ミヤモンさんの小説1

本文

題名:今日も、くりむは俺の部屋へやって来る


「んぁ……どんどん固くなってくる」

くりむの唾液と俺の性器からひたすら漏れ出す汁が、くりむの口内で混ざり合い、淫乱な音を発している。
くりむはTシャツに、パンツだけのラフな格好だった。
首や顔を動かすたびに、襟元の隙間から控えめな胸が見える。桃色の乳首は微かに隆起していた。
とても可愛らしく、淫靡なものだった。

「ん……お兄ちゃん……どう? 気持ち良い?」

くりむは俺の性器の根元を細く美しい指で支え、亀頭の先の部分を舌でいやらしく舐め始めた。
俺は知らぬ間に息を荒くしていた。
亀頭の敏感な部分を舐められると、自分でも驚くくらい可笑しな声をあげてしまう。

「ふふ……お兄ちゃん、かわいいね」

俺の荒い鼻息に気付いたくりむは、再び口の中へ俺のペニスを入れた。
そして、先ほどとは比べ物にならぬ速度で、顔を上下に動かして刺激を与え始めた。

「うぅ……もう出るかも……」


俺の脳内は快感で一杯になっていた。射精をしたい。くりむの口の中へ吐き出したい。
そんな淫らな思考だけが、今の俺の生きる目的のような心地さえしていた。

「いいよ……お兄ちゃん、出して。私の口の中で、お兄ちゃんの精液出して……」

くりむはわざと俺を興奮させるかのような発言をすると、
より一層激しく動かし、そして、口内で舌を動かし始めた。
どこでこんなことを覚えたのかとか、なんでこんなことをするのだとか、
そんなことはどうでもよかった。ただ、くりむが兄である俺に奉仕してくれることだけが快感だった。

「うっ」

小さく漏れる俺の声と共に、ペニスが激しく痙攣した。
そして、くりむの口内で激しく脈打つと、射精した。

くりむも一瞬驚いたように目を丸くしたが、すぐにとろんとした目になり、
ストローでも吸うかのように俺のペニスを吸い始めた。俺は頭がおかしくなりそうだった。

「一杯でたね。んっ……はぁはぁ」


くりむはそう言うと精液をごくりと飲み込んだ。

射精後だというのに、まだ俺の性器は勃起していた。我慢ができなかったのだ。
俺は、手や口をティッシュで綺麗にふき取っているくりむの元へ行くと、後ろから胸部を触った。
そして、優しく揉もうと手のひらを胸の形に合わせた。乳首が固くなっていた。

「きゃっ!」

くりむはそう叫ぶと、体を大きく捻り、俺の腹を両手で思いっきり押した。
不意打ちの反攻に、俺はすぐ後ろにあったベッドに倒れこんでしまった。

「あ、ごめん……」
「ううん、いいの……」

くりむは自分を抱きかかえるかのように丸くなり、うずくまってしまった。全身は微かに震えている。
俺はどうすればいいのかわからなくなり、くりむの元へゆっくりと歩いていき、肩を触ろうとした。

「やめて! ……あ、ごめんなさい……」

再びくりむは俺を拒絶した。一瞬顔を上げたくりむの瞳は、潤んでいたように見えた。


俺は静かにズボンを履き、精子の付いたティッシュを拾うと、部屋を出た。
あの部屋へいると、くりむに何か害を与えてしまいそうな気がしたからだった。

俺は扉を静かに閉め、自分の部屋を後にして、トイレへティッシュを捨てに行った。

耳を澄ますと、くりむの泣く声が聞こえた気がした。

俺はトイレの便器の中へ丸まったティッシュを投げ入れる。
友人が、詰まるとか詰まらないとか言っていたが、そんなこと今の俺にどうでもよかった。

くりむのあの拒絶。とても心が痛かった。
俺が悪かったのだろうか。やはり越えてはいけない線があったのだろうか。
いや、くりむが毎日のように俺にしてくれることだって、それはいけないことなのかもしれない。

そう考えれば考えるほど、背徳的な感情が俺の全身を包み込み、
俺をどこか奈落の底へ追いやっていくような感覚がした。

くりむのとても怯えたような声と反応。
それだけが俺の脳内を繰り返し漂っていた。


トイレのレバーを動かし、ティッシュが流れていく。
渦を巻き、小さな便器の中をぐるぐると廻っている。

まるで俺の今の感情のようで、非常に不愉快だった。
なのにそれを見続けてしまう自分が何だか愚かしかった。

白い物はどこか遠くのほうへと流れ去っていった。

でも、くりむと、俺の感情は何処かで詰まっている。
そんな気がした。

部屋へ帰ると、くりむの姿はもうなくなっていた。もう自分の部屋へ帰ったのだろう。
俺は安心していた。もう一度、くりむと顔を合わせたら、どういった反応をすればいいかわからなかった。

俺は電気を消し、数分前まで、くりむが俺のペニスを熱心にしゃぶっていたベッドに横になった。
いつもなら、それを想像するだけで血液が身体の下部へと流れ込んでいく。
でも、今日はそんな気持ちになるわけがなかった。俺は静かに夢の中へ入っていった。

翌日、朝食の場でのくりむはいつもの姿だった。
馬鹿みたいに笑顔を振りまき、詰まらない芸人の事情について熱心に俺や母に語っていた。


俺の視界の右には母が、左にはくりむが座っている。
正面には、いつものように空になった皿や御わんが伏せておかれている。
それは、今も、これからも絶対に満たされることのないもの。

「お兄ちゃん! あのね、あのブラマヨのブツブツのほうがね!」

左から入り込んだ声は、脳を経由せずにただ右のほうへと流れていった。
意味をよく理解できない俺は、ただくりむの話題に合わせて相槌を打つくらいしかできなかった。

「ねえ、お兄ちゃん、聞いてる?」
「えっ、あぁ、聞いてるよ」
「嘘だぁ」
「嘘じゃないよ」
「嘘だよ。聞いてなかったよ。お兄ちゃんの嘘つき」

このくりむは何を言っているのだろうか。何に対して俺を嘘つき呼ばわりしているのだろうか。
そもそもこのくりむは何なんだ。何故、こんなにも笑顔な顔をして俺に話しかけてくるくせに、
夜になったら俺のペニスを美味しそうに舐めまくり、精液を飲んでいるのだ。
仕舞いには、俺を拒絶までした。意味がわからない。このくりむは、何を考えているんだろうか。


「嘘じゃないって言ってるだろっ!!」

俺は左手を机上に叩きつけると、立ち上がっていた。
牛乳で満たされていた硝子のコップが倒れ、くりむのほうへと流れていた。

「お、お兄……ちゃん?」

くりむは怯えた表情で俺を見上げて、母は何が何やら解らない様子でただ固まっていた。
くりむのこの表情、昨日と一緒だ。何かに怯え、逃げ、微かに反攻している小さな眼。何なんだ。

牛乳が机上からくりむの膝元にぽつりぽつりと落ちているのが見えた。
しかし、くりむはそんなことに気付いていないのか、ただ俺の瞳を今にも貫くのではないかという鋭い眼で見ていた。

「気分が悪い、ご馳走様」

俺は勢い良く駆け、リビングを後にした。

この感情は何なんだ。

俺の胸中に何かモヤモヤとしたものがぐるぐると廻っている気がする。


腹が立つ。なのに哀しい。くりむに対するこの感覚は一体……。

「なんなんだよ!」

俺は咆哮にも似た声を上げ、階段を駆け上がり、自分の部屋へと逃げ込んだ。

部屋に入ると、俺の唯一安心できるベッドに潜り込んだ。ここだけが俺の安息の地だった。
そして、朝起きたばかりだというのに、目を瞑り、夢の中へ逃げ込んだ。

何か粘り気のある液体が触れ合っているようなよくわからない音がする。
俺は目を覚ましていた。何なのだろう、よく耳を澄ましてみた。
それは俺の下半身のほうから聞こえていた。同時に、俺はペニスの部分に違和感を感じた。

ベッドの布団を捲ると、くりむが俺の固く勃起したペニスを舐めていた。

「ふふふ」

くりむは不敵な笑みを浮かべならば、ただ何かに取り付かれたかのように亀頭を咥えている。

「おい、勝手に何やってんだよ! 止めろ!」


俺はただ感情に任せ叫んだ。なのにくりむは気にも留めずに、
「ふふふ、気持ち良い癖に……んっ……ぁん……ビクビクしてる」
と上目遣いで言った。

「だから、止めろって言ってんだろう!」
俺は布団を全て床へ下ろし、くりむの肩を掴み、投げるようにくりむを突き飛ばした。

くりむは床に倒れるように落ちると、ただ顔を下に向け黙ってしまった。

「な、なんなんだよ……一体」

俺の問いに、くりむは答えてくれようとしてくれない。ただ、ひたすら床の模様を見つめていた。

時計の針の音以外何も聞こえぬ静寂の空間。
それを突如としてくりむが壊した。朝食の時のような笑顔をしながらだった。

「……お兄ちゃんのおちんちんは私のものなの、ふふふ」

それだけ。それだけなのに、くりむの発言は俺に得体の知れない恐怖を与えた。


何を言っているんだ、こいつは……。

数日前まで、ただ俺に快感を与えてくれるためにフェラチオをしてくれていたくりむ。
それは、俺の願いを聞いてくれるという、くりむ側から見ればただ受身のことだった。
なのにこれは何なんだ。俺に快感を与えるのが目的ではない。くりむが自主的に行なっている。

くりむが淫乱になったとか、そんな話ではない。何かがおかしいのだ。
何かに取り付かれ、男性器にむしゃぶり付きたいと言う得体の知れない願望がくりむを動かしているのだ。

この行為でくりむが俺に与えてくれるのは快感ではないあ、ただ奇怪な恐怖だけだ。

母のいる前でのくりむと、ベッドの中でのくりむは人格が変化したのではないかと疑うくらいに違う。
俺がくりむにこのようなことをさせてしまったから、おかしくなったのだろうか。
近親相姦とはこのような代償を必要とする非常に危険な行いだったのだろうか。

俺の拒絶など忘れたかのように、くりむは再びベッドに上ると、俺の小さくなったペニスを舐め始めた。
くりむに対する恐怖感が俺の身体を束縛し、抵抗することができなくなっていた。

ペニスはくりむの口内で段々と固くなる。
くりむの柔らかく可愛らしいピンク色の唇から、時々唾液が垂れ、俺の身体に落ちた。


くりむは右の手のひらで睾丸を優しく包み込むと、強くも弱くもない絶妙な強さで揉み始める。

人間という生物は快感には耐えられないのかもしれない。
先ほどまでの恐怖感が嘘のように、俺の脳内を心地よい快感が襲い始める。

波のような快感は、脳内を行ったり来たりを繰り返し、その余波はぺニスをビクビクと痙攣させた。

そして、くりむは亀頭を口内に包みこみ、睾丸を触っていた手を竿に置いた。
くりむは柔らかく穢れのない繊細な指で竿を扱き、口で予想もできぬ不規則な動きで嘗め回す。

「お兄ちゃん、もう出ちゃう? もう出ちゃうんでしょ? おちんちんビクビク言ってるよ? ふふふ」

もう駄目かもしれない。

「お兄ちゃん精液出しちゃうの? 血の繋がったくりむの小さいお口に粘々の汚い精液出しちゃうの?」

もう駄目だ。

「ふふふ、変態だねぇ、お兄ちゃん。変態さんだねぇ。ふふふ」


俺はくりむを押し倒した。

「あっ……」

くりむは小さく声を漏らした。

恐怖感、快感を越え、俺の身体はくりむを犯すことしか考えられなくなっていた。
くりむの可愛らしいフリルの付いたスカートを捲ると、桃色のパンツが現れた。
それを乱暴に引っ張り、右足から脱がした。左足はうまく取れず、腿の処で止まっていた。

俺は当然くりむの性器は濡れていると思い、割れ目にペニスを押し当てた。
しかし、全く濡れていなかった。何故、一体こいつは何なんだ。

だが、俺は無理矢理ペニスをくりむの膣の中へ押し込んだ。
自分の性器から漏れる汁とくりむの唾液のお陰か、一応入れることができた。

「やだ……い、痛い……お兄ちゃん」

ざまあみろ。
俺は血の繋がったくりむに対してそんな感情を抱く事に対して何の不安も疑問もなかった。


俺は知能の持たない動物が生殖をするかのように、ただ腰をふり始めた。

「や……んっ……やめ……ぁん」

感じているのか感じていないのか。そんなことはどうでもいい。
ただ、俺が快感さえ感じられればいい。

「お兄ちゃん……痛いよ……んぁん……ぁっ」

何故、くりむは突然ペニスを舐めることに快感を覚えたのか。

「お兄ちゃん……お兄……ちゃん」

何故、くりむは濡れていなかったのか。

「やめて……お、お願い……」

何故、くりむは自らが攻められる事を嫌がるのか。

「んぁ……あぁん……んっ」


そんな疑問は快感の海の中へ揉まれ消えていく。

俺は射精した。
くりむの幼い膣の中で果ててしまった。

くりむは泣いていた。

そして、こう潰れそうな声で呟いた。

「どうしてなの……パパ」

「えっ……」

突如として俺の全身を貫くような痛みが襲う。
そして、忘れもしないことの発端が俺の網膜に次々と映し出されていく。

「ねぇ、パパ。ふぇらちおってなぁに?」

ある日、愛しの娘がそんなことを父である俺に訊いてきた。
どこでそんな言葉を覚えてのか咎めるべきだった。


なのに、俺は、

「フェラチオっていうのはね――」

と説明してしまった。
自分でも何故娘に対してそんなことをしたのかわからない。ただ何となくだった。
そこで終わると思ったのに、娘は驚くことを口にした。

「へぇ……なら、パパにふぇらちおしてあげる!」

俺はもちろん叱った。それが義務であり、常識だったからだ。
だが、幼い娘にとってそんなことは関係なかった。

「なんで、肩を叩くと気持ちがいいのは大丈夫なのに、何でおちんちんはいけないの?」

俺は逃げるように自室のベッドへと逃げ込んだ。娘はリビングで一人立ち尽くしていた。
そして、俺は寝ていた。

ふと気が付くと、娘は俺のペニスを一生懸命舐めていた。
酷く醜いペニスを舐める愛おしく美しい娘とのギャップにひどく興奮を覚えてしまった。


その日から、俺と娘の人生は狂ってしまった。

俺に妻はない。いや、正確には離婚をした。
俺の会社の経営が危うくなってきた時、妻は見知らぬ男と出て行ってしまったのだ。

俺は毎日泣いた。娘は何故母がいなくなったのか、何故泣いているのかをわかるはずもなかった。
でも、娘は父の感情と同調し泣いていた。

そんな絶望の日々の中、フェラチオというのは両者にとって不安の種をかき消してくれるものだった。

一生懸命になってくれる娘は愛おしく、そして興奮した。
娘も父の為に何かをするということに何かしらの快感を得ていたのかもしれない。

それは何年も続いた。

娘が中学に上がっても、高校に上がっても、ただひたすら続いた。
食後に歯磨きをして、夜の風呂に入る、と同じくらいの習慣になっていた。

しかし、その習慣は捻じ曲がった幻想を生み出していたのを俺は気付いていなかった。


俺には兄弟がいるが、男ばかりであり、くりむや姉というものに凄く憧れを持っていた。
その憧れは、近親相姦物のAVや卑猥な雑誌を見る度に肥大化していった。
そんなものを熱心に毎晩見ていた自分は、既に常識の道を反れたものだったのかもしれない。

いつからかその憧れや娘との習慣が捻じ曲がり、幻想となり、俺の世界を変貌させていた。
娘と父の関係である俺たちが、くりむと父という関係になっていたのだ。

今思えば、俺は相当の精神異常者である。

近親相姦物に興奮を覚える人間は、外道であり、下衆であり、屑である。

また、その捻じ曲がった感覚は虚構の存在すらも見えるようにしていった。
離婚していなくなった母、否、妻が見えるようになった。
ただ、俺に話しかけることはなかった。じっと朝食の机の傍で固まっているだけだった。

娘はただ笑顔で俺のペニスを舐めてくれていた。
それは、彼女にとって何も疚しい感情のないただのコミュニケーションだった。

それも一見非常識で理解不能な行動かもしれないが、娘には何の罪もない。


そのようにしてしまった俺が悪かった。

だが、俺の世界では、淫乱で、俺の精液を搾り取るただの性欲処理のくりむに見えていた。

人間、失格。

涙を流しながら、膣から白い液体を流している娘。
その無残な姿を父である俺が見下ろしながら、そう思った。

俺は放心していた。

必死で精液を膣から出そうと指を突っ込んでいる娘を見て、俺はどうすることもできなかった。
なんて、非常識で、下劣なことをしてしまったのか。俺の最後の宝になんて事をしてしまったのか。

それだけが延々と頭のなかを反復している。

娘は俺の部屋を出ると、どこへ行ってしまった。
父の部屋には、主である俺だけが取り残された。
まるで、世界で一人だけになったような気がした。


娘の性器は何一つとして濡れていなかった。当たり前だ。
性行為として娘は行なっていたのではない。ただ、肩叩きと同じ感覚で行なっていたのだから。

俺は人間ではないのだ。

くりむに、娘に、興奮を覚えるなんて、やはり、人間として、屑なのだ。
血縁関係のものが性行為をしたり、見たりするのは、この世のルール違反なのだ。

そんなことに気付いたのは、娘の心を砕いてしまった後だった。
もう時計の針の音すら聞こえない。

俺はベッドに再び潜り込み、目を瞑る。

今はもうベッドすら安息の地ではない。
夢の中に逃げ込むことでしか、俺が生きる術はない。

なのに中々眠ることができない。
無音なのだ。世界が静止しているのだ。

だから、眠れない。


世界が進まないから、眠るという次の段階へと進めない。

世界のルールを破るというのはこういうことだったのだ。

世界で生活する権利を剥奪され、
永遠に自らの罪について顧みなければいけないのだ。

あぁ、なんてことだ。

娘はとうとう一人ぼっちになってしまった。

自分のベッドで数時間、否、数日間、俺は罰を受けていた。
答えの既に出ている問題を、ひたすら考えさせれるという逃れられる罰を。

相変わらず世界は止まっていた。

なのに、何者かが階段を上る音が聞こえてきた。

一歩、また一歩。
少しずつ、俺の部屋へと近づいてくる。

何故、罪の懺悔を行なう世界に俺以外の人間、否、屑が入ってくれるのか。

部屋の扉の前で足音が消える。

それは非常に恐ろしい静寂だった。
ただの無音ではない。何かがこの部屋を圧迫するかのような感覚がした。
今にも壁を押しつぶし、俺の身体を粉々にしてくれるのではないかとも思った。

そして、扉がゆっくり開かれた。
ギィという鈍い音が、何故か反響して聞こえた。

扉の閉まる音は聞こえなかった。


今日も、くりむは俺の部屋へやって来る。

「お兄ちゃん」

心地よい声が俺の左耳に入ってきた。それは脳内を激しく反響し、懐かしさを思い出させた。
俺はベッドを捲り、声の正体であるくりむを見た。

真っ白なワンピースを着ていて、両手を後ろに隠し、身体を少し斜めにして笑っていた。

そして、笑顔のまま一歩ずつ確実に俺の元へ近づいてきた。

「お兄ちゃん、あのね、今日はね、良い事してあげる」

くりむは顔の頬を紅潮させながら、両手を後ろにしながら、モジモジしてそう言った。

「ふふふ、それはねー」

くりむは左手をこちらへと差し出した。
そして、くりむの白く美しいワンピースが真っ赤に染まり、一気に大人らしくなった。


くりむの差し出した腕の先を見てみると、何かが俺の脇腹に当たっていた。
母がよく料理に使用していた包丁であった。何故このようなものが脇腹に刺さっているのだろうか。

段々と視界がぼやけてきた。
身体全体の力が抜け始め、再び俺はベッドに寝転んだ。

やっと、眠れるような気がした。

くりむもこの世界の住人だったようだ。

くりむは倒れた俺の身体に乗り、何かをし始めた。
それが一体何なのか感覚が殺された自分にとって到底理解は不可能は話だった。

だが、この世に生を受けて初めての快感が俺を襲う。
くりむも同じだったのか、くりむの快感に悶える声が一瞬だけ聞こえた。

ある日から勘付いていた。

俺の犯罪行為や狂った感覚から抜け出し、
全ての苦痛、快感から開放してくれる唯一の方法。

それは、死ということを。


参考情報

2010/03/23(火) 06:55:25~2010/03/23(火) 07:00:45で23レスで投稿。
ミヤモンさんの生徒会の一存のエロ小説を創作してみるスレでの初作品。
最初は名無しさんだったが、前後のレスからミヤモンさんだと判断。



  • 最終更新:2010-07-08 02:01:12

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