とまとさんの小説9

本文

とある、夏の日。

「好きだ」

またか。
溜息を付きつつ、書類を纏める。

今日は何だか疲れているから、続きは家に行ってやろう。

「無視は傷つくぞー」
「ぼくは一人で居たいんだ。構わないでくれ」

視界を遮る前髪。
今度、久々に切りに行こう。

ドアを開け、廊下の窓から外を見ると、相変わらず外は雨が降り続いていた。

雨は嫌いだ。
なんだか、重い気持ちになる。

「この頃、その返事しかしなくなってきたよな」
「一回一回返答を考えるのが馬鹿らしくなってきたから」

制服が濡れて透けるし、黒い髪も顔に張り付く。

それを見ると、なぜか春秋は喜ぶ。
ぼくが雨に打たれているのが嬉しいんだろうか。

「気持ち悪い」
「いきなり!?」


早く、帰って寝たい。
この、胸の高鳴りを、早く治したい。

春秋を見るたび、膨れ上がる胸の高鳴り。

「ッ」

春秋が他の女のコと話していると、胸の奥がちくちくする。
春秋がぼくの方を見て笑うと、ほっぺたが赤くなる。

「おい、雪海。どうした?」

後ろから肩を掴まれる。
じわり、と快感が広がった。

「んっ」

思わず甘い声を上げるぼく。

どうしてだ。

肩なんか、気持ちいいわけ無いじゃないか。

「ほ、本当にどうした?具合が悪いなら保険室まで行くか?」

ぼくの体に、快感を与え続けている春秋の手を無理やり剥がす。

このまま触られていたら、どうにかなってしまいそうだ。

「な、なんでもない。放っておいてくれ」

靴を履き、雨の中へと飛び出す。

「おい、傘はどうするんだよ!」

後ろで春秋が何か言った気がするが、聞こえなかった。


いや、聞こえなかったふりをした。
真面目に春秋の声を聞いたら、溶けてしまいそうだから。



   *


「はー、はー」

酸欠になりかけ、ぼんやりとしている頭。
こんなに走ったのは何年振りだろうか。

家のドアを開け、よろよろと中に入る。

「はー…」

玄関に座り込むぼく。
濡れた制服が肌に張り付いて、鬱陶しい。

リビングに行き、口の中に水を注ぐ。

「…ふー」

うん、まともになった。

「ふぅ」

汗をかいたみたいだ。

まあ、久しぶりに体力を消耗することをしたから、仕方ないか。

「入ろうか、お風呂」

まだお風呂は沸いてけど、いいや。

今日はシャワーで済ませよう。


   *


ようやく落ち着いた。
投げ出した鞄を拾い、自分の部屋へと向かう。

ドアを開けると、そこはもう見慣れた自分の部屋。
この頃変わり始めたのは、春明の写真が多く張られる様になってきたことだ。

以前これを見せたら、なぜか春秋は泣いて喜んでいた。

「気持ち悪い」

ベッドの脇に置いてある写真立てを手に取る。
其処に写っているのは、ニコニコしている春秋と、その横でしかめっ面をしているぼく。

以前、一緒に海に行った時、半端強制的に取らされたものだ。

でも。

この写真自体は、気に入っている。

「…」

ぼんやりと写真の中のぼくを見つめる、現実世界のぼく。

顔が赤くなっているのが、写真でも分かる。

この時春明は、熱があるのかどうか心配したんだったかな。

「…鈍感だな」

ベッドに倒れこむぼく。

じわり、と下腹部に広がる熱。

「ん」

雨で大分湿っているスカートを片手でゆっくりと下ろす。
別な水で湿っている下着。

「…」

ワイシャツのボタンを外していく。
所々にある取りにくいボタンに苛立つ。

ぼくはヘンタイじゃない。

こんな事をぼくがするのは、春秋の所為だ。

「全部、春秋の」



主観的に見ても綺麗なぼくの指を下腹部に伸ばす。

くちゅり、という水音。
そのまま、下着の真ん中をなぞっていく。

もどかしい。
中途半端にボタンが外れたワイシャツを無視し、我ながら大きめだと思う乳房を弄ぶぼく。

「ん」

ぼくが春秋を好きだ、ってことは、ココロの奥では分かっている。

でも、言えない。

「はる…あきぃ」

春秋のが、ほしい。
霧がかかった頭の中は、いつも春秋のことで一杯だ。

湿った人差し指で、下着を横にずらす。

「ん、くぅ」

もしかしたら、ぼくはヘンタイなのかもしれない。

そう思って、熱く火照った顔で苦笑する。
そんなぼくでも、春秋はぼくを好いてくれるんだろうか?

ぼく自身の秘所に、中指を宛てがう。

「ッ」

徐々に、分泌物で濡れた秘所に中指が埋まっていく。

気持ち、いい。


「ん、んっ」

うつ伏せになった体。
犬のようにお尻を高く持ち上げて、ぼくは自慰行為に浸っていた。

やっぱりぼく、ヘンタイかも。

中指がぼくの中で動く度に、口から甘い声が漏れる。

「んっ!あ」

口の端から唾液が零れ、ベットに染み込んでいく。
あーあ、後で洗濯しなきゃ。

妙に冷静な頭で、そう考えた。

「ふ、あっ!ん」

目が霞む。

中指の動きが激しくなっていく。

「ひ、んっ」

自然と体を丸めるぼく。

指が自分の意志とは関係なしに動く。

「はッ!くぁっ、あっ!」

目の前が白くなる。

意識が保てるギリギリのラインを踏み越えると、ぼくは思い切り体を仰け反らした。

「んああっ!っ!く、あああぁぁあ!!」

荒い、息。

視界が涙に滲みながら戻ってくる。

「っはー、はー」

指を引くと、ぼくと指との間にとろとろとした液体が橋を作った。

まず襲ってきたのは、疲労感。

なにやってんだろ、ぼく。

溜息を吐いて、指先を見つめる。
そこは、乱れに乱れまくったぼくの液体で濡れていた。


「はぁ…」

掛け布団を部屋の隅から持ってきて、潜り込む。

何気なく外を見ると、もう何も見えなかった。

溜息。

生徒会日記は、明日付けることにしよう。

何だか疲れた。今日は寝る。



   *


「好きだ」

「ぼくは一人で居たいんだ。構わないでくれ」

「またか、その返答」

「んー、場合によっては付き合ってあげるかもしれない」

「おおっ!初の肯定的反応っ!」

「簡単に言うと、一つの事を知っていてもらいたいんだ」

「? なんだ」

指を一本立て、春秋の前へと持っていく。

そして、ぼくの指を軽く、春秋の唇に押し当てた。

「ぼくは、ヘンタイだ」




- End -


参考情報

2010/05/08(土) 16:58:49~2010/05/08(土) 17:18:14で9レスで投稿。
とまとさんの生徒会の一存のエロ小説を創作してみるスレでの9作品目。


  • 最終更新:2010-09-29 21:11:17

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