一星龍さんの小説20-1

本文

「仮説は実証して初めて成り立つのよ!」
会長がいつものように小さな胸を張ってなにかの本の受け売りを偉そうに語っていた。
というか、なにかの本の受け売りと言うよりもガリ○オだ。ガリレオの受け売りだ。
「さては会長は二夜連続のガリ○オスペシャルでも見た口ですね?」
「うん、そういう時事ネタは混乱する読者がいるからやめなさい。」
「俺は石○と湯○が役者的には同年代には見えないんですが・・・。」
「だから、もうガリ○オネタは禁止!!」
会長が肩で息をしている。うむ、これだから会長弄りは面白い。
「それで、アカちゃんは最近出没している不審者について議論したいのよね?」
我らが参謀、知弦さんが話の舵取りをしてくれる。
「うん、さっきからそう言ってるじゃない。」
言ってないです。それどころか仮説とかそういうの一切関係ないです。
「まあ、でも会長は大丈夫ですよ。」
「?何でそう思うの?」
会長が不思議そうに首をかしげている。
「だって会長に何かしようとする奴なんてかなりマニアックだし、本当にいたらそいつマジでリアル犯罪ひでぶっ!!」
会長のビンタが飛んできた。右頬に向かって真っ直ぐと。その反動で椅子がぐらついて椅子ごと倒れる。
「杉崎はいちいち失礼だよ!!」
「大丈夫です会長!!俺はロリもいけますから!!」
右頬を摩りながらサムズアップしながら答える。
「むしろ今の発言で杉崎が大丈夫じゃないって確信したよ!!私は!」
「まあ、キー君ももう少しオブラートに包んだ物言いすればいいんじゃないかしら。」
「まあ、鍵の場合そんな事しても無駄だけどな。包まれてもすぐに出てきそうだし。」
深夏が苦笑いしながら淡々と言ってきた。
「人をそんな蛹から孵る蝶みたいに言うな。」
「いや、むしろ蛾。」
「すいません蝶にしておいてください。お願いします。」
何で深夏はあんな普通トーンで蛾なんて言葉出てきたんだろうか?
「それで、その・・・そんなに不審者さんはうろついていたりするんですか?」
真冬ちゃんが現状を知らないのか、まあ俺も知らないけど、知弦さんにそう質問していた。
「まあ、被害はそんな酷いと言う訳でもないけど最近はちょっと多発しているわね。不審な男がうろついていて、学園の女子に声を掛けたりしているって聞いているわよ。」
「それってもろ杉崎じゃない。」
「失敬な!!会長、俺がそんなに信じられませんか!」
「うん。」
即答!!即答です!!真顔で即答です!!
「アカちゃん。流石にキー君に失礼よ。」
「え~。だってほんとのことだし・・・・。」
「そうだけど、キー君はそんな勇気ある行動は出来ないわよ。ヘタレなんだし。」
グサリ。
「そうだな、鍵は根性なしだしな。」
グサグサリ。
「先輩は確かにチキンですよね。よく考えると。」
グサグシャリ。
いくつか傷付く言葉の剣をいただいた俺は何とか反論しようと試みる。
「でもですね知弦さん。俺は、このハーレム王たる俺は・・・!」
「じゃあ聞くけど、キー君。今までこの学園以外で誰でもいいしナンパでなくてもいいから異性と話したことある?」
「・・・・・いえ、ないです。」
「話そうとした事はある?」
「・・・・・・・・いえ、ないです・・・・。」
「立派にヘタレで根性なしでチキンじゃない。」
グサ、グサ、グサグサグサグサグサ!!!!サイグサ!!
言い・・・・・返す・・・・ことも・・・・出来なかっ・・・・・た・・・・・・・よ・・・・・・・来世・・・ハ・・・鳥に・・・・モウ・・・ゴ・・・・ル・・・シテモ・・・・イイヨネ・・・?・・・カク・・・・・。
「はい。じゃ、杉崎もくたばったことだし会議続けよう。」
ああ、生きる気力すら湧かない。こうなったら俺の妄想力で・・・・・。
「それで被害にあった人は何人いるの。知弦?」
「そうね・・・・報告に来たのは三人で・・・見た、聞いたのが五件くらいだから、まあ多くても十件位かしら。」
「そんなに多くはないんだな。」
「でもこの三週間で起きているのよ?」
「それだったら結構起きていますよね・・・・。」
被害か、被害かぁ・・・・ぶっちゃけ深夏や、知弦さんは大丈夫だろうな。深夏ならしっかりしているし、そんな目にあっても鉄拳制裁だし。知弦さんは・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、むしろ被害者があっちで加害者がこっちになるな。
となると一番被害に会いやすいのは・・・・・真冬ちゃんかなぁ・・・・。

気が弱くて男性が苦手な真冬ちゃんだったらそういう目にも・・・・・こう、路地裏に追い詰められて、服がビリビリ~と破かれ、けしからんことになり・・・でへへ。
「・・・・なんか、杉崎から禍々しいオーラが出てるんだけど・・・・。」
「殴ったら直るかな?ホイッ・・・・と。」
「げふつっ!」
後頭部を殴られた。女の子の軽めのパンチと言えど、深夏のパンチが後頭部に当たったとなると・・・・・・多少は眩暈もしてしまう。
「お~い?鍵大丈夫か~?」
「くっ・・・・・・・・おまえなぁ、当たったとこかなりクリーンヒットしたぞ。」
「どうせ、ヤらしい事考えてたんだろ。」
「くっ・・・・・・・。」
否定のしようがない。確かにそういう妄想に走っていたのも事実だし。
「杉崎はもう少し犯罪者からかけ離れようとする努力は出来ないの!?」
「すいません・・・・でもこれが俺なんです。」
「なんか妙に説得力あんな!!」
「でも、こんな俺だからこそ!奴らの思考が読める。違いますか、会長?」
「す、杉崎にしては正論ね。・・・具体的には?」
「そうですね・・・・・・一つの可能性としては巡のファンの追っかけとか?」
「おおー!」
会長が一人だけ関心をしてくれる。だが、そうはさせまいと深夏が切り込んでくる。
「っていうかあいつにそこまで熱心なファンがいるわけないだろ。」
「いやいやいや!!それはあいつにとって可哀相過ぎる言葉だ!」
せめてそうでも思ってやらなきゃあいつが芸能界にいる意味ないだろ!
「まあ流石にファンかどうかはおいといて、そろそろ帰らないと私たちがそういう人に会っちゃうわよ?」
時計をふと確認する。確かにまだ日がある時間帯だが遅いと言うこともまた事実。
「じゃあもう解散ですかね?」
「う~ん・・・・杉崎みたいな悪人を蔓延らせたまんまなのは悔しいけど、仕方ないよね。うん。」
腕組みしながら会長がそんな事を言っている。
「俺みたいなってなんですか。俺みたいなって。」
「じゃああたし達は先帰るけど、お前も気をつけろよ。」
「・・・・そうです!!むしろその不審者さんが男色で美少年か美青年なら杉崎先輩とのめくるめくBLが育めます!!」
「何を言っているそこの会計 ―――――ッ!!!」
あってたまるか。俺は普通にノーマルな美少女好きだ。アブノーマルな連中と一緒にはされたくはない。・・・・・あっ、でも百合を見るのは大歓迎ですよ?
となんかツッコんでいたら皆帰ってしまっていた。
「はぁ・・・・・・雑務でもやるか・・・・。」
一人生徒会室にて寂しくため息をつく怪しい男が発生した。

全ての荷物を深夏と運び出し・・・・・というか俺が一方的にパシられただけなんだが、ようやく真儀留先生から帰ってもいいとお許しが出た。
「ふう・・・・働いたな・・・・。」
汗を拭う仕草をする深夏。
「・・・・お前は一方的に俺をパシッていただけだろうが!!」
「は?何言ってんだよ。大きなのを二個運んでただろ?」
「うん、俺が手伝う前の話ですよねぇっ!?」
「別にいいじゃん。運んだのは事実なんだし。」
「俺はひたすら十個ぐらい運んでたけどな。」
「あーはいはい。分かったよ。全然運んでないあたしが悪うござんした。」
「くっ・・・・・。」
逆にそうやって認められると反論できない。
「・・・・・・まぁ、いいや。ほら、帰ろうぜ。」
「えっ・・・・?お前と・・・一緒にか・・・?」
「別に二人っきりだからって何もしねえよ!っておい!!俺からそんな速攻で離れるなよ!!」
「いや・・・だってお前と二人で帰った日にゃ・・・・・・・・なぁ?」
「疑問系で来られても困るわぁっ!!っていうかそんなに俺と帰るのは嫌かぁ!?」
「まぁ・・・・うん。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
俺は今、心に多大な傷を負った・・・・。
「うう・・・・・そうか・・・・・俺はそんなに深夏から嫌われてるのか・・・・・。」
「え・・・?ちょ・・・っお前・・・本気で落ち込んでる?」
「ふふ・・ハハハハ・・・・・ヒャハハハハハハハハハァァァッ!!!!」
「ああ!?鍵が壊れた!!・・・ご、ごめん、冗談だから!!マジで!」
「・・・・・本当にか?」
「ホント・・・・うん。」
「・・・・・深夏よぅ・・・俺は、表面上はテンション高いキャラだけど・・・・・内面はかなりナイーブだから・・・・ティッシュに包んでおいてくれ。」
「あ・・・・・ああ・・・・・・・・・・・・・・・わかった。いや、正直何にもわかってはないけど。」
「で・・・・もう帰ろうぜ、流石に。ホントに暗くなってきてる。」
「んあ?あ、本当だ・・・。」
まだ九月中旬とはいえど、そこそこに日が暮れるのが早くなりつつある。まあ、今の時間帯的にも暗くなってなかったら大変だけどね。
「じゃあ、まあ、鍵と帰るのは不服だけど、仕方ねえな。」
「俺は今お前にそんな事言われたのが不服だよ!!」」
まあ、このツンデレボーイッシュ娘にとっては割と普通の反応なのだが。
生徒会室の鍵を閉めて、まあようやくというかなんと言うか深夏と一緒に帰る。
「鍵は返さなくてもいいのか?」
「ん?まぁな。これ合鍵だし。」
「ふ~ん・・・そうなんだ。」
って言うか文字的にはもしかすると「鍵(けん)は返さなくてもいいのか?」とも取られそうだな。
「そういや、あのダンボールは何だったんだ?」
「なんか、文化祭の道具だってさ。生徒会室に一時的に置いとけだと。」
「そうか、もうそんな時期か~。」
思えばこの前俺のハーレムが出来たかと思えば、もう夏が過ぎもうすぐ文化祭をするのか。月日は早いものだ。
「俺や、お前はいいとして真冬ちゃんたち一年生は初めてだもんな。去年みたいにきっちりした奴にしろなんにしろ楽しませないとな。」
深夏にそう言ったら、何故かピクンと少しだけ反応した。
「あ、ああ・・・・・・・・・・そうだな。」
俺はその反応が気になったもののあまり気には止めず、話を進めた。
「それで、深夏はなんか文化祭のテーマは決めたのか?」
「へ・・・・っ?・・・いや・・・・・特に決めては・・・・。」
「んだよ。それでも生徒会副会長か?同じ副会長としてか俺は残念だ。」
「・・・・むっ、じゃあ、そういうお前はなんか決めてんのかよ?」
「勿論だとも。俺のテーマは無論『淫―――――。」
「ああもういい。お前に聞いたあたしが馬鹿だった。」
「何だよ、馬鹿にするなよ『淫ら』を!!」
「・・・・~♪(口笛)」
「って、他人の振りするな!」
「だってあたしまで不審者に思われそうだし・・・・。」
「いや・・・そうかもしれないけど・・・・って今さりげなく俺を不審者にしたな!!」
「いや似た様なもんだし。それじゃああたしはこっちだから、じゃあな。」
「っておい!逃げるのか!くぅ・・・・っ!!杉崎鍵ここで美少女を逃すとは、一生の不覚!!」
・・・・だがともあれ、いつも一人で帰っていたが、今日は深夏と二人で帰れたと言う事もあり、割と上機嫌ではあったことも確かなのが少し悔しい。

翌日。放課後、生徒会室。
いつもは五人いる筈のその場所には二人しかいなかった。
定員は俺と深夏だけ。
そして二人とも黙りこくってしまっている。
どうしてこのような事になってしまったのだろうか。
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―――――――――
結論から言えば俺は幸せ者だったのかもしれない。
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―――
昼休み。
弁当も食い終わり、適当にさ迷い歩いていた時の事。
階段の横を通りかかった時の事だった。
それは突然で、尚且つ何が起こったかすぐには察知できなかった。
「へっ・・・?ってうわ!!ちょっ!!鍵どけ・・・っていい!!退かなくていいからとまっ・・・・わああぁぁっ!!!」
一言で言うと深夏が飛んできた。
人間というのは不思議な物でこういう時に限って落ち着いていたりする。
でも、我に帰った時、ふと思う。
(あ、これ、やばいわ。)
俺には加速装置もついてなければワープ装置が付いているわけでもないので案の定深夏と正面衝突する。
ドッシ―――ンッ!!!という擬音が似合うような光景だったと人は言う。
「つつ・・・・・な・・・なんだ?一体・・・・?」
気が付くと俺の腹部に重さが感じられる。
ぶつかって来た深夏が馬乗りになって俺を上に乗っかっている。
「っ・・・っていったーっ・・・・ったくなんでこんな時に・・・。」
それはこっちの台詞だ。何で歩いてたら圧し掛かりされにゃならんのだ。
深夏のほうに目を向ける・・・・制服の色である茶色、白、ニーソの黒、水色と白の縞々、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ってウェッ!!!?
この、位置からだと、なんて事でしょう。なんともまあいい花園の風景が広がっているじゃあありませんか!!
というか、生徒会の皆さんは隙が少ないので・・・・まあそれでも胸の谷間とかは時々見える事もあるが、それでも下着の類を俺は初めて見る。
いやぁ、それにしても絶景でございますなぁ・・・・。
(って!!なに見てるんだ俺は!!)
一瞬我に返り目を離す。もしこの事がバレでもしたら俺の命は文字通りない!!
何とか花園から目を話し・・・・・・・・・いや、俺には出来ない。花園が目の前にあるのに、目を話すなぞ俺には到底出来ない!仕方がないから、何とかバレないように見ながら話していよう。
「で、お前は何でいきなり圧し掛かって来たんだよ・・・。」
「いや・・・・まあ、階段飛びしていたら偶然お前が通りかかって・・・。」
「・・・・お前は、高校生にもなってそんな遊びしてんのか・・・・。」
「ベッ、別に遊んでいたわけじゃ・・・・・っていうか、お前、人が話していんのになに目を逸らしてんだよ。」
やばい!!これはバレる!!そう思った時は深夏がおれの視線を追いかけて、スカートを見ていた。
「△●◇AΩ×※っ!!!!?おっ、おまっ、鍵お前っ!!何、見てんだよ!!!!!?」
一気に深夏の顔が赤くなる。それが恥ずかしいからなのか怒りからなのかは分からない。だが、一つだけわかる。俺は今ここで死ぬ!!ということだけは分かった。
深夏がスカートを抑えながら俺から退く。その顔は赤らめているので可愛かった。だが、その目は明確な殺意を持っていた。どちらが勝っていたかというと・・・・。
「ちょっ待て!!深夏ストップ!!!暴力よくない!!」
「問答無用!!!!セヤアアアアアアアアアァァァァァァァァッッ!!!!!」
みぞに深く深く深夏の正拳が叩き込まれた。
その瞬間、俺は意識を失ったそうな・・・・・。
ところで、深夏の殺意と可愛さ、どっちが勝っていたかというと・・・・・・殴られたのにも拘らず、深夏の可愛さの方が勝っていた。

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―――
という事により、まあ深夏と話しづらい空気になり、尚且つ二人しかいないので話す話題もない。しかも深夏は、チラチラと俺の方を見てくるので下手な話題を出すことも出来ない。
仕方ない、下着を見たことを謝ってないし謝っておくか。
「み、深夏!」「け、鍵!」
ヤバイ、よりにもよってはもった。っていうか前にもこんな事あったな。
「な、なんだよ・・・・。」
「いや、そっちこそ・・・・。」
ぶっちゃけさっきよりも空気が悪くなった。俺も深夏も今のはもり方のせいで余計話し辛くなってしまった。
「お前から言えよ。」
「深夏の方こそ先にいえよ。」
「お前こそ先に・・・・。」
「いやいやいや。」
「いやいやいや。」
「いやいやいや。」
なんかこの調子だとループしそうな気がする。仕方ない・・・俺から先に言うか・・・・。
「じゃあ、俺から先に言うけど・・・・えぇ~っと、その・・・・あの・・・・ご、ごめん!!!」
俺は椅子から降りて深夏に土下座した。
「へ?な、なんで謝るんだよ?」
「な、なんでって・・・・そりゃお前・・・その、下着、見ちゃったからだろ・・・・。」
「っ!!!い、いやっ!!あれはその!!・・・・っそ、それはもういい!!別に、怒ってなんかはないし・・・・・。」
「へ?怒ってないのか?」
「そ、そりゃ、恥ずかしいし、いい気分はしねえけど・・・・・あれは突然圧し掛かって来たあたしが悪いんだし・・・・それは、その・・・あたしの方こそ、ごめん。」
「ってお前も謝ろうとしていたのかよ・・・・。」
「そうみたいだな・・・・っふぅ・・・・なんかずっと気張ってたから、肩凝った。」
深夏が手を伸ばして肩をバキボキ鳴らした。そして俺の方をジト目で見つめてきた。
「え?何その俺のせい的な視線。」
「いや、お前のせいだろ?」
「はぁ~・・・・ったく、わかったよ。肩揉めばいいんだろ。」
「い、いや、別にそこまでしなくてもいいんだけど・・・まあ、いいや。じゃあお願いしてもいいか?」
「おう。」
俺は深夏の後ろに回り、肩に手を置く。
「っ・・・・ふ、ぅ・・・んっ・・・あぅ・・・・っ・・・!!」
そして揉み始めたのだが・・・・まあ予想通りというか、なんというか、深夏の方はとんでもなく凝っていた。女子高生でこんなに凝っていていいのか?
「う・・・・っあ、そこ・・・・イイッ・・・・ふ・・・・ぁっ・・・・!!」
「ってそんな変な声出すなよ。」
「っ・・・・は・・・だ、だ・・・って・・・揉まれるの・・・ここまで気持ちいいとは・・・っ・・・思って、なか・・・ったし・・・ぃっ」
「・・・・・・や、それでも・・・・・なぁ・・・・・。」
っていうか、こんな所を聞かれてでもしていたら大事だな。
「んっ・・・・もっと、右・・・っ、の方・・・あっ・・・そ、こ・・・っ」
「ここか?」
右肩の一番上から少し下の辺りを親指で押す。
「あ~・・・確かにここは硬くなってるな。」
「う・・・・・あっ・・・もうちょっと強めに・・・っいんっ・・・!」
「いや、別にいいけどこんな硬いんだから強くしてもあまり意味ないと思うぞ?」
「いいから・・・っ、つよくしろ・・・・っ」
「はいはい。」

・・・・・・・・・どうでもいいが音声だけ聞いてると凄くいけない事をしている気が・・・・・。
そんな事を考えていた時、ドアが凄い勢いで開けられた。
「な、な、なにやってるの―――――っ!!」
「え?会長?」
会長が真っ赤な顔して、生徒会室に入ってきた。
「す、杉崎!!何やって・・・・!!?」
「何って・・・・深夏の肩を揉んでいるだけですけど・・・?」
「へ?」
「だから、深夏の肩揉んでるだけなんですけど・・・・なぁ?」
「あ、ああ。肩揉まれてただけだけど、何血相変えてるんだよ?会長さん。」
「肩揉まれてただけ?」
「ああ、いや鍵て以外に肩揉むの上手くてさ。」
「まあな。何なら会長もしましょうか?」
「い、いいよ別に・・・っていうかそんなに二人ともくっつかないの!」
「何ですか?会長?嫉妬ですか?」
「違うわよ!!二人がそんなくっついてるのは・・・その、ふ、不謹慎よ!!」
「いや、不謹慎って言われても・・・・。」
「とっ、とにかく放れて!!」
会長が俺と深夏に近づいて俺の手首を掴み深夏の肩から手をどけようとする。会長は俺が抵抗すると思って強めに手を引っ張ったが、俺はそんな気は無いので会長がその反動でバランスを崩した。深夏の座ってる椅子につまずき、椅子もそれに巻き込まれ深夏も一緒にバランスを崩す。
「うわぁっ!?」
会長もバランス崩していたのだが俺を倒す事によりバランスを保った。だが、俺が逆に倒れる事になる。
「うぉっ!?」
ガシャーンッ!
椅子が倒れる音とともに俺は倒れこんだ。
ふにゅ。
あれ?この顔面に伝わる柔らかくて生暖かい感触は何だ?
「つつ・・・・って・・・へ?」
深夏が俺の頭上(倒れているからそう感じるだけで正確には前)から間抜けな声をだした。
俺も顔を上げてみる。
俺の顔の真下には・・・・深夏の胸に当たる部分。まあ、要するにこれは・・・・・その、俺は・・・・・・・・・・・・・・俺は・・・・・・・・深夏の胸に顔を事故とはいえ埋めていたと言う事?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ガタガタガタガタガタガタガタガタ!!!!!)」
どっと冷や汗が出て顔が青ざめるのを感じた。恐る恐る深夏の顔を見るためにギギギ・・・・・と首を動かす。
「・・・・・・・・・・・(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!)」
ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。
ヤバイ!!!深夏の周りからおぞましいほどの殺人オーラが溢れてくる。
「・・・・・・・・・なあ、鍵(ニコォ・・・ッ)。」
「ひゃ、ひゃいっ!!?」
やばい、怖すぎて口が回らない。会長なんて深夏のさっきに怯えて部屋の隅で蹲って震えてるくらいだ。会長の野生の感がここまで怯えるのだからこれは本気でヤバイ。
「あたしは、この手の事が起こっても、まあ一回くらいならそんなに怒ったりはしねえし、後になってネチネチ言う気はねえよ。だけどな・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・(ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ!!!!!)」
あれ・・・・?俺、あまりの恐怖に、涙、ナガシテルヨ?
「一日に二度もてめえはどういう料簡だぁぁぁぁっっっ――――――――――――――!!!!!!!」
「ギィヤアアァァァァァァァァァァァッッッ―――――――――――――
意識が遠のき、深夏の本気でキレているであろう顔を目にし、俺は撃沈した。
意識が戻ったのは次の日の朝の事だった。(誰かは知らないけどちゃんと送ってくれたようでいつの間にか家にいた。)

一週間後。
「おい、みな―――。」
「あ゛?」
「すいませんでした。」
あの出来事から一週間経っても深夏は俺に対してこんな感じに不機嫌なままだった。
理由はわかってる。100パーセント俺が悪いし、謝る気もある。だけど、深夏のあの雰囲気の前では、気圧されてしまう。よって一週間経っても俺は謝りだす事が出来ないままだった。
生徒会室でもクラスでも俺と目を合わせるだけで、敵意剥き出しの目をする。声を掛けようとしてもさっきの様に、「あ゛?」で付き返されてしまう。取り付く島が全くなかった。
「はぁ・・・・・。」
深夏のいない生徒会室にて俺はこの一週間で何度目かも分からないため息をつく。
「あの、杉崎・・・・・。大丈夫?」
「はい?ああ、会長ですか。大丈夫ですよ。」
「でも凄く落ち込んでるし・・・それにあれは元々私が原因で起こしたようなものだし・・・・・。」
「いいんです。会長。原因がどうであれ、加害者の俺が悪いのは誰の目から見たって一目瞭然ですから。」
「あれって、キー君が深夏を押し倒したって言うやつの事?」
知弦さんは現場にいなかったので事情を知らないのだが会長あたりが言ったのか、事情を知っている様だった。
「まあ、結論から言うと・・・そういうことです。」
「でも、アカちゃんがヘマしてそうなったんでしょ?だったらキー君にだけ怒るのはちょっと酷すぎ・・・。」
「じゃあ知弦さんはたとえ事故でも俺が知弦さんの胸に顔を埋めても怒りませんか?」
「それは普通に怒るわよ。」
「そうでしょう?だから深夏があんなにキレてるのも仕方ないんです。」
「でも、深夏が怒るのはいいとして、そろそろ文化祭の準備とかには入んないといけないからそれまでには仲直りしないと杉崎も私たちもギクシャクしちゃうし。」
そうだ。残り一週間で文化祭の準備が始まる。本格的なのは二週間くらい先だが、生徒会だしいろいろと確認やする事がある。確かにその時に喧嘩されてたりしたら皆の迷惑だろう。それは分かっているが、深夏に謝るタイミングが掴めない為、中々に仲直りが出来ないのもまた事実。難しい所だった。
「なんかきっかけがあればいいんですけど・・・・・・。」
「例えば?」
「・・・・・・・・・・・・・・深夏の家にでもいけたら十分なきっかけにはなると思うんですけど・・・。」
「まず、家に入るきっかけがないし、真冬ちゃんとかが入れないと思うけど・・・・・。」
「いえ!先輩が中目黒先輩を連れてきて真冬のベッドの上で18禁なことをしてくれたらいくらでも招待してあげます!!」
「むしろ行きたくなくなったわぁっ!!」
「ああ、先輩の大きいのが中目黒先輩の中に・・・・・。」
「ストップ!スト――――――ップ!!!!!それ以上は俺の理性が壊れる!」
そんなやり取りをしていたら、ガラガラとドアの音がし、深夏が入ってきた。
「ちぃーっす。」
深夏は俺の席の隣だが、やはり目を合わそうともしない。
深夏が入ってきて、会話も続けることは出来なくなりしばし沈黙が流れる。
その沈黙に耐えられなくなり、会長がこう言った。
「じゃあ・・・・・・・・・会議しようか?」
案の定、深夏とは会議が終わっても目を合わせる事すら出来なかった。

放課後。
雑務も終わり、そろそろ帰ろうかと思った時の事。
窓の外はいつの間にか雨が降っていた。巷で噂のゲリラ豪雨だ。
「ヤバッ、傘持って来てねぇ。」
一応折りたたみならなくはないが、この雨だとあまり役には立ちそうにない。最悪の場合は、骨が折れて傘として死ぬ可能性もあるかもしれない。
「・・・・・・・・・どうすっかなぁ・・・・・。」
悩んでいても雨は止まない。むしろ雨足が強くなる一方だ。
「仕方ないな・・・・。」
意を決して何とか折りたたみで行こうと思い、傘を雑務カバンから取り出す。
「頼むから折れないでくれよ・・・・・・。」
そう傘に願いをこめ、生徒会室を出た。
学校から出て、まず思ったこと。うん、普通に無理。折りたたみじゃ、帰った時にはずぶ濡れだ。普通に風邪を引く。でもここでじっとしてても風邪を引きそうだし、さっき意を決したばかりなのだから、今更後には引けないのでゲリラ豪雨の中を走る事にする。
走って暫くすると川が見える。いつも水深20cmしかなさそうな川も今や3mはあろうかという川になっている。川原もいまや飲み込まれそうで足を滑らしては二度と戻ってくれないぐらいの勢いで流れている。
「ん・・・・・?あれは・・・・。」
雨のせいで視界が悪いのだが、遠めに人影を確認する。あれは・・・もしや・・・・真冬ちゃん?
相手も俺ということを確認したらしく小走りで近づいてきた。やはり正体は真冬ちゃんだったようで息切れしつつも近寄ってきた。
「せ・・・先、輩・・・っはぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・・・。」
「ど、どうしたの真冬ちゃん。そんな息切らして・・・・。」
「お、お姉ちゃんが・・・・お姉ちゃんが川の中に・・・・っ・・・・・。」
「え!?」
川を確認すると確かに、深夏かと思われるツインテールのおさげが見えた。
「どっ、どうして深夏があんなとこに・・・・っ!?」
「・・・・子猫が、流されていたそうで、真冬が気付いた時にはもう飛び込んでいて・・・・・って先輩!?ちょっ、まっ・・・・!?」
考えるよりも先に体が動いていた。深夏は俺の手が届くギリギリの所にいるのでギリギリ救助は可能だ。
「深夏っ!聞こえるかっ!?深夏っ!聞こえたら、俺の手を掴め!!」
手を伸ばし深夏に近づける。だが、水位の方が力が上なのか、深夏は顔がまだ水中の中で返事はない。
「・・・・ぷはっ!!・・・なっ!?鍵!?おまっどっ・・・ぐぶっ・・・・・・・!!んっ・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!?ぶはっ・・・・!!ど、してここに・・・・っ!!」
「つまんない詮索は後だ!!早く掴まれ!!!」
「さ・・・・き・・・に、こっち・・・・ね・・・・・・・・この・・・・ほっ・・・・・んぶっ・・・・・・・!!・・・・・・・・・っ・・・・・・ぷふっ!!先に・・・・猫・・・・・っ・・・の方!!」
「あ、ああ分かった!!早く!!」
「んっ・・・・・・・・・・!!・・・・・・・ぶくっ・・・・・・・・・・!!!」
深夏が激しい水流の中、猫を俺の手に渡す。既にその猫はぐったりしていたが息はしていたようで、水をけほっと吐いていた。
「深夏・・・・っ!!早く・・・つか・・・・まれっ!!!」
「んっ・・・・・・・・!!!ぶふっ・・・・・・ごぷっ・・・・・・・・!!っ・・・・・・ぐぷっ・・・・・!!」
深夏は必死に手を伸ばそうとするがさっきに猫を渡す時の力が最後だったのか、手に力は入ってなく手を伸ばす事が出来なくなっていた。

「んぶっ・・・・・・・ぅ・・・・・・・ぅ・・・・・っ・・・・・・・・んっ・・・・・・・・・・・・・・」
さっきまで必死に喚いていた声も今は静かになり力が入ってなかった。
やがてそれは体に伝わり、それが指へと伝わる。土手につかまっていた手は次第に振るえ、小指が離れた。その後は早く、薬指、中指と離れていき、遂には手が離れた。
「深夏っ!!!!!」
俺はもうたってもいられなくなり、川へ飛び込む。予想以上に川の流れは急でまともに身動きすら出来ない。目を開けても、目の前は泥だらけでまともに視界は機能しない。ただ、身動きしている何かは察知できてそれに手を伸ばす。それは案の上深夏だった。
懇親の力を振り絞り、何とか深夏を土手に引き上げ、俺も川から上がった。流石にこんな緊急事態だと深夏の服が透けていてもエロの権化たる俺でも何も感じなかった。
「先輩!!」
遠くから真冬ちゃんの声がする。
「大丈夫ですか!!!?きゅっ、救急車!!救急車呼ばないとっ!!」
「いや、大丈夫・・・・ちゃんと息してる・・・・・・はぁ・・・はぁ・・・・はぁ・・・・。」
そうは言っても深夏の唇はすっかり青紫色になり、直ちに暖めないといけない。早く家に返さないと・・・・。
「真冬ちゃん・・・家は近い?」
「へ?・・・えっと、ここからだと10分くらいですけど・・・・。」
「じゃあ、おぶった方が早いね。」
深夏をおんぶし、真冬ちゃんに家を案内にしてもらう。
走ったので五分くらいだったが、その時は既に俺も深夏も真冬ちゃんもガチガチに震えていた。
「じゃあ、後はお願いするね?真冬ちゃん。」
「はい、先輩もありがとうございました。」
真冬ちゃんからタオルと傘を借り、家に帰る。・・・・・・風邪、引かなきゃいいけど・・・・。
翌日。
昨日の雨が嘘の様に晴れていた。
案の定、深夏は風邪を引き休みだった(俺と真冬ちゃんは休まなかった。)。
よって、他のメンバーは深夏のお見舞いに行き俺は一人で黙々と作業中。
俺も行こうかと思ってるがこの調子だと7時くらいになりそうだ。はぁ・・・・。

「いやぁ、それにしても深夏が川に飛び込むなんておもわなかったよ。」
「それだけ聞くと身投げしてるみたいだから止めてくれ・・・・。」
風邪を引いて休んでいたのだが、どうやら皆がお見舞いに来てくれたみたいだ。実際風邪自体はそこまで酷くはないのだが、母さんと真冬が休めとうるさいので休んだのだが・・・・全く43℃のどこが高熱だよ・・・ったく、今は37,2℃だというのに・・・。
「でも今時猫が流されているって理由で川に飛び込むのも凄いわよね。」
「だって、あのままじゃあの猫死んでいたぞ。」
ちなみにあの猫は母さんが、動物病院に送ったらしく、今は割と健康状態らしい。
「ダンボールの中に一匹で寂しそうにいたのに、川に流されてるんだから可哀想と思って助けようとしたけど、逆にこんなになったらザマねえな。はは。」
「ホントだよ。もっと自分の体を大切にしないといけないよ!」
会長さんにそう釘を刺される。いや、まあそうなんだけどさ・・・・。
「そういえば、昨日やっぱり氾濫した川に流されて行方不明になった人が数人・・・・・。」
「今になるとその冗談もすげえ笑えねえから!知弦さん!!」
「・・・・・・流されていたらどんなに良かったでしょうね・・・・。」
「よくねえよ!!ちっともよくねえよ!!つかあたしが死ぬ!」
「とあるガン○ンという漫画雑誌では主人公が家出をしたはいいけど流されてある島に漂流するという話しがあってね。」
「だから、なんだ――――ぅ・・・・っ、こっちは病人なんだからそんなに大声出させるなよ・・・。」
「むしろ深夏から大声出していた気がするけど・・・・・。」
「というか、あんな大声出せる人は病人とは言わないと思うけど。」
「あーっ!もう、そうだよ!所詮あたしは元気しかとりえがな――――ぃ・・・・っぅ・・・・・。」
「アカちゃん以外にここまで学習しない人は始めてみたわ。」
『どういう意味よ!(だよっ)』
「とりあえず、長居しても悪いし叫びすぎると深夏の体にも響くだろうし、私たちはそろそろ帰るわね。」
「・・・・なんか最近の知弦、私たちがツッコムとすぐ話題を変えるよね。」
「そう?」
「じゃあ、会長さん、紅葉先輩。お姉ちゃんのためにお見舞いに来てくれてありがとうございます。」
「うん。じゃあ深夏。早く元気になってね。」
「あと少しはその川に飛び込むなんていう無謀なのも治すのよ?」
知弦さんの物言いがグサッと胸に刺さる。
「うっ・・・・・言われなくても分かってるよ・・・・。」
そして真冬が二人を見送りに行く。付いていこうと思ったが、なんかいろいろうるさい事を言われる気がしたのでじっとしておこう。あたしだって流石に学習する。
「じゃあ、お姉ちゃん。今日はお母さんも帰ってこないし、買い物行ってくるね。」
「ああ、ごめんないろいろ迷惑かけて。」
「大丈夫。でも・・・・姉妹そろって自炊が出来ないのは致命的だよね・・・・・。」
「・・・・・・・・そうだな。」
恥ずかしい事にあたしも真冬も料理が出来ない。真冬なんてカップラーメンすら作れない。
「じゃあ、行ってくるね。」
「おう。」
真冬が買い物に行って、沈黙が訪れる。普通に過ごしていてもこれくらい静かな時はあるが、さっきまで賑やかだったので、なんか・・・・・寂しい。
「・・・・・・・・・・。」
なんか、ほんとに、寂しくて虚しくなってきた。寝る事意外にやる事もないし、布団をかぶったその時。
ピンポ~ン
ドアのチャイムの音が鳴った。
真冬だとしたら、鍵を持っているはずだし、会長さんか知弦さんなら忘れ物をしたということはないだろう。じゃあ、だとしたら、誰?
そうやって誰なのか考えていたら、もう一度『ピンポ~ン』という音がなった。居留守を使おうかと思ったが、それは流石に失礼だと思ったので、まだややだるい体を起こし一回に下りてドアを開ける。
そこには・・・まさかな訪問者の・・・・・鍵がいた。

雑務はやはりというか予想通りというか案の定というか、七時を回ったところで終わった。流石に冬の一歩手前の季節なので夏の面影は今は見る事もなく十分に暗くなっている。
で、ここで問題なのが、深夏にお見舞いするかどうかなのだが・・・・。さて、どうしよう?
無論昨日の事もある。あれだけ雨に打たれて、びしょぬれになれば普通は死ぬか重症だろう。深夏のことだから死ぬ事はなくても、普通は寝たきりな感じじゃないかと思う。別に昨日の事は俺が悪いわけではない。むしろ助けたのだから褒められてもいいだろう。だけど昨日の一件に関わった身としては・・・・・心配になるじゃん?
遅いとは思ったが、深夏のことが何よりまず心配だし、それに今この機会を逃すと一週間前のあれの事を謝る機会がもう二度とない気もする。だから俺はあえて遅いこの時間にいく事にした。
昨日の今日だから深夏の家がどこにあるのかはもう覚えている。夜の七時半を回り俺はそれでも深夏の家を目指す。
深夏の家の前に立ち、多少小走りして乱れている呼吸を整え、インターフォンを押す。
一回目のチャイムじゃあ反応がなかった。しばらく待つ事にする。まあこれで深夏が一人でいて、寝ているところを起こしては悪い気もするし。
もう一度、チャイムを鳴らし、これで出ないようなら深夏は寝ているとみなしかえろうと思っていた。ドタドタドタと会談を駆け下りる音がした。ああ、良かった。とりあえず骨下り損にはならなくって良かった。
ドアがガチャと開き、立っていたのはストールを羽織った深夏だった。
「へ・・・・?」
先に声をだしたのは深夏だ。俺が来るのが意外だったのか間抜けな顔をしている。まあ俺も意外に深夏が元気で予想外だったが。
「な、なんでここに鍵がいるんだよ・・・・?」
深夏が半分疑問。半分帰れって感じで聞いてくる。まあ一週間前の事を許してもらってるなんて思ってはないけどね。でも少なくとも取り付く島があるので、とりあえず話は出来そうだ。
「いや、お見舞い。」
「・・・・・別に来なくても良かったのに・・・・。」
「そう言うなって・・・・。結構心配だったんだからな。昨日あんな事になってたんだから。」
「うっ・・・・た、確かに昨日のことは・・・・・ってそういえばあたしってどうやって昨日家に帰ったっけ?」
「覚えてねえのかよ。」
「だ、だって京起きたのは6時ごろに一回少し目が覚めたのと、3時くらいに目覚めたんだから。昨日のことなんて真冬からも聞いてないんだし。」
「まあ、そうだけどよ・・・・・。」
「で、お前は知ってるのか?あたしがどうやって帰ったのか?」
「俺が負ぶって行ったんだよ。」
「・・・・・・・・・・は?」
深夏が少し沈黙し疑問系を投げつける。
「だから、俺が負ぶって行ったんだって。」
「・・・・ま、またまたそんな下らねえ冗談言いやがって・・・そんな事あるわけ・・・・・。」
「いや、ほんとだって。疑うなら真冬ちゃんに聞いてみろよ。」
「・・・・・・・・マジ?」
「マジ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
沈黙が訪れる。って何でここで沈黙が訪れるのかよく分からないのだが・・・・。
「ええ!?ちょっ、まっ・・・・昨日・・・・・・あたし・・・・・そんな事・・・・・・・・。」
深夏の頬が少しだけ朱に染まる。それと同時に気まずい空気が流れる。

「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
かなり気まずい・・・・深夏に敵意剥き出しにされてたあの一週間よりもかなり気まずい。
「あ、あのっ・・・・・ここで立ち話もなんだし・・・・・その・・・・・家上がるか?」
「えっ?・・・・・いや別に、お前が元気そうなの確認できればそれでよかったし・・・・・・。あ、それで明日には学校来れるのか?」
「へ・・・・あ、うん。多分。」
「ああ、そうか。それは良かったな。」
って、んな世間話しに来たんじゃねえんだよ俺は!!と、とにかく謝らないと・・・・一週間前の事を。例え深夏が気にしていないにしても俺がけじめをつけないと気がすまない。
「それで・・・・・その・・・・あの、ごめん!!」
頭を下げて深夏に謝った。
「一週間前に、事故とはいえあんな事したのは申し訳なかった!!すまん!」
俺は目をぎゅっと瞑り、頭を下げる。殴られるかもしれないし、許してもらえないかもしれない。でも謝らないと何も出来ないと思った。だから俺は別に深夏に許してもらうために謝ってるんじゃない。俺のけじめと、深夏が許そうと許すまいと仲直りがしたいから、ただそれだけだ。
「あ、あの・・・鍵?その、頭上げろよ・・・・。」
「へ?」
「べ、別にあれのことなら・・・・その・・・・・・・・もういいし、それよりもお前こそ大丈夫なのか?昨日あたしを助けるためにわざわざ川の中飛び込んだろ?」
「あ、ああ、そうだけど・・・・・でも結果的には無事だし・・・・・・・。」
「後、ごめんな、迷惑かけて。後その・・・・・・・事故だって私だって分かってたのに・・・・ずっと怒ったりしてあたしこそ・・・・・・ごめん。」
「・・・・・・・・・・・・。」
深夏から出た言葉は俺からしたら意外だった。だって深夏がまさか、ごめんと言うだなんて想像してなかった。明らかに俺が悪いのにも拘らず、こいつは謝った。それがただ、意外だった。
「そ、そうか・・・・・・・・・。」
「う、うん・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
再び気まずい空気が流れる。
深夏に謝る事もできたし、元気な顔も見れた。だからもうここにいる必要はない。
「じゃ、じゃあ、そろそろ俺は帰るから。」
「え?」
「じゃあ、明日学校でな。」
深夏に背を向けて、歩き出そうとした時。
「ま、待って!」
深夏に呼び止められた。
「?何だ?」
「へ・・・・?あ、いや、その・・・ごめん。なんでもない。」
「そうか。」
そういわれたので俺は帰る事にした。何はともあれ、心のつっかえ棒が取れたみたいですっきりした。でもその代わりにもやもやが出来た。擬音だらけで伝わりにくいのが申し訳ないが何故だか脳裏に深夏のあの、呼び止めた時の顔がちらつく。何故だかあの顔が俺の頭からはなれなかった。

何故だろう。何故あたしはあの時に鍵の事を呼び止めたりしたのだろうか。
分からない。ただあのときに鍵が帰ってしまうと思ったら胸がきゅんとして痛くなった。
反射的に呼び止めてしまっていた。鍵ともう少しの間でいいから居たいと一瞬だけ思ってしまった。
今も、胸が痛い。きゅんきゅんと締め付けるように胸が痛い。
学園祭まで後一週間とせまったとある日。
あれからあたしは何かおかしい。
なぜかある奴の事を見ているとどうしようもなく顔が熱くなる。
話しているだけなのにとてもとても動機が早くなってしまう。
隣にいるだけなのに手が汗ばんでしまう。
なんでもない仕草の一つ一つがとても気になって緊張してしまう。
今だって学園祭について普通に会議してるのに、胸がきゅんきゅん痛くて頭がボーっとなってしまう。あたしの隣にいる奴のことをただじーっと見ているだけだが凄く何故か・・・・嬉しいというか、幸せになっている。
「じゃあ、会長。実行委員と話しつけてきまーす。」
「うん。お願いね。」
そう言って鍵が部屋から出てしまう。
後ろ姿が目に入ってきた。意外と背中が広い。それはあいつも一応男子であると言うことを表している。
「はぁ・・・・・・・。」
ため息をついているのだが、正直言って顔はにやけている。
もう今となってはあいつと目を合わせるだけでも凄くしあわ――――。
「ねえ深夏。あなた、キー君の事好きなの?」

一瞬、理解が追いつけなかった。突然の不意打ちだったから反応すら出来ない。って言うか今なんて言った?「ネエミナツ。アナタ、キークンノコトスキナノ?」だって。えと、それ・・・・は、つま、り・・・・・そ、の・・・・あ・・・・・・・の・・・・・・・・・・(プシュ~~~)。
「わっ!!?深夏の顔から湯気が出てる!!」
「あ、ほんとね。」
「ばっ!!!馬鹿じゃねえのか!!!あたしがそんにゃ!!鍵ニョことしゅきになんなんてありるえるわけないだえおろ!!」
「そんなカミカミで言われても説得力が・・・。」
「だからっ!とにかく、違う!!あたしが鍵の事を好きになるわけなんか・・・っ」
「じゃあ、嫌い?」
「へっ?」
「だったら深夏はキー君のこと嫌い?」
「え・・・・・あの・・・・それは・・・・・。」
やっぱり今のあたしはおかしい。普段なら、いつもなら、即答で嫌いと言えたと思う。でも、今その言葉が喉につっかえて言えない。言えない。あいつの事が嫌いって言う事が出来ない。
「・・・・っ・・・・き・・・・・・・・きっ!・・・・ら・・・・・・っ!」
「・・・・・・・・なんか、深夏が違う人に見える。」
「こんな必死なお姉ちゃん見た事がありません・・・・・・。」
「というかここまで意地を張ってキー君のことを嫌いというあたり・・・・・・深夏も意地っ張りよね・・・・・。」
「って言うか・・・・・うん。深夏が凄く女の子に見える。」
「どういう意味だよ!!」
凄く顔が熱い。後いろんな意味で恥ずかしい。あたしが今抱いてる感情が少なくとも嫌いとかそういうのじゃないのは分かってる。でもこれが果たして好きって気持ちかというと違う気がする。
「で、深夏はキー君のこと嫌いなの?」
「っ!!!?」
この人本気であたしを虐めにかかってる!!
「・・・・・・・・・・・知弦はドSだねぇ・・・・。」
「そんなしみじみ言われても・・・・・・。」
「・・・・・っっ!!だっ・・・・だからっ・・・・!!別に鍵の事は・・・・友達としては好きだけどっ・・・・別に異性としてはなにも・・・・。」
「じゃあ異性としては?」
「っっっっっ!!!!!!?」
この人やっぱドSだ!!近年稀に見るドSだ!!!
「知弦もやめなよ。深夏が可愛そうだよ。それにほら、人の恋路を邪魔すると鹿に蹴られるって言うじゃない。」
「鹿じゃなくて馬だからね。馬。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
駄目だ、顔が熱くて何も考えれない。頭も痛いし、動機もするし・・・・・。
「お姉ちゃんがひん死状態です!!」
「わざわざポケ○ン的な例えで言わなくていいから。普通に戦闘不能とかでいいし。」
「それにしても・・・・・・・深夏がここまで純情というかなんと言うか・・・・・女の子だったとはね・・・・。」
「・・・・・・・・・うるせえよぉ・・・・・他人事だとおもってぇ・・・・・・・。」
「だって他人事だもの。」
そう知弦さんがいった時ドアが開いた。
「ただいま帰りましたぁっ!」
鍵が帰ってきた。
なんかさっきまであんな話をしていたから、余計に意識してしまう。
ポケーっと鍵を無意識的に見てしまう。そして幸か不幸か鍵と目が合った。
(ドクンドクンドクン!!)
や、やばい・・・・。胸、高鳴って、本気でヤバイ・・・・。ほんとに今のあたしはどーかしてる・・・・。
「ん?何だよ深夏。そんな見つめて、俺の顔になんか付いてるか?」
「っ!!?いっ、いや別にっ!!そんなんじゃなくて・・・っ!!」
「って言うかお前、すげえ真っ赤な顔だな。まさかこの前の風邪ぶり返したわけじゃあないよな?」
そう言って鍵はあたしの額に微妙に汗ばんだその手を触れさせる。
「っ!!・・・・・・・・はぅ・・・・っ・・・・きゅぅっ・・・・・・・。」
「へ?え、ちょっ深夏!?えっ!?どうした!?おいっ!」
鍵のその言葉を境にして・・・・・それから先のことはあんまり覚えていない。

「学園祭楽しかったな深夏。」
「へ?」
「でも、俺が一番楽しいと思ったのはお前と一緒にいれた事だよ。」
「そ・・・・・・それは、どうも・・・。」
「だから、俺がお前にしてやれるのは・・・・・・。」
「はぇっ?ちょっ、鍵!何顔近づけて!?わぁああああっ!!?」

ガバッ!!
「はぁはぁはぁはぁ・・・・・。」
ま、当然夢オチなわけで・・・・。
(我ながら・・・・・ホント我ながら何て頭の悪い夢を見てたんだろう・・・・。)
何であたしは、寝ている時でさえあいつの事を考えているんだろうか・・・・?
さっき気絶してから大体二時間位。あたしは保健室のベッドの上にいた。なんとなく思いだせる範囲の事を思い出すと鍵に額を触られて気絶してそして運ばれたのだと思う。
ホント・・・・あたしは最近どうかしていると思う。今更になって、改めて考えてみてもどう見てもおかしい。毎日毎日、一人の男の事が気になっていて、そいつの事を思うと上の空になり・・・・・・どこか、気持ちが落ち着かない。こんな事今までに一度もなかった。
もしかして・・・・本当に会長さんたちが言っていたとおりにこれは・・・・。

鯉?

「ない!!あるわけがない!!そりゃ鯉のあら煮とか鯉コクは好きだけどもせいぜいそれが関の山で・・・断じて・・・そんなわけ・・・・何・・・か・・・。」
なんかそう自分に言い聞かせてたら、今度は胸の奥がきゅんきゅん痛みだした。ああもぉ!!これも一体なんなんだよ!!?ずっとこんなに締め付けられるような感覚あったら何にも出来ねえだろうに!!
百歩、二百歩。いやそれ以上にもっともっともっとず~~~~~~っっと譲ったとして・・・・・・ありえない話だが、あくまでたとえ話として・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あたしが、鍵の事を、好きだと、しよう・・・。
「・・・・・・・・・。(カァァァァァッ)」
だっ!?だから、あくまで過程の話!!万が一、億が一、そういうことだとしてもだ!!
でも夢にまで見るのだから・・・・少なくとも気にはかけているとは・・・・・・思う。
それが恋心か、好意か、好奇心か、何かは分からない。
時刻も5時を回る。早く戻って生徒会の手伝いしなきゃいけないのに・・・・あいつと、鍵と一緒に仕事なんかもう出来ない。あいつと一緒にいるだけで、っていうかいなくてもあいつの事想っただけで体は言う事を聞かず、ギクシャクしてしまう。
「あいつと・・・・もう顔合わせられねえよ・・・・・・。」
こんなに辛い気持ちになったのも、こんなに胸が高鳴るのも全部全部初めてで・・・・・それもこれも皆全部鍵のせいで・・・・。


  • 最終更新:2010-07-10 21:58:53

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