とまとさんの小説5

本文

放課後。

見慣れたコンビニの風景をレジの中から観察する。
俺がシフトに入ってからは、今まで誰も客が来ていない。
自分は貧乏神なのではないかと考え出す始末だった。

客の来訪を告げる音楽が鳴る。
ちらりと顔を確認する。
…守が、何時に無く暗い表情で入店していた。
流石の俺でもこの守を放っておくわけにはいかない。
レジから、声をかける。
「如何した…。好きな子にでも振られたか?」
守が、ようやく顔をあげて俺を見つめる。
「違う。家に来てほしいんだ」
その眼には、焦りと不安。

小さくため息をつく。
どうして、俺の周りには面倒なことが起こりやすいのかね。
奥で休んでいたもう一人のバイトに仕事を任せ、俺は守に付いていく事にした。


    *

で、巡の部屋の前に連れてこられたわけだが。
「なあ…、開けろって」
守が呼びかけるも、中は無音。
困ったような視線を俺に向ける守。
しかたない。
「おい、巡」
「!…杉…崎?」
少し驚いたような声が奥から聞こえる。
「おう、そうだ。どうかしたのか、巡」
…。
返事がない。
暫くすると、躊躇しながらも巡はこう言った。
「杉崎だけ、中に入って。説明…するから」
中の光が薄く見える程度にドアが開けられる。
俺を促すように、守が首を動かした。

   *

目の前には、巡。
ベッドの上で、小さく身を丸めている。
何時も自信満々の巡なので、その光景はかなりの違和感があった。
「…どうしたんだ」
巡が、ゆっくりと顔を上げる。

頬が、紅に染まっていた。
恥ずかしがっているのではない。


ただ純粋に、頬に紅葉が咲いていた。


「あは…、私、番組中に喧嘩しちゃって…さ」
巡が無理に笑顔をつくる。
「もう…、仕事…貰えないかも、だってさ…」
「…」
「私にできることは…もう…何も無いのかなぁ」
俺は、あまりの巡の変貌ぶりに、開いた口が塞がらなかった。
飴細工の様に透き通った肌に、不純な紅葉が散らされている。
それどころか、彼女の心は…折れてしまっていた。
そう。
それこそ…飴細工のように薄かった心の膜が、破れてしまったのだろう。
今まで、『自信』『プライド』によって隠されていた心の弱い部分。
そこに、思いっきり槍が付きさ刺さっていた。
「アイドルじゃない私なんて、只の口が悪い女子だよね」
ぽたん、ぽたん。
小さな粒がベッドへと雨粒になって降り注ぐ。
「そんなこと、ない」
バッ、と巡が顔を上げる。
「慰めなんかいらない!」
大きい声。
空気がビリビリと振動している。

でも、俺は言わなきゃいけない。
ずっと前から、巡の気持ちには何となく感づいていた。
中目黒に聞かれた時は、何となく恥ずかしくて言えなかったけれど。
これを言わなきゃ…駄目なんだ。
ぽつり、と呟く。
「お前は…、綺麗だ」
小さく震える巡のさらさらとした髪の毛を撫でる。
巡は、何も言わなかった。
だけど、涙が落ちなくなったことで、巡が安堵しているのが手に取るように分かった。


   *


ようやく巡も落ち着き、静かになった部屋。
「…本気なの?」
巡が小さく言う。
俺は、自信を持って頷いた。

会長。
知弦さん。
深夏。
真冬ちゃん。

確かに、皆は大事だ。
だけど…。
彼女達には、恋愛感情は抱いたことは無い。
ただ、゛大事"なだけだ。

だけど、巡は違う。
俺は、巡の事が゛好き"だ。
もっと…。
巡の事が知りたい。

「なあ、巡」
「?」
疑問符。
巡の頬には平手打ちの赤みとは違う赤みが差している。
その姿が。可愛くて。

俺はキスをした。

大きく見開いたベージュの眼。
でも、巡は抵抗しなかった。
淡いピンクの唇。
それから、目が離せなかった。・
ようやくキスを止めると、二人でベッドに倒れ込む。
「なあ…巡、いいか?」
巡は黙っている。
でも、微かに縦に振られた首が、了解を示していた。

胸。
手を伸ばすと、巡が嫌がるように首を振ったが、そんなことは構っていられなかった。
手で、包み込む。
独特の柔らかい感覚が、布越しでも伝わってきた。
「…ぁ」
揉む。
巡が、小さく声を上げた。
何時もの気張ってる声じゃない。
柔らかい、周りの物を溶かすような甘い声だった。
「服…取ってもいいか?」
「…勝手にしたら」
そっぽを向く巡。
胸の上あたりの蝶結びを解くと、淡い色のブラジャーが見えた。
人差し指にブラジャーの真ん中の紐を引っ掛け、上へと引っ張る。

ぷるん、と思ったよりも大きい乳房が露になった。
「…お前、着痩せするタイプなんだな」
巡に声をかける。
「…」
無言。
恥ずかしがっているのだろうか。
真っ赤になった顔で、何とか俺から目を逸らそうとしていた。
…。
どこまで、耐えられるだろうか。
そんな黒い感情が、俺の中に渦を巻く。
ぴん、と指で乳首を弾く。
「…っ」
小さく跳ねる巡。
明らかに、さっきよりも顔が赤くなっていた。
指先で首をなぞる。
少しずつだが、徐々に巡の息が荒くなって行くのが分かった。
荒い吐息が止めどなく漏れる口。
唇を奪い、強引に口の中に俺の舌を捻じ込む。
巡は一瞬苦しそうな顔をしたものの、すぐにその行為を受け入れてくれた。
温かい。
当然と言えば当然だが、巡の唾液と俺の唾液が混じり合う。
結果的には、下になっている巡の口元から、それが流れ出ていく。
俺の舌の先で、軽く巡の口内を舐め回すと、巡の体が大きく跳ね上がった。

「…ぅ…」
唐突に、巡が泣きだす。
慌てて口を離し、巡に呼びかける俺。
「どうした、巡」
「ううん…、違うの。杉崎と…これからずっと一緒だ、って思ったら…嬉しくて…」
嬉しい、涙。
「そうか…」
頭を撫でる。
掌にさらさらとした感覚が伝わってきた。
「なあ…」
「?」
きつく抱きしめて、耳元で囁く。
「ずっと…一緒に居ような」
「…了解」

いつの間にか、空は朝を示していた。

happy end !

参考情報

2009/11/24(火) 17:29:57~2009/11/24(火) 17:34:21で7レスで投稿。
とまとさんの生徒会の一存のエロ小説を創作してみるスレでの5作品目。
最初、ハンネが名無しさん、とまと(>>43,>>44も俺です)になっていたが、前後の文でとまとさんと判断。

  • 最終更新:2010-07-06 03:08:28

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