと音を立てて挿入こんだ。

 *****

 水の中で無理矢理体を動かしたような音が響く。途端に、頭まで伸びてきたのではないかと錯覚すほどの衝撃。イチモツは一気に真冬の処女膜も破って、最奥部へと到達する。あまり痛みを感じさせないようにという、彼なりの気遣いのつもりなのだろうか。
 がつん、と全身がトラックで撥ねられたような激しい痛みに、しばらく真冬は彼の制服を破れそうなぐらいに強く掴んだまま、必死に涙を堪えていた。鍵もそれを察しているのだろうか、真冬がだいぶ楽になるまで、そのままの格好で、頬を流れた雫を舐めとっていた。
『先輩……っ、もう、動いてもいいですよ……』
 そう告げた途端、餌を前に待ち構えていた犬が飛びつくように、鍵は一気に腰を振り、ピストン運動へと入って行った。
 真冬にとってその力は予想以上に強く、声が漏れるのを隠しきれない。
 ぱんぱんと、リズミカルに肉が叩きつけ合う音が、無人の生徒会室に響く。その度にずちゅずちゅと濡れた音が、恥ずかしくなると同時に、一層の性欲を膨らませる。

 *****

 ぬぷっ、という音と同時に、指が吸い込まれていく。
「ああぁ……っ!」
 今まで以上の快楽に、真冬は身をよがらせる。本当の彼の物に比べたらはるかに小さいだろうけど、それでも少しでもイメージに近づけたかった。
 少しずつ外に開いて行き、二本目の指を入れる。
 じゅぽ……っ、
 部屋は防音設備が整っていない。外に漏れないようにと、今さらながら思いだした真冬は必死に声を抑え込む。

 *****

 冷たい床の温度を背に、真冬は快楽に乱れた。痛みが引いた今は、もう性行為での悦びばかりが頭に流れ込む。
 淫らな音。淫らな彼。淫らな自分。
 膣が縮小し、肉棒を絞り上げた瞬間に、鍵のモノは一気に種を撒き散らした。
 胎内に感じる熱い流動。入りきれずに結合部から溢れ出した精液は、ややあって真冬の太腿へと歩いていく。
 熱さに包まれて、真冬は目を閉じた―――――

 *****

 今まで眠っていたかのような倦怠感が、ずしりとその身に圧し掛かる。ゆっくりを目を開くと、自分の部屋。
 のろのろと上体だけ起こす。と、下半身が寒い。
 そこでようやく、自分が小さな絶頂で潮吹いたのだと気づいた。
「…………真冬、なんだか先輩に影響されて、変態さんになってる気がします……」
 この場にいない彼に向って、にっこりと辛口を吐く。
 そのままの格好でいるのもいとなわず、真冬は、上を見上げた。そこには無機質な天井しかない。しかし真冬は、その言葉が彼に届くことがなくとも。
「…………―――――好きです。杉崎先輩」
 その言葉は冬の静寂に優しく包まれ、やがて――――――消えた。


参考情報

2009/11/13(金) 02:10:45~2009/11/13(金) 02:12:07で3レスで投稿。
ヒトガタさんの生徒会の一存のエロ小説を創作してみるスレでの初作品。



  • 最終更新:2010-07-05 12:08:33

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