◆VMSHVHTgwsさんの小説1

本文


「如何なることであろうとも事実は、包み隠さず言うべきなのよっ!」 
 会長がいつものように小さな胸を張ってなにかの本の受け売りを偉そうに語っていた。
 実に会長らしい名言だった。
 そこで俺はキュピーン、とひらめいた。
「もしかして、会長。俺への愛を包み隠さず言おうっていう決心がついたんですかっ!」
「なんで私が杉崎に惚れなきゃいけないのよっ!」
 会長は席をバン、と立ち上がりながら否定し、さらにバンとホワイトボードを指す。
「テーマはこれよっ!」
 白々としたホワイトボードに黒く太く大きな文字で『女装』の二文字が書かれている。
 ……女装!?
「ってあれぇ? なんで女装なんかに……」
「会長、どういうことですか? 是非詳しくお聞きしたいのですが! そりゃもう聞くまでは寝ません! 帰りません!」
「うるさいっ! 杉崎は黙ってて!!」
 会長はあたふたとしながらホワイトボードの文字を『女装』から『偽装』へ書き換える。
「誰なのよ! こんなイタズラをしたのは!!」
「ごめんなさい。アカちゃんの困った姿が見たくなってついやってしまったわ」
「ああ、そういうことだったのか……」
「何を落ち込んでるのよっ! 変態は鍵だけで充分よ! ってかいらないわよ!!」
 出た! 会長の三段ツッコミ。流石は会長。威力は破壊光線並みだ。
「それより会長。偽装ってどういうことだ?」

 椎名深夏が口を開く。
「さては、俺への気持ちを素直に言えず自分を偽装してたんですね!」
「だからなんで杉崎に惚れなきゃいけないのよっ!」
 全力で否定。
「素直に本当の気持ちを言ったほうが楽ですよ」
「だからなんでよ!! でも世の中が杉崎みたいなやつばかりだったら社会から偽装問題が消えるかもね……」
 またしても全力でツッコミ、ふぅと息を吐きながら遠くを見つめる。
「会長みたいに偽装するからこの世の中は良くならないんですよ」
「誰が偽装よっ!」
ああ、会長をからかうのはなんて楽しいんだ。これが生きがいっていうのか! 『……死にてぇ』なんて思うやつが馬鹿馬鹿しく思える。
「お前も会長フラグを偽装して立てようとするな!」
「偽装じゃない! 会長の本心だ!」
「言ってるそばから偽装じゃねーか!」
 口論はヒートアップ。
「ここは俺のハーレムだ! 全員俺の嫁だ!」
 しかし、その内容はとてつもなく下らない。って全然下らなくない!!
「偽りだらけだ!」
「絶望した! 偽装ばかりする社会に絶望した!!」
「それ自分に絶望してることになるだろっ! しかもパクるんじゃねえ!」
 流石に勝機が見えなくなったのでここらへんで口論は終了させておく。

 俺は疲れたのでうだーと机の上に突っ伏した。
「嘘偽りだらけの世の中なんて最低よ」
「嘘だ!」
 俺は机に寝かせた身体を勢いよく起こしながら叫ぶ。
「いや、使いどころ間違ってるから……」
「真冬もこの前、謳い文句に嘘をつかれました……」
 嫌な思い出でも思い出すように暗い表情を浮かべている。
「何かあったの?」
 会長は神妙そうに、訊ねる。
「はい、実は……」
 真冬ちゃんは怪談話をするかのような雰囲気というかオーラをだしている。
 もしかしたら相当嫌な思い出だったのかもしれない。
「言いたくなきゃ言わなくていいんだぞ?」
 俺はそう気遣っといた。
 しかし、その心配は無用だったようで、続きを語り始めた。
「実は、『ヘタレ攻め』と書――」
「ごめ、次に行こう」
 俺は嫌な予感がした。あまり聞いたことがない単語を聞いたのは気のせいだろう。
 とりあえず、止めておいた。
「ええ、これから話すところなのに……」

「それじゃ、次は私の体験談行くわよ?」
 そういうと、目をギラリと怪しく輝かせ、周りには黒いモヤモヤが……
 しかし、俺が止めようとしたときには知弦さんは語り始めていた。
「昔、男にプレゼントをされたの。高い宝石を。『給料三ヶ月分なんだ』って……」
「それ思いっきりプロポーズじゃないですか!!!」
 危ない危ない! 知弦さんが『昔』って言ってたことも考えると余計に危ない! しかも台詞が古い。
「まあ最後まで聞いてなさい。それで、私が本物だと思っていたその宝石は偽物だったの。それが分かった日に、新しい本物の宝石を買ってもらったわ」
  ……色々とツッコミきれない。
「知弦さん……本当ですか?」
「嘘よ」
「あっさりカミングアウトしないでください! その話自体嘘だなんて! リアルにありそうだったから信じるところでしたよ!」
「騙されるほうが悪いのよ」
「ああ、この人将来絶対詐欺師とかになりそうだよ……」
「私と結婚すればがっぽがっぽよ? どう私を攻略してみる?」
 自然と身体が震えている。警告してるんだろうか。
「け、けけけ結構です」
 声も何もかも震えている。
「キー君ったらまたまた。気持ちは偽装しちゃダメよ?」
「いえいえ、し真実ッス。いや、好きですけどその……あの、日本じゃ一夫多妻制は認められてないので……」
 なんとか逃げられた。

「別に日本じゃなくてもいいのよ」
 逃げ切れていなかった!
「か、勘弁してください」
「ちょっとそこ! 真面目にやりなさいよ!」
 会長、助けに来てくれたんですね。
「会長、それでは、早速婚姻届に印鑑を――」
 ビリリと破かれる婚姻届。
「ああ、本物だったのに……」
「末恐ろしいやつだ」
「真冬もちょっと怖いです……」
「キー君、私が印を押してやろうか」


「絶望した! 思い通りにいかないストーリーに絶望した!!!」

こうして、パクりの言葉で締めくくり、今日の会議は終わりになった。


参考情報

2009/04/25(土) 20:15:05~2009/04/25(土) 20:17:15で5レスで投稿。
◆VMSHVHTgwsさんの生徒会の一存のエロ小説を創作してみるスレでの初作品。
途中で名無しさんが入っているが、文の流れ的にトリップのつけ忘れと判断。
非エロ。


  • 最終更新:2010-07-03 22:41:10

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