とまとさんの小説6

本文

髪が触れ合うほどの距離。
向かい合う男女は、触れ合ってさえいないのに、額に汗をかいている。
ついに、女が柔らかそうな唇を小さく開き、こう言った。

「王手」

将棋なんですけどね。
成す術も無く、王が飛鳥の掌に乗る。
「ゲームオーバー…ケンの負け」
素晴らしい発音で、ゲームの終わりを告げる飛鳥。
「お前、相変わらず反則的に強いな」
飛鳥が、小さく笑う。
「それは褒めているのかな?それとも僻んでいるのかな?」
「褒めてるのさ」
嫌味ったらしく言うと、飛鳥がまた笑う。

こんな会話を何回繰り返しただろうか。
いつの間にか外は暗闇に包まれ、梟の鳴き声が聞こえていた。

腕時計を確認しながら飛鳥がこう言う。
「もう、こんな時間か」
飛鳥の腕に巻いてあるのは、意外にも女向けの時計だった。
「今、何時?」
「六時四十二分」
たしか、七時には飯が出るはずだ。
「よし、部屋でも片付けるか」
「うん、私も早くご飯が食べたいしね」
取りあえず、部屋の掃除をすることに決まった。

だが。

「私は疲れたから、ケンが片付けて置いてね」
「人任せかよ!」
部屋から出て行こうとする飛鳥。
「喉が渇いたから、ジュースでも買ってこよ」
「俺だって喉は渇いてるわ!」
どんな言い訳だよ。
「あ、ケン見て。ホコリだよ」
「うっわ、雑な話題の逸らし方っ!」

文句を言っていても始まらない事に気付いた俺は、一人で掃除をすることにした。
まず、将棋盤と駒。
そのまま、元々あった場所に移動させる。
俺達の上着。
ハンガーにかけ、備え付けのタンスに入れる。
そして、俺達の荷物。
よいしょ、と掛け声をかけ、荷物を持ち上げる。

その時、飛鳥の荷物から、鎖の様な物が零れ落ちた。

「…何だ、これ」
どうやら、中に写真などを入れておくタイプのアクセサリーのようだ。
取りあえず荷物を部屋の隅に置き、それを開く。
パチン、と言う音と共に、俺の目の前に現れたのは、中学生時代の俺達の写真だった。
二人とも、笑顔を浮かべている。
手を繋いでいるのだろうか。
肩がぶつかりそうになるほど、身を寄せている俺と飛鳥。
この時は、ホントに、心から笑っていられた。

飛鳥は、何を思って、これを持ち歩いていたのだろうか。
自分への戒め?
昔の思い出として?
いや、両方とも違うだろう。
多分、飛鳥は…。

『ケン…』
『ずっと…一緒に…』

…寂しかったんだ。
俺の心に、後悔が圧し掛かってくる。
何で、俺は今まで何もしてやれなかった?
何で、時折見せる飛鳥の寂しそうな笑顔に付いて深く考えなかった?

何で、飛鳥を守ってあげなかったんだ…?

ぽつん、と畳に雫が落ちる。
それが自分の涙だと理解するには、暫く時間がかかった。


   *

「あれ?…ケン、箸が進んでないよ」
時は過ぎて、夕食の時間。
目の前には豪勢な料理が並び、美味しそうな香りが漂ってくる。
でも、俺は食べる気がしなかった。
「ねえ、ケン」
飛鳥の顔を見る。
無意識に、その言葉は口から漏れ出していた。
「ごめん…、飛鳥」
固く握りしめてあった右手をテーブルの上にかざし、開く。
あのアクセサリーが、俺の前に落ちる。

飛鳥は一瞬驚いたような顔を見せたものの、すぐにそれを大事そうに手で包み、ポケットに入れた。
「…ごめん…、一緒に…居られ…なくて」
意思とは無関係に、涙が溢れ出す。
「寂びし…かった…ろ?」
隣に居る飛鳥を抱きしめて、頭を撫でる。
今は只、この温もりを離したくなかった。

飛鳥が、小さく呟く。
「ああ…涙って、こうやって出すんだったね。暫く忘れてた」
飛鳥の顔を見ると、泣きながらも笑顔になっている。
その笑みを見て、俺も少し笑顔になった。

今の笑みは、作ったものじゃない。
本当に、本当に、心からの笑みだった。


   *


目の前は、暗闇。
だが、隣に飛鳥がいることで、何となく安心できた。
「温かいね…ケンの体」
ぽつん、と飛鳥が呟く。
布団の中、二人だけ。
昔は、恥ずかしがってこんな事は出来なかった。

でも、今の俺にしてやれる事は、これ位しかないと思ったから。

飛鳥が、また口を開く。
「話したいことが有るから、って言ってケンを誘ったよね?」
「ああ」
軽く相槌を打つ。
「本当は、ハーレムなんて止めろ、って言うつもりだっんだ」
「ッ!?」
言い返そうとしたが、それは飛鳥の手で遮られた。
「でも、私にもケンの気持ちが分かった様な気がするよ」
無理に出した、明るい声。
「大切なものは全て離さない、って言う気持ちが」
「…そうか」
布団が動き、飛鳥が俺の背中の方へと顔を向けたのが分かった。
「だから…」
飛鳥の腕が、俺の腰辺りに回る。
「離したく…ない」
俺の背中に顔を押し当てる飛鳥。
じわり、と涙のシミが広がっていく。
「離したく…ない…っ!」
嗚咽。
何時もは見せたことの無い、飛鳥の弱み。
少しずつ、少しずつ、飛鳥が崩れていく。

その中から現れたのは、不安と悲しみ。
溜め込みすぎた負の感情が、内側から飛鳥を壊してしまった。
「ずっと…一緒にって…言ったじゃない…」
俺は、無言になるしかなかった。
どう答えていいか、分からなかったから。
「ごめん…我侭を言ってるのは…分かってる」
無言が数秒続く。
「もう…お別れだって事も…分かってる」
違うとは、言えなかった。
俺も、そんな感じがしていたから。
「だから…」
腰に巻きつく腕に、急に力が込められた。
「最後ぐらい…私を可愛がって」


  *

掌に、飛鳥の服の感覚が伝わる。

小さくても、これは幸福。
ずっと、このままで居たかった。
「…ケン」
甘く、掠れた声。
何時もの飛鳥からは考えられないほどに、その声は優しかった。

一個一個、丁寧にボタンを外していく。
その度に飛鳥の顔が赤くなっていくのが、堪らなく心地いい。
全てのボタンを外すと、透き通るように白い飛鳥の肌が現れた。
「…飛鳥」
飛鳥のお腹から首筋にかけて舐め上げると、飛鳥が甘い声を漏らした。
「…っふぁ」
鳥肌が立った。
俺が、飛鳥にこんなにも耽美な声を出させているんだ。
「ケ…ン…」
焦点の合っていない虚ろな眼で俺を見上げる飛鳥。
下着を取り去り胸に手を当てると、催促するかのように、飛鳥は何度も頷いた。

胸を、揉みしだく。
指先が柔らかく暖かい物に包まれたかと思うと、直ぐに押し返される。
そんな繰り返しだが、俺は例え様が無い位、その行為に陶酔していた。
「あ…っ!」
指先が胸の先端を摘んだ瞬間、飛鳥が本当に耽美な声を上げた。
冷静になって呼吸を整えていなければ、俺の理性は砕け散り、本能のままに飛鳥を襲っていただろう。

そんな、声だった。
「ほら…飛鳥」
飛鳥の下腹部に手を滑らせると、粘ついた感触が手に張り付いた。
それを、飛鳥の目の前に持っていく。
つつ、と指先の間で糸を引く愛液。
「意地悪…しないでよ…ケン」
真っ赤になった飛鳥が、顔を背けながら小さく言う。
愛液は布団にも広がり、お湯を零したかのような状態になっていた。

「じゃあ…入れるぞ?」
「ああ…ケンのだったら…大丈夫」
俺のモノを飛鳥の秘所に近づける。
つぷり、と先端が飛鳥の中に入り込んだ。
と、同時に俺に襲い掛かる快感。
飛鳥と、交われたから。
そんな理由も、快感の一つの原因なのかもしれない。
「…っ!ケン…」
飛鳥の声が、段々と普段の声から離れていく。
甘い、甘い声。
その声は、黒砂糖のようだった。
「飛鳥っ…」
唇を奪うと、柔らかい感触が唇に伝わる。
でも、それを楽しんでいる余裕なんて無い。
今は、快感のせいで俺の理性が壊されるのを守るしかなかった。

少しずつ、俺のモノが飛鳥の中へと埋まっていく。
先が、柔らかい感覚で封じられた。
「飛鳥…いいか?」
「… ああ」
腰を奥へと押し込む。
ぷち、という音がしたかと思うと、俺のモノは全て中へと入り込んでしまった。

心配なのは飛鳥だ。
「…ぃ…たぁ…」
思ったほどの痛みでは無かったらしいが、それでもかなり痛そうな様子だった。
秘所からは、少し赤が混じった愛液が零れだしている。
「大丈夫か」
「…うん…なんとか…っ!」
飛鳥が、苦悶の表情を浮かべている。
「… わかった。飛鳥が慣れるまで、暫くこのままで居よう」
「私の事は…っ…気にしなくても」
痛みに耐えながらも、必死に返答する飛鳥。
「… 俺は、飛鳥が大事だからな」
「…そ」

今、一瞬だけ、飛鳥が笑みを見せたのは見間違いでは無かっただろう。
飛鳥が痛みに慣れるまで、俺は暫く飛鳥の頭を撫ででやっていた。

「もう…大丈夫」
「本当に?」
飛鳥は顔が痛みで歪んでいるのに、もう大丈夫だと言ってきた。
「…嘘」
「なら、もうちょっと慣れ―
俺の言葉は、飛鳥に遮られた。
「どうでもいいよ…痛みなんて」
「だから、無理するなって」
飛鳥の頭を撫でる。
飛鳥は、小さくこう言った。
「私は…早くケンを感じたい…」
飛鳥の、甘い声。
「それとも…ダメ?」
「…そんな風に言われたら、断れる訳無いだろう」
飛鳥が、小さく笑う。
俺は、ゆっくりと腰を引き抜き、また押し込んだ。
「っ…くぅぅ?!あ…う…」
飛鳥が、懸命に耐えているのが分かる。
俺は、少しでも飛鳥の痛みを和らげてあげたくて、飛鳥を抱きしめた。

呼吸が徐々に整ってくる。
「ケンと繋がってる…私」
ぽつん、と呟く飛鳥。
飛鳥の眼から涙が溢れ、布団へと染み込む。
「これが、最初で、最後なんだよね…」
飛鳥は、自らの手の甲で涙を拭った。
そして、元の顔に戻る。

「どうしたの?ケン。続けてよ」
俺だって、泣きたい。
でも、最後ぐらいは楽しく別れたいと思ったから。
「ああ」
今は、飛鳥が気持ちよくなってくれれば、それで良い。
「ケン…っ」
ぞくり、と体が震える。
俺は、再び飛鳥にキスをした。
何かしていないと、頭が変になりそうだった。
「…ん…く…」
ゆっくり腰を沈め、引く。
一番奥に当たるたびに、飛鳥の眼の焦点が大幅にぶれた。

舌を飛鳥の口内に入れ、口の中を弄ぶ。
開いた口から、飛鳥の唾液が入り込んでくる。
甘い。
飛鳥だからそう感じるのだろう。

その時だった。
ぴくん、と飛鳥の体が揺れたかと思うと、俺のモノをきつく絞めた。
只でさえ我慢していたのに。
そんなにされたら、もう無理だ。
「ごめっ…飛鳥…出る」
「…っ!」
俺のモノが白濁の液を吐き出す。
「くぁ…ふぁっああああっ!」
入りきらなかった液体が溢れ出し、小さな水溜りを作った。

荒い呼吸。
世界が徐々に色を取り戻していく。

飛鳥を抱きしめ、飛鳥にかける言葉を考えた。
何か喋らないと、飛鳥が何処かに行ってしまう気がした。

俺は、飛鳥に謝ることにした。
これから、辛い思いをさせるだろうから。
「飛鳥、ごめん」
「?」
飛鳥が小さく首を傾げる。
「何でケンが謝るの?」
「これからは、離れ離れだからな」
すると、飛鳥は意外にも笑みを見せた。
「ううん、いいよ」
飛鳥の腕が再び腰に絡みつく。
「最後に、いい思い出が残せたし。それだけで、私は満足」



  *

「扉ー、置いて行くぞー」
「まってよー、おとーさん」

桜の花弁が、飾りの様に栗色の髪の毛に乗る。
思わず、頬が緩んだ。

娘の頭に手を乗せ、撫でてやる。

「ねえ、ケン。私の事は無視?」

飛鳥が頬を膨らませる。

「おかーさん、わたしよりもこどもだね!」

「ど…扉。お母さん、流石に怒るよ…」
「つかまえられるものなら、つかまえてみろーっ!」

娘が駆け出す。

「待てーっ!」
「きゃー!たすけてー!」

笑いながら桜の間を駆け抜けていく二人。

「飛鳥ー、あんまり扉を怖がらせないようになー」

スーツの襟を正す。

この桜並木の先に、忙しくも楽しい生活が待っていると思うと胸が高鳴った。



はっぴー えんど。


参考情報

2010/01/16(土) 15:54:11~2010/01/16(土) 16:02:41で15レスで投稿。
とまとさんの生徒会の一存のエロ小説を創作してみるスレでの6作品目。


  • 最終更新:2010-07-06 03:13:03

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