一星龍さんの小説23

本文

運命の神様というのはとことん俺に意地悪らしい。

別れはいつか必ずやって来る。俺みたいな馬鹿だってそんな事は知っている。
『別れ』その言葉真っ先に思い出すのは飛鳥と林檎の事だ。飛鳥が俺の近くから離れるなんて思いもしなかった。ずっと一緒で、嫌になるくらいに一緒だと思っていた。林檎にしたってそうだ。家に帰ればいつだって「おかえりっ、おにーちゃん」と微笑んでくれると信じていた。
そんな日常が簡単に砕けると思いもしなかった。

もちろん二人の事を吹っ切ったわけじゃない。今だって二人の事は大事な人だ。
だけど俺はあの時学んだ。ようやく知った。本当に、本当に大切な人は離してはいけないと。何があっても、殺されようと、呪われようと、妬まれようと、裏切られようと、見捨てられようと、蔑まれようと、哀れに思われようと、憎く思われようとも。だから俺は絶対にこの握った手を離さないと誓った。深夏の手を離さないと決めた。

なのにどうして俺は、自ら手を離すような真似をしたのだろうか。何で俺はわざわざ過酷な道を選んで、深夏にもそれを歩ませようとしたのか。


世界はどうしようもなく、俺には厳しく、過酷で、絶望的で、絶対悪で、理不尽だった。



生徒会が終わって、普通に雑務をしている時だった。
俺は要望に会ったトイレのドアの立て付けが悪いので直しに二階の男子トイレに行っていた。
「ったく、俺は何でも屋じゃねえってのに……。」
四月の頃ならいざ知らず。いまだと、全校生徒のほとんどが俺が生徒会の雑務をしていると知っているので、昔と比べ無理難題や専門家じゃないと出来ないような事をいってくる。俺なら何でも出来るとでも思っているのだろうか? そういう期待をしてくるのはかまわないが、俺に無茶をいわないで欲しい。前に要望の中に『隣の高校の番長が殴ってきたのでぼこぼこにして欲しい』なんて要望もあったし。
こんな要望も結構増えてきたのであの程度の故障じゃ簡単に直せるようになった。
工具道具を片手に男子トイレを後にする。
するとうちの担任が応接間に入っていくのが見えた。それだけなら別になんでもない景色なのだが、一緒に入っていったのが香澄さんだった。
別に香澄さんだって相談したい事の一つや二つ、あるに決まっているだろう。
だが、好奇心か何かに駆られて俺は気付かないようにそれに尾行していった。

その時は気付かなかったが、洒落なんかじゃなくて俺はこの時の事を聴かない方がよかったと心底思う事になった。

『それで、先生。娘の事なんですが……。』
『ええ、分かってます。転校の件の話ですよね。』
(転校……っ!!)
思わず声をだしそうになる。
好奇心で聞くには重過ぎる内容だった。
『……私の身勝手な話なんですけど、あの子が男性を極度に嫌っているのは……いえ、敵視しているのは、私だって分かっているんですけど……。』
『お母さんの方は再婚をしたいのですよね?』
『ええ……内地の方がつい最近までこっちの方で働いていて、その方が内地の方に戻るので……それについていきたいと思っていまして……。』
『確かに、親御さん的には椎名さんを連れて行きたいのは分かりますが、彼女なら一人……いや、妹さんもいますから二人でも大丈夫なのでは……?』
『そうなのですけど……ホント身勝手な話なんですけど……私は二人についてきて欲しいというか……。ほとんど私のせいなんですけども、幼少の頃再婚しようと考えていた時がありまして、その時に娘は……深夏はその人とは関係ないようにして欲しいと言っていました。多分その時から、あの子は男性を嫌がっていると思います。』
『……担任の目から言わせてもらいますが、入学してから今までずっと椎名さんの担任をしていますが、確かに椎名さんは一年生の時は男子にも距離を置いていました。こんな事を言うのもなんですが、今年になってからなんです。男子と一緒にいるのを見かけるようになったのは。今の椎名さんからは男子にしても女子にしても距離なんて置かずにただ純粋に楽しんでいます。秋頃からは杉崎君と付き合っているとも聞きました。先生という職業柄こういう事を言うのは良いのか分かりませんが、ここ最近は一年生とは比べられないほどに学校生活を楽しんでいると思います。』
『それは……私も承知しております。男性をあんなに嫌っていたのに今のあの子は、私が今まで見て生きた中で一番楽しそうです。』
『そうですか……ずっとお一人で育てられたのでしょう? 椎名さんが拒絶するのも分からなくはありません。女家族に囲まれて、女子だけにしか関わってないと男性を極度に嫌ってしまうのも多々ありますし。』
『本当にお恥ずかしい話です……。私の夫は深夏が物心つく前に蒸発してしまいましたので……。』
『離婚というわけではないんですね。』
『もしかしたら彼がその辺の戸籍関連のことをやってくれたかもしれないので……その辺は私も詳しくはしりません。それに、今交際している方がとても彼に似ていまして……。』
『なんにしても、やはり本人と相談するのが一番良い策だと思います。私としては深夏さんには残って欲しいのですが……。』
『そうですよね……すいませんこんなお見苦しい話を持ちかけて……。』
『いえいえ、私どもでお力になれるなら何でもご相談してください。さて、もう遅い時間ですので外まで送っていきましょうか?』
『いえ、大丈夫です。ご親切にありがとうございます。』
ふたりが席を発つ音が聞こえる。俺は気付かれないようにドアから離れる。

あまりに俺の心に楔を打ち付ける話だった。
あまりに情報が多すぎた。たった一つでも衝撃的であるのに、幾つも積み重ねられたら、俺の心はパンク寸前になる。
不条理だった。俺の心が不自然なほどに歪だった。
俺の心に何よりも響いて届いたのは…………深夏がこの事をしっていて俺に何も話さなかった事だ。
それが何よりも深く俺の心に届いた。



「いつまでも隠し事を出来ると思ったら大間違いなのよ!」
会長がいつものように小さな胸を張ってなにかの本の受け売りを偉そうに語っていた。
ただ一つだけいつもと違うとすれば俺がツッコミを入れなかったことだ。会長はホワイトボードを叩いたポーズのまま俺のツッコミ待ちをしている。
だが、今の俺はそんな気分じゃなかった。昨日の事を明らかに引きずっていた。
「……す、杉崎? ほ、ほら、ツッコミ待ちだよ~ツッコンでよ~……。」
「……。」
「……。」
「……。」
「……。」
生徒会室が静寂に包まれる。いかん、こんなの俺じゃないだろ。こんな空気にさせて心配させるなんて俺らしくないだろ。そう自分に言い聞かせて顔を上げる。
「すいません会長。ツッコミ所が多すぎて俺には無理です。」
「ええっ!? 今の言葉の中にそんなにツッコミどころ多いの!?」
「当たり前じゃないですか。会長に隠し事なんて。ましてや会長は隠し事の塊でしょ?」
「そんなでもないよ! 多少皆には心開いてるつもりだよ!」
「俺への恋心を隠してるくせに。」
「杉崎への恋心なんて微塵もないよ!!」
「微塵未満程度にはあるんですね?」
「じゃあもう素直にないって言うよ!!」
「またまたぁ、ご冗談を。」
「ええいっ、ああいえばこう言う!!」
「むしろ、その言葉会長に返したいです。」
会長が俺とのボケ合戦でぜぇぜぇと息を吐く。
いつもどおりに振舞う。振舞っているがもうほとんど一緒にいる深夏にはなんか訝しげに見られた。
(……鍵?)
(へ? な、何だよ深夏……?)
(いや、なんか今日の鍵、変な気がするんだけど……?)
(そ、そんなわけねえよ。俺はいつもどおりだぞ。)
(でも、なんか……なんて言うかな……今の鍵は何だか余裕がないみたいに見えるんだけど……。)
(いや、ホントなんでもないって。……うん。)
(なんだよ、今の間は……。)
(大丈夫です。ホント、うん。)
(なら、いいけど……。)
「ほら、早速深夏と杉崎でなんか密会してる! だから私は隠し事をするのは――――。」
会長が何かいろいろ言っている。しかし、その会話が俺の頭の中に入ることはない。
知弦さんが会長を弄って、それに会長が反抗して、深夏がそれを呆れつつも笑っていて、真冬ちゃんはそんなの関係なしに妄想していて、いつもどおりで、いつもどおりに見えて、でもそれはやっぱり幻想に見える。

こうやって悩んでいるのが俺だったのか?

深夏は俺に隠し事をしてまでもこの景色を守りたかったのか?

こんな上っ面だけの付き合いがこの生徒会だったのか?

俺には、この生徒会が、この景色が、皆が色褪せて見えてしまう。

こんなだったか?

こんな脆い物だったのか?

歯車がいつの間にか狂ってしまっていた。それは皆が気付かないほどの数ミリの誤差かもしれないけど、確実に狂ってしまっていた。



生徒会が終わって帰り道。
深夏と肩を並べて歩いている。
深夏はニコニコしながら俺の隣を歩いている。でもなんでだ? 今じゃこいつのこの笑顔が全く輝いてない。いや、そう見せてないだけで俺の目が狂ってしまったのかもしれない。
「鍵……?」
「……。」
「お~い、鍵? 起きてるか?」
「……。」
「生きてる?」
「…………深夏。ちょっと大事な話があるんだけどいいか?」
「へ? あ、うん。別にいいぞ。」
だから俺は、こんなあいまいで靄がかかっているような状況を打破したいと思った。
でも、今思えば、俺自らが深夏との関係を、今までのいろいろな事を壊したのかもしれない。

「転校するって言うのは、本当か?」

空気が凍てついた。
「…… なんで、その事知ってるんだよ。」
「昨日、香澄さんが内の担任と話しているのが聞いてな。それで悪いとは思ったけど……。でも、なんで転校なんて。いや、なんで俺に相談しなかったんだよ! なぁ!」
「言ったらお前がどうにかしてくれたのかよ!!」
深夏が叫ぶ。暫くすると「ごめん……。」と謝ってきた。
「いや、だけど、深夏。なんで俺に相談しなかったんだよ。俺は確かに何でもできるってわけでもねえけど、お前をここに残す位は……。」
「知ってる、お前ならあたしと真冬を碧陽に残す位は出来ると思う。でも、あたしは……あたしはっ!」
深夏が俺に抱きつく。泣きながら、嗚咽を漏らしながら。
「この事を……鍵に話したらっぐす……転校するのを、ひっく、認めた、みたいでっ……それに、鍵のことも、ぐじゅ大事だけどっ……鍵が一番好きだけどっ、母さんとかっ、ひクッ……家族も、だいじっ、で……あた、し、も、どうすれば、いいのかわかんなくっ、て、ここにいるのとっ、ない、ちいくの、どっちが良いのかグスッ……わかん、なく、てぇっ!」
「深夏……。」
これまで深夏がこれほど悲しげにないたところを俺は見たことはない。いつも深夏は笑ってた。深夏の内面で怒っているのか悲しんでいるのかそれは俺には分からないけど、いつも深夏は笑っていた。その表情を、精神を壊したのは…………この、俺だ。
深夏はいつも、どんな時でも強かった。その強さを甘えにしてしまったのは俺のせいだ。俺と付き合ってから、深夏は俺に甘えてくれるようになった。深夏はそうなるまではずっと一人で真冬ちゃんやいろいろなものを守ってきたんだろう。その強さが甘えになったのは悪い事ではない。けれども、それは俺のせいだ。
「深夏、よく聞いてくれ。」
「……っぐ、な、に……?」

「深夏、内地にいってくれ。」

「っ! な、なんで、そ、なこと、いうん、だよ……っ!!」
「俺は、深夏の事が好きだ、だから――。」
「好きだったら、なんでそんな事言うんだよ!!」
「俺はお前の事が好きだけど! 香澄さんや真冬ちゃんだってお前のことが好きだって知ってるだろ!?」
「けど……だけどっ……あたしは、あたしはっ、鍵と、一緒にいたくてっ、ずっと一緒にいたくて……!!」
「別に別れようっていってる訳じゃない。少しの間会わなくなるだけだ。長期の休暇になったら戻ってこれるだろ? そんな死地に赴く兵士じゃねえんだから。深夏はもう香澄さんを拒絶したい訳じゃないだろ?」
「そ、だけどっ……鍵、けん……あた、し……あたしはっ」
「わかったら、泣くのはやめろよ。お前の泣き顔なんて死んでも拝みたくない。」
「くっ……う……ぐずっ……う、ん……。」
俺はこれが最も正しい選択だと思っていた。深夏にとっても俺にとっても過酷だとは分かっていたが、深夏にとっては一番幸せになれる策だと思っていた。
でも、神とか運命とか自然界その他諸々という者は、どうしようもなく俺には不親切だった。
予想だにしなかったが物語という奴はむしろここからが本番らしかった。



結局深夏は来年の春。つまり俺たちが三年生になる際に内地に引っ越す事になった。香澄さんとしては今すぐにでもと思っていたが、香澄さんなりの譲歩らしかった。
だからか、俺も深夏も残り少ない時間を少しでも一緒にいようと思った。
そんな、はく息も白くなり寒くなったクリスマスも近くなったある日の事。

俺はさらに世界の不条理なる物を喰らった。
「はぁ~っ、なんかあっという間に寒くなったな。」
深夏が白い息をはく。その姿はもう数週間前の転校の事は吹っ切った様に見える。
「そうだな。まあでも結構前から寒いだろ、この辺は。いっそう寒くなったのは認めるけどさ。」
クリスマスが近くなり、深夏と一緒にいられるのもあと三ヶ月となる。会長たちだってその三ヶ月で卒業する。そう考えると流石に俺も寂しくなる。深夏が通う学校は内地のお嬢様学校らしい。
「……そういえば、鍵。」
「ん、なんだ?」
「鍵はクリスマスプレゼントなに欲しい?」
「……。いや、お前がくれるなら何でもいいけど、そういうのは隠した方がいいと思うだが。」
「あ……。」
「素だったのかよ。」
「じゃあ、鍵今の聞かなかった事にしろ。」
「ええー。」
そうなんでもない会話を深夏とする。深夏の家のドアを開こうとドアノブに手をかけてドアを開ける。
「ただいまー。」
深夏がそういって玄関に入る。
ふと玄関においてある靴を見てみる。誰のものか分からない男物の黒い革靴が置いてある。
嫌な予感がした。深夏もそう思ったのか居間へと駆ける。
「ちょっ、深夏!?」
深夏もどこかで察していたのだろう。香澄さんの再婚相手であったという事を。だが、現実とやらはもっと酷いものをたたきつけるようだった。
「あら、深夏。お帰りなさい。」
「う、うん……あのさ、その人……。」
「え? ああそういえば、深夏に伝えたい事あったのよ。全く私も名前が違うからって別人と思っちゃうなんて。」
「……は? か、母さん、な、なに言ってんだよ……?」
「ん? ええっとね、深夏。この人はね――。」

「あなたの本当のお父さんなのよ。」

「…………え? ちょっ、か、母さん……な、なに言って……。」
深夏が明らかに動揺している。ていうか待て。俺としても超展開についていけない。
それはそれとして、深夏の方を見てみる。一目で分かるほどに動揺、いや焦っている。目の瞳孔は開ききっているし、歯がカチカチなっている。虚ろな目で「うそだ……嘘だ……。」とポツリポツリと言っている。鬱状態になってしまっている。
「深夏? おい、深夏!?」
「うそだ……嘘だ……嘘だ……嘘だ……。」
足がガクガクと震えている。そう思ってもう一回声をかけようとしたその時。
「あ、あああ、ああああああああ………………っ!」
深夏の足がぐらりと崩れる。何にも支えられていない深夏の体はそのまま倒れた。
「深夏!? 深夏!? おい、しっかりしろ!!」
そう呼びかけるも反応は全くない。
(とりあえず深夏をベッドに運ばないと。)
そう思った俺は深夏を負ぶって深夏の部屋までいく。

何でだ? 何でこうも歯車がかみ合わない。もうとっくに、俺たちの周りの世界は狂ってしまったのか?



「香澄さん、あんたどんだけ間抜けなんですか。」
「……ま、まぁ、それに対して言い返すことは出来ませんけど……でもまさか、元夫だとは思ってなかったので……。」
深夏が気絶して、これ以上いると深夏に悪いと思ったのか、旦那さん(照明さんというそうだ)は帰ってしまった。
「って言うか……はい、ちょっとついていけないので説明していただけませんか。」
「私たちの馴れ初めを?」
「んな事はどうでもいいんですよ。」
そう冷たく言い放ったら香澄さんは「何だか鍵さんの反応が深夏みたいに冷たくなってるわ……。」としょんぼりぎみで言っていた。俺も普段ならそんな事は言わないだろうが、流石に深夏がああなったのだからちょっとキレ気味になっている。多分そのせいだ。
「まあ……確かにそうよね。まさか本当に照明さんだなんて思ってなかったから……。」
「そもそも……香澄さんはいいんですか? 転校とかそれ以前の問題に旦那さんは家族を捨てたんですよね。それなのに付いて行くんですか?」
「…………照明さんは……そうね、深夏から見たら捨てられたと思われても仕方ないですよね。鍵さんも深夏からそう聞いたんですよね?」
「ええ……。」
「深夏にも話してない事ですけど……鍵さんには話しておきます。」
「いいんですか?」
「ええ……もしよろしかったら深夏にもそれとなく伝えといてくださいね。照明さんもなんだかんだで寂しがりやさんなので。」
「はぁ……。」
なんか変な事をお願いされた。
「まず照明さんは別に私たちを捨てたわけじゃないんです。深夏が生まれたばかりの頃に実は輝明さんの勤めていた会社が倒産してして、それを悪く思ったのかどうかは分かりませんけど、内地に行って仕事を探しにいったんです。多分深夏はその一連の事を勘違いしていたんでしょう。」
「いきなり重いですね。」
「すいませんね、こんなつまらない家庭の事情を話して。」
香澄さんが申し訳なさそうに苦笑する。
「いえ、いいんです。俺から聞いたことですし。で、別に離婚したわけではないというのは分かりましたけど、それだったら何で他の方と付き合ったりしてたんですか?」
「輝明さんが残した書置きの中に『もう僕の事は忘れてほかの人と幸せになってくれ』と書いてあったのでそれに従ったんです。」
「そんな簡単に想いを変えられるんですか?」
「あの人なりの優しさだったと思います。今日聞いた話だと会社を立ち上げたそうですから、私たちに迷惑がかかると思っていたんでしょう。」
「でも……。」
「鍵さんには節操なしだって言われそうですけど……やっぱり私は輝明さんの事が好きなんです。だからこそついていきたいと思いました。でもそれと深夏が転校するというのは関係ないです。あのこは変なとこで頑固だから。」
「でも深夏は、香澄さんとの中をどうにかしたいって……。」
「例え深夏が私のことを後ろから刺したって私はあの子のことを嫌いにはなれませんよ。娘ですもの。だから深夏が私のことを気にしてくるなら本当は止めようと思っていたんです。でも、鍵さんがいくようにいったんですよね?」


「はい……。」
「本当によかったんですか?」
「深夏の幸せを考えて、考え抜いた末の答えです。」
「私だって娘の幸せを一番に考えています。深夏には好きな人と離れ離れになるあの苦しみを味あわせたくないんです。」
「でも、ここで深夏がここに残ってしまったら、深夏はきっともう香澄さんの事を受け入れる事は出来ないと思います。それだけは絶対にダメです。家族のつながりって言うのは俺なんかよりも大事なはずです。」
「本当にいいんですか?」
「大丈夫です。俺はそう簡単にへこたれませんから。」
「そうですか……。あと最後にもう一つ。酷だとは思いますけど……。輝明さんは久しぶりの休みだからこっちに来たんですけど、今は会社の経営が悪いそうですから、今月中にはもう内地に行かないといけないんです。」
「…… そう……なんですか……。具体的にはあとどれ位なんですか?」
「一週間ですけど……今のを聞いても深夏を止めようとは思わないんですか?」
「深夏だったら大丈夫です。それに残り一週間も三ヶ月も同じです。残り一週間しかないなら三か月分……いや百年分くらい愛してやりますよ。」
「鍵さんは強いですね。私もそれくらい強かったら……。」
「そんな事ないですよ。じゃあ深夏のことをよろしくお願いします。もうちょっと遅いんで。」
「送りましょうか?」
「そんな遠くないから大丈夫です。」
香澄さんにそう言い、俺は椎名家をあとにする。
「はぁ……。」
俺は馬鹿だな。何が深夏の幸せを考えての事だよ。本当だったら逢引でも何でもして深夏を連れ去りたいと思ってるくせに、見栄しか張ってない。強いだって? ハッ、笑わせる。全然強くなんてない。俺はただただこの鍵に必要以上に関わりたくないだけだ。自分が傷付きたくないだけだ。それを分かっていて、俺は何もしなかった。深夏が好きなのにも関わらず。
俺は何もしなかった。

運命か、嫌味か知らないが、一週間後はクリスマスだった。
とんでもねえクリスマスプレゼントをサンタは送りつけやがった。



12月24日。
明日は深夏がいなくなる日だ。
だから俺は今日までもう嫌になるほどに遊びまくった。でもやっぱり深夏はうかない顔をしていた。それもそうだ。いつも笑っている深夏が一週間ずっと悲しそうな表情だった。まるで死刑宣告を待つ死刑囚のように。
結局この一週間深夏の笑顔を見た事がなかった。そして今日、深夏は引越しの準備をしているので今日は一緒にいない。
「俺って……彼氏失格だよなぁ……。」
深夏のあの悲しげな顔が見たくないがために引越しの手伝いに俺はいかなかった。
そんなふざけた事思っていたら携帯のメール着信音がなった。
「誰だよこんな時間に……。」
送り主は……深夏だった。

From:椎名深夏
Sub :会いたい

どこに行けばいい?

「……っ」
驚いて息が止まる。
そんな、いきなりとは思ったが、よくよく考えたらこれが最後に会えるチャンスなのかもしれないのだ。こういうメールを送ってくるのは別に不思議ではない。
「ははは……。なんつーか深夏らしいな。」

Sub :Re:会いたい

こっちから行く。今どこだ?

「…………。」
数分してからまたメールが来た。
「……っ、と……。」

From:椎名深夏
Sub :いや、あたしから行く

今、鍵の家の前にいる。という訳で、開けてくれ。

「お前はメリーさんかっ!! 怖いわっ!!」
おもわず携帯を投げる。さっきまでのシリアスムードをぶち壊すほどのボケだった。
ピンポーン。
「…… 本当にいたのか……。」
少しだけゾッとする。まあ、深夏がいて出ない訳にも行かないので玄関まで行く。
「はいはい、深夏?」
ドアを開ける。
もちろんそこには深夏がいた。ただ、着ている服がこの寒空なのに白いTシャツとジーパンだけだ。髪も解いている。汗を少しだけかいている様なのでジョギング中だと思ったが唇が少しだけ青紫色になっていて明らかに寒そうだ。むしろ汗をかいている事によってより体を冷やしているようにも見える。
「なっ!? お前なにそんな馬鹿な格好してんだよ!」
「………………別に。」
「別にって……とにかくシャワー浴びろ!」
深夏の手を引っ張って家の中に入れる。だが深夏は全く動こうとはしない。
「…………やだ。」
「……はい? 深夏、お前何言って――。」
その言葉は途中で遮られた。深夏がキスをしてきたからだ。それを少しばかり強引に引き剥がす。
「ぅぐ……っみ、深夏、お前なにやって……っ!!」
そう言ったら今度は深夏が俺に抱きついてきた。
「…………ぅ……っ、けん……けんっ……や、だぁっ……あたし、鍵と離れたくな……いっ」
俺に顔を埋めているせいで声がくぐもってあまり聞こえない。だが、明らかにその声は枯れていて、泣いていた。
「ぅ……っ、やだ、やだやだぁっ! けんと、おまえと離れた事なんて……想像できねえんだよ! あたしっ、は、鍵のこと、大好きで、ずっと一緒に、いたくてぇっ! ぐっ……けん、ずっと、ずっといっ、しょだって、言った……言ったのに……いったのにぃ……っ」
深夏の体はとても冷たかった。本当にこいつの悲しいって感情がそのまんま体に出ているようだった。そうだ、俺はこいつがこんなに悲しそうにしているのを見た事がない。深夏がここまで悲しんでいるのは俺のせいだ。
俺が深夏の家族の事に余計な事をしたから、俺に恋なんてしてしまったから、俺に会ってしまったから。
だけどもう皆遅い、全部過ぎてしまった。本当のことを言うなら今すぐにでも深夏をつれて逃げ出したかった。こんな状況を作った俺自身をぶち殺したい気分だった。何でだよ? 深夏のために良かれと思ったことなのに、どうしてこうも歯車が狂うんだよ。
俺は泣いている深夏の顔を無理やり上にあげ唇を重ねる。
「ふむっ……ん、ぅむ……ちゅ……ちゅぷ……んっ、む、くっん……」
もうそれは愛とか恋とかそんな綺麗ごとでまとまったキスではなかった。己が寂しさを紛らわすために、慰めるために互いにキスをしているようなものだった。
「ちゅく……ッ、んふ……んんぅ、あふ……っ、ちゅるっ」
今更だった。今更気付いた。俺の選択したこのルートはバッドエンドフラグだったんだ。歯車をどうにか調節しようとしても、それ自体が意味のない行為だった。
ああ、俺は自分が好きで自分のことを好いてくれている女さえ守れない。

俺は





無力だ。



「ふぁ……ぐっ、んむ、ちゅ、ぷ……ちゅるっ、んっ、はぁ……けん……けん」
深夏がうわ言のように俺の名を呼ぶ。
「ああ、いるぞ、俺ならここにいる。」
「けん……けん……ちゅ、んんっ、むふっ……くちゅ、ちゅぷっ……んんんっ!」
深夏が目を閉じている間に俺は大きい曲線に触っていた。
「あっ……そこ、いきなり、さわ……るなぁ……ひゃうっ、んっ……ひうっ」
「恥ずかしいか?」
「あ、当たり前……っあうぅ……ん……やっ、ふあっ、う……」
まだ深夏の体は冷たかった。それにいつもより酷く細く見える。だけどその一つ一つが愛おしい。こんな馬鹿で腐っている俺のことを好きでいてくれる深夏が堪らなく好きだ。
深夏の薄着の服を脱がす。白いTシャツの上からじゃ、分からなかった白い下着をつけている。
「う……あんまじろじろ見るな……」
「恥ずかしいから?」
「…………うん」
やっぱり何かしら緊張する原因があるのかもしれない。明日別れる訳だからそういう気持ちになるのは俺だって一緒だ。一緒にいることはもう出来ない。せめてこの一瞬位は伝えたい、分かりたい。それが俺の自己満足であっても。
「やっ……ぁ、うん……やぅ……ぅっ、あっ……」
切なそうに深夏が喘ぎをあげる。
「直接してもいいか?」
深夏の顔が朱に染まり俺から目を逸らす。
「…………う、ん」
深夏の体は暖かくなり始めていた。



「ああっ、くぅ……っ! やぁっ! ……あふっ……うう、あんっ!」
くちゅくちゅと部屋の中に淫らな水音がひびく。
「んくっ!? ひや、あっ!! お、奥は……あっ!! んああっ!! む、胸……そ、んなに……苛め……ちゃ、ぁ……っ!!」
「直接してもいいって行ったのにそんな奥は、なんていうなよ。」
「そっ……それ、はっ、胸だけだと……思ったからで、ぇうっ! あっ、うあ、や、うあやめえっ!! ひうぃっ、こ、これっ、な、なんかきちゃっ!! きちゃうよぉっ!! ふあっ!! んんんぅっ!!!」
感じて肥大しているクリトリスやこりこりになった乳首を舐めたり、つまみながら深夏を愛撫する。さっきまでの悲しみ苦しんでいた様はなく、感じて悶えている様は俺の嗜虐新を熱く高ぶらせる。
舌の腹で乳首を押すように舐めてみる。
「ひにゃっ!? んあっ、ああぅっ!! だめっ!! だめぇっ!!」
途端に膣内のぬめりがよくなった。こうされるのが良かったんだろう。そう思った俺は今のを二度、三度と繰り返す。
「あっ、や、うっ!! ひやっ!! だめっ!! そ、こっ! あああんっ!! やっ、うゆっ!!? あああああああっ!!!」
自分の体を大きくくねらせながら深夏は果てた。涙目なとこが凄くかわいい。
「う、あ…… バカ……ぁ……。」
「バカって……お前なぁ……。」
「悔しいから……あたしも鍵の事、気持ち良くする。」
そういって俺の股間に顔を埋めてきた。
ジーッと、ズボンのチャックが開く音がする。
「わ……も、こんな大きい……。」
「し、仕方ねえだろ……深夏のあんなとこ見てたら……。」
「……あたしだって鍵が気持ち良さそうにしてたらあたしも変な気分になったから知ってるけどさ……。」
それを言い終わると同時に深夏は俺のものにしゃぶりついた。
「んんぅ……かてゃくて……ちゅぶっ、あちゅい……ふむっ……あんっ、じゅるっ……じゅるるっ、える……れる……ちゅっ、む……ふぅあっ、んちゅ……じゅりゅ、んっ、んむっ」
「うわ……深夏そこ……い、い。」
「? 先っぽの方が良いのか? むぅ……じゅるっ、ちゅっ……ちゅるっ、んあぅっ……ぅむっ、ぺろ……ぺろ……ちゅっん……ちゅぷっ」
ヤバイ……なんか深夏格段に上手くなってる。俺の感じるとこばっかせめて来て……すぐにでも出そうだ……。流石にそんな簡単に出すとからかわれそうでやなんだけどな。
「むっ…… く、ぅ……ちゅっ、る、ちゅぶっ……れる……じゅ、んぅっ……あ、なんか、しょっぱいのでてきた。これって気持ちいいと出るんだよな、確か。」
「あ、ああ、そうだけど……。」
「じゃ、もっとする。んむっ、ふ、じゅるるっ、んちゅるっ、ふむっ、ちゅっ、く、んっ、ぢゅっ、んむっ」
途端にペースをあげてくる。舐める速度はもちろんのこと、吸ったり、竿をしごいたりする様も速くなっている。ただ速過ぎて快楽もあるが少しだけ痛い。
「ちょっ! 深夏っ! ま、待て……っ! ぐっ、ぅ!」
「? 何でだよ、こうするといいって言ったのは鍵だろ?」
「そうだけど、速過ぎてちょっと痛い。」
「う……っ、ご、ごめん……じゃあ、もっとゆっくりめにするから、それでいいだろ?」
「あ、ああ。」
「んっ…… む、ぅっ……れる……ちゅ、んんっ……ぢゅるっ……んっ、むぅっ……んちゅっ……こん位の速さでいい?」
「あ、ああいい。気持ちいいぞ、深夏。」
喋った時の吐息が俺のものに当たってくすぐったいがそれが気持ちいい。
「良かった。じゃあもっとしてやるからな。ちゅっ……ちゅぶっ……ん…… ぷっ、ぅんっ……れるっ……ちゅ、んっ……ふ、んっ」
「ヤバイ……ッ、ちょっ、それはマジでヤバ、イッ……ぐ……ぅっ」
頭の中に次第に靄がかかっていくような感覚が襲ってくる。 やがてそれで周りが真っ白になる。
「ぐぅ……あ゛っ!!」
ドクン!! ビュルルッ!! ビュルルルルッ!!
「ひやっ!? んっ、んんぅっ」
深夏の顔に白く濁った精液がかかる。
「んっ……出すなら出すって、言えよ……うあ、顔がべたべただ……。」
「う……ごめん。」
「ばか、謝るな。謝って欲しいわけじゃねえんだから。」
「じゃあ、何しろってんだよ。」
「……そんなの鍵だったら分かってるだろ……?」
「いや、わからねえ。」
無論、嘘なのは言うまでもない。
「う………… 鍵の意地悪……。」
「意地悪で結構。」
「……変態。」
「自覚してます。」
「……シスコン。」
「お前もだろ。」
「…… ハゲ。」
「ハゲてねぇっ!」
「そこだけかよ、否定すんの。」



「ほら深夏、足開いて。」
「う……うん。」
深夏が顔を羞恥に染まらせながら、少しずつ足を開いていく。
俺とは目を合わせようとはせず赤い顔のままもじもじしている。
「じゃあ、挿れるからな。」
自分の物を深夏の秘部にあてがい、少しずつ挿れていく。
「あっ…… やっ、はっ……、おっき、いの……挿ってくるぅ……く、ぅっ……ああんっ!!」
もうグチュグチュに濡れているそこは、俺が何もしなくても奥へ、奥へと誘ってきてくれる。
「ひゃっ! く、ぅんっ!! あっ、んっ!! 鍵……っ!! お、奥に……入れひゃっ!! ああふっ!! う、動かしちゃっ!! ああんぅっ!! ……すごっ、これ、ぇっ、膣内でっ、おっきくなってるぅんっ!!! あっ、あっ、いっ、いきなり、っおっきの、きちゃうと、気持ちよく、なりすぎっ……るぅっ!!」
一瞬こつんと当たったような感触が先端に感じた。その瞬間に深夏は大きく仰け反りあがる。
「ひゃっ!!!!!? ふああああああああああっ!!?」
膣内の締りがいきなりキュゥッと締められ、深夏の表情などを見ると……今のは明らかに果てた。
「はぁ……ぁっ、やっ……くっ、は、ぁ、ぁ、ぁっ……ひ、ふ……んっ、はふ……ぅっ」
息は荒くなり、表情は恍惚としている。だから俺はあえて、深夏の耳元でこう囁く。
「深夏……今、当たっただけでイッちゃったのか?」
「っ!!? そ、そんな事なっ!」
そう言いかけるのを腰を揺すって膣内を突いて止める。
「あっ! ……ひゃっ、ううっ! ふ、ぅぅっ」
「だってさ、深夏。今ほんのちょっとだけ動かしただけなのに、すっげえ温かくてぐちゃぐちゃだぜ? イッてないって言うならどうしてこんなになってるんだよ?」
「そっ! それはっ!! さっきまで、触られてた奴の後がまだひいていてっ!」
「俺の精液飲んだのがそんなの良かったのか? だとしたらとんでもなく淫乱だな。」
「だっ! だからっ!! 違くてっ!!」
深夏の膣内はまた熱くなりだし、少しずつ狭まっている。言葉攻めだけで興奮しているようだ。
「今、お前すっげえ興奮してるだろ?」
「やっ! ……ち、ちがっ! あっ……なっ、なんで、そんな意地悪なこと言うんだよぉっ」
「別に意地悪なんざしてねえよ。でも、今こうしていて、深夏が興奮しているのは事実だろ?」
「そっ、だけどぉ……」
深夏が目を逸らしながらそう言う。そういう姿を見ているとやっぱり意地悪したくなるのが男なのだから、また腰を揺すってみる。


「あっ!! ひゃあっ!! だ、だめっ、けんっ……そんなに……揺すっちゃあっ!!!」
「そんなに揺すったら……どうなるんだよ?」
「……っ!! 言わ、なきゃダメ?」
「別に言わなくてもいいけど、俺が勝手に判断するぞ。」
深夏が明らかに嫌そうな顔をする。勝手に変態だと思われるのがいやなんだろう。なら、ここまで来れば後の展開は大体分かる。
「……、……ょ」
「え?」
「~~~っ!!! また、イッちゃうって言ってんだ!!」
大声で言い放った。後から羞恥が追いついてきたのか、凄い顔を真っ赤にしている。
「そうやって素直な深夏が一番好きだぞ。」
「ば、ばかっ、変なこと言うなっ」
「はいはい。」
そう言って、俺はまた腰を動かし始める。
「ふっ……ひゃ、あっ! う、んんっ、ああっ、く、うぅんっ!! あっ、は、んっ!! はぁっ! くっ、や、あぁっ!」
また恍惚に溢れた声をだしてくれる。こんなに可愛い声で言ってくれるんだからそれなりに俺も興奮する。
「ひゃっ!! あっ、あっ!! あっ、い、いっ!! あつっ……くてっ!! かたいのっ!! きちゃっ……きちゃうのぉっ!! けずれちゃっ!! こんな、きもちいのっ!! だめっ!! ああぁっ!! やっ!! やはあああああぁぁぁぁぁっ!!」
大声を上げるが別にイッたわけじゃない。深夏の中で何かが切れた合図だ。
俺はそれに乗じてさらに快感を得るために深夏の体を持ち上げて騎上位へと体位を変える。
「あへぅっ!!? やっ!! やああっ!! だめっ!! これ、ぃたかりゃっ、ちゅきあげてっ!! あぐっ!! ひやはっ!! きもちいのっ、とまんなっ!! あああっ、やはっ……っ!! あっ、ああああっ!!!」
騎上位にして新しいとこにでも当たったのかどうか知らないが、深夏はさらに感じてくれている。それが結果的に俺も気持ちよくしてくれる。
「あっ、あああっ!! ちから、いれらんにゃっ!! ぐりゃぐらひちゃっ、だめっ!! も、これっ、たもって、なれにゃひっ!!」
深夏が言葉の通りに力が抜け俺に体を預けるようになる。顔と顔とがかなり近くなって深夏がどれほど感じているのかが良く分かる。
「あっ、はぁっ!! んんぅっ!! け、けんぅっ……けんぅっ……あむっ……じゅちゅっ……ちゅぶっ、しゅきっ、だいひゅきぃっ、あっ、あひゅうんっ!!」
深夏とキスを交えて、よりうっとりした表情になる。
「ぐ、深夏……そろそろ出そう。」
「んっ!! ひ、よ……、っんふ!! いっぱい……っ!! あたしの中、いっぱい、だしてぇっ!!」
「あ、ああっ……ぐ、うっ!!」
どびゅっ! びゅくんっ!! びゅるるるっ!!
「あっ、はっ!!! や、あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
また、思い切り果てた後、深夏がぐったりとしながら、俺に覆いかぶさるように倒れる。
「あっ……はぁっ…… んあっ……鍵、キス、して……。」
「ああ。」
「んはぁっ……ちゅ、ちゅっぷ……ん……んむっ……はぅ……ッんぁ……ふぅんっ」
一瞬かもしれないし、永遠かも知れない。そんな曖昧なキスだけど、俺たちは深くキスをした。



「すぅ……すぅ……。」
深夏は今俺の隣で寝ている。何も邪念もなく、凄い純粋な寝顔だ。
この笑顔を見て改めて俺はどうしようもない馬鹿だと思い知る。深夏の幸せを考える事が俺を不幸にして、そして深夏も……。
ひたすらずっとこのままでいたいと願う。だけど、無情にも時間はただ過ぎていくだけ。
結局なんだったんだろう。深夏のためにと思ったら、深夏は悲しんだ。深夏が幸せになれるなら俺は平気だと思ったが、悲しんだ深夏を見て酷く心が痛んだ。
「いいや、めんどくせえや。…………寝よ。」
そういって布団の中にもぐる。布団の中は暖かかった


朝、俺は目覚めた。
隣に深夏は





いない。
「………………。」
俺の中でとてつもない喪失感と、絶望感が漂う。ただ、それだけなら良かった。深夏がいなくなったらこんな気持ちになることを覚悟していたからだ。それでも俺の心には重く圧し掛かったが。
俺が……今、最も心に重く圧し掛かられているもの。……それは発った紙切れ一枚に書かれている言葉だった。

『ごめんな、鍵

さよなら。』

「っ!!! ぐ……ぅっ!」
悲しい訳でもないのに涙が出た。怖いわけでもないのに身震いがした。ただ、胸の中にあるのはひたすらに虚無感。
無力だった。何も出来ない。深夏にそうさせるように仕向けたのは俺だ。だから、取り戻す事だって出来ると思っていた。無力だというのは……虚無感から生まれでるものに俺が支配されたことだ。深夏のこの別途の言葉に俺は何もかもやる気も勇気も愛も希望も夢さえも削りとられた。
大事な人をあえて手放した。それが幸せになる事だと思ったから。

それは、俺が今まで犯した罪の何よりも




重かった。

参考情報

2010/04/23(金) 22:00:45~2010/04/23(金) 22:06:33で13レスで投稿。
一星龍さんの生徒会の一存のエロ小説を創作してみるスレでの23作品目。

  • 最終更新:2010-07-09 20:53:30

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