名無しさんの小説10

本文

六月五日 雨 欝だ、死のう。
       前まで書いていた生徒会日記を失くしてしまった。
       それに加え雨まで降っている。
       とりあえずやる気が起きない。帰って寝る。

六月六日 雨 また雨だ。
       やる気が起きない。帰って寝る。

六月七日 雨 もうヤダ。
       死のう。

六月八日 晴 やっと晴れた。
       とりあえず、日記の新調やら近況報告やらを忘れないうちに書いとこう。
       この日記は、春秋からもらったものだ。
       ぼくが日記を失くしたのに気付いた、つまり六月四日に、ポツリと日記を
       失くしたことをつぶやいたのを春秋が聞いて、「だったら僕に任せて」と爽
       やかな笑顔を浮かべた。あの顔を思い出すだけでも吐き気がする。そして
       次の日、六月五日に春秋は、黄色くて赤いシャツを着ている熊の日記をく
       れた。正直うざい。センスの無さに脱帽した。クリスマスのときのシャー
       プペンもそうだが、少々チョイスがおかしい。それを早速使って日記を書
       き始めている自分もそうだが。
       そしてここ数日で起きた近況報告・・・のはずだったけど疲れた。
       帰って寝る。

六月九日 晴 またしても春秋がうざい。
       なにがうざいのかというと話が長くなって疲れるからやめる。
       もうすでに疲れた。
       帰って寝る。
       
六月十日 曇 とりあえず、ここ数日の近況報告を書いておく。
       まず、日記の中にラブレターが入っていた。宛名は春秋。
       破り捨てて、燃やした。
       六月五日のときの日記を記すため、最初のページを開く。
       ラブレターが入っていた。宛名は春秋。
       封筒の表には、こう書かれていた。

      「君のことだから、一通目は破ったり燃やしたりしたのだろう? 保険のた
       ために、もう一通忍ばせておいたんだ。」
       
       うざかった。日記を上下に振ってみる。同じ封筒がばらばら出てきた。
       やけに分厚いと思ったら、これのためか。
       仕方ないので、一通空けて中を見てみる。

      「六月九日の放課後、体育館裏で待ってます。植野春秋。」

       乙女みたいな文脈だった。キモかったが、行ってみる価値はあるかもしれ
       ない。そう思って、ぼくは寝た。
       そして六月九日、体育館裏。春秋がいた。顔を赤くしている。キモい。
       死ね。
       春秋は、憧れの先輩に告白でもする乙女のような面持ちで、ぼくにこう
       言った。
      「ゆ、雪海! 明後日の十一日、よ、よよよ良かったら、ぼ、僕と遊園地に
       行かないか!?」
       断る。
       切り捨てて、ぼくは帰路につく。
       あの即答したときの春秋の顔といったらもう。
       この世の終わりかと思わせるような顔だった。
       なぜか、背筋にぞくりときた。
       あれが俗にいう、S、というものなのだろうか。
       とりあえず、ぼくは家に帰って寝ることに決めた。


「ふぅ・・・。」
今日の日記、つまり六月十日の日記を書き終えたぼくは、ため息をついた。
この頃、春秋はぼくによく話しかけてくる。前より、ずっと多く。
やはり、あれだろうか。告白されてフッたのを機に、もっとぼくのところに来るようになったのだろうか。そして、ぼくにまた振られようとされているのだろうか。
要するに・・・M?
・・・。さすがにそれは無いだろう。
とにかく、眠い。早く寝よう。
















・・・。おかしい。眠いはずなのに、眠れない。
弱った。暇つぶしに、日記の続きでも書こうか・・・。
そう思って、ぼくは、日記の前に座って春秋からもらったペンを握る。
・・・・・・。
明日、確か学園休みだな・・・。
明日も暇つぶしに日記書いてたら、すぐ無くなるな・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
今の時刻は・・・十二時か。
携帯を握って、アドレス帳から彼の名前を探す。
そして、発信ボタンを押した。

―トゥルルルル、トゥルルルル―

「はい!! 春秋ですっ!!!」
うるさい。大声を出しすぎだ。
鼓膜が破れそうになった。
とりあえず、明日のことについて言ってみた。
「明日の話なんだけど。」
「うん!! どうしたんだい!?」
「・・・。明日暇だし、おごってくれるのなら付き合うよ。」
「分かった!! 任せて!!」
電話の向こう側で明らかにニコニコしている様子が分かった。
正直、うざい。
たかが遊園地でここまで騒がれると、少しゲンナリする。
それに春秋は、一度フられた女と遊園地に行くことに躊躇いを持っていないのだろうか。
諦めないとか言っていたが、それも正直うざいしキモかった。
「集合場所はどこにする!? 駅前がいいかな!? うん駅前にしよう!! 集合時間は何時にしようか!? 7時ぐらいがいいかな!? うん、そうしよう!! 早いほうがいいしね!! いっぱい遊べるし!! 朝ごはんは・・・食べなくていいかな!? 僕は食べなくていいや!! そのほうがいっぱい遊べるし!! あ~、早く明日になんないかなぁ!! 服はなに着ていこう!? 楽しみだなぁ!! あ、いつまでも繋げててごめんね!! じゃ、また明日!!」

―ガチャ、ツー、ツー、ツー―

・・・・・・・。
寝よう・・・。


翌日、ぼくは5時に起きてしまった。
二度寝するにも半端だ・・・。
仕方ない。起きるか。
一階に降りて、牛乳を飲む。
すると、親の寝室から母が出てきた。
しまった。階段を大きい音で降りてしまったからかな・・・。
「あら? 雪海がこんなはやくから起きてるなんて・・・。もしかして、デート?」
ん? デート・・・なのか、あれは? まぁ出かけると言ったら出かけるが。
「うん。ちょっと、出かけてくる。」
「あらららら。雪海が友達と出かけるなんて、珍しいわね~。男? 男なんでしょ?」
・・・。うざい・・・。
「何時に出かけるの?」
「・・・7時だけど。」
「じゃまだ時間あるわね。お昼のお弁当作りましょ♪」
「・・・は?」
「材料あったかしら~。二人分だから、あまり要らないわよねぇ。」
「か、母さん、ちょっと待って。」
「あら雪海、なにしてるの? はやく顔と手を洗って、お弁当のおかず作るわよ~。」
「うん・・・って違う。ちょっと、お弁当なんていいよ。」
「バカ言ってるんじゃないの! 彼氏にお手製お弁当は効果バツグンよ~^^」
「いや、だから。彼氏じゃ「ぶつぶつ言わない! さっさと用意しなさい!」
・・・。だめだこれは。言うとおりにしよう・・・。


それから一時間半後・・・。


「さぁ、ちょっとシンプルだけど出来たわ♪ 片付けはお母さんやっといてあげるから、早く準備してらっしゃい!」
・・・ハァ・・・。
なんで朝からこんなことを・・・。
これじゃホントに、春秋とのデートを心の底から楽しみにしていた人みたいじゃないか・・・。
軽い暇つぶし程度で了承したはずが、なんでこんなことに・・・。


そういえば、服あったかなぁ・・・。
あまりファッションには気を使わないし・・・。
とりあえず、あるもので一番良い組み合わせを・・・。
・・・あれ? なんかぼく、ホントに楽しみにしてないか?
そんなはずは・・・。春秋は付き合うとかそういうのじゃないし、それにそもそもフッたんだ。そんなに楽しみにするわけないだろう。ふぅ・・・。
一回心を落ち着けよう。まずは、ちゃんと服を選んで・・・。
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「早く来すぎたなぁ・・・。」
春秋は駅前でそうつぶやいた。
「いくら雪海とのデート?が楽しみだからって、さすがに二時間前に来るのはバカだったかなぁ・・・。」
その時間帯は、雪海がノソノソと起きていた時間だとは、春秋は知る由もない。
「あ、僕、彼氏彼女じゃないのにデートとか言っちゃったよ。くぁ~恥ずかしい////」
・・・・・。
「でも、そうなるのも夢じゃないんだ。今日のデートで、雪海の心をガッチリつかんでやる!!」
・・・・・。
「がんばれ! 春秋! ファイトだ!!」
「・・・ねぇ。」
「ん? どわぁ!!!?」
雪海がいた。
い、一体いつの間に!?
「い、いるなら声ぐらいかけてくれよ!!」
「呼んだよ。何回も。妄想にふけって返事してくれなかったのはそっち。」
「あ、あぁ、そっか。ごめんごめん。」
いや、それにしても・・・。
「・・・なに? 人のことジロジロ見て。」
「い、いや・・・。」
雪海、可愛いなぁ・・・。
黒のチュニックブラウスに、灰色のストールを巻いている。
シンプルだけど、黒系の色が似合う雪海にはぴったりだ。
対して僕は・・・。
クリーム色のVカットシャツに、黒のテーラードジャケット、そしてジーンズ。
・・・。なんか不似合いだなぁ・・・。
「・・・あのさ。」
「ん?」
「なんかニヤニヤしてるけど、なに? 帰るよ?」
「あ、違うんだ。ごめんね。にしても・・・雪海、服似合ってるよ。」
「・・・・・うるさい。」
あれ? 今、顔が赤くなったような・・・。
「行くんなら早く行こう。ホントに帰るよ。」
「あ、うん。分かった分かった。今行くよ。」

こうして、雪海と僕のデート?が始まった・・・。





電車に乗り、隣に雪海が座っている。

・・・・・。気まずい・・・・・。

それはそうだろうと思う。
なにせ、相手はあの雪海だから。
この頃、学校でも表情やオーラが柔らかくなって、みんなの雪海に対する評価は変わった。
でも、それでも無口や無表情が多いのは変わらない。
それに僕は告白をして、見事なまでに切り捨てられたんだから、
もっとだんまりになってしまうのも分かる。
だけどやっぱり・・・気まずいなぁ・・・。
周囲から好奇の視線が集まってるのに気付いてないのかな・・・。
これじゃまるで、デート当日に朝っぱらからケンカしてほとんど話さず、目もあわせない
カップルの図じゃないか・・・。
これが一日中続くのだろうか。
それだとさすがに、僕のメンタルがズタズタになるなぁ・・・。
仮に告白が成功したとしても、僕は雪海とやっていけるんだろうか・・・。
心配だなぁ・・・。

―電車に揺られること、約二時間後・・・―

「着いたぁ~~!!」
ふぅ・・・ようやくあの無言地獄から抜け出せたよ!!
重い鎧を外したように体が軽い!!
この重さには最近忙しい毎日を送ったストレスも入ってるかもな。
まぁいいか。今日はフリーだ!
さぁ、思い切り遊んで、雪海の心を・・・!!
そう思って彼女のほうを振り向く。
「・・・・。」
顔は無表情だが、心なしか目がキラキラしている・・・。
もしかして、こういう所に来るの初めてなのかな?
「ねぇ、雪海。」
「・・・なに?」
「ここに来るの、初めて?」
「・・・うん。」
やっぱりそうか。よし、これならいくらか僕に分があるかも?
「じゃあ、僕に任せて! ここは最近、新しいアトラクションが増えてるから!」
「・・・絶叫系とか、ある?」
「うん! もちろん!」
まぁ僕は絶叫系は乗れないのだが。
「そう・・。じゃあ早く行こう。」
これは来たんじゃないのか!?
好感触の予感だぞ!!
絶叫系に乗りたいと言ったときは、うまくはぐらかせば良い!!
行くぞ、男春秋!!
そういえば、まだ言ってなかった。

僕たちが今日来たのは、日本有数の超有名テーマパーク。
「東京ディズニーランド」である。

朝早くから来たのが吉だったか、と思いきや、意外と人は多いものだ。
今のうちに、人気アトラクションのファストパスをとっておこうか。
「雪海。」
「なに?」
「今列に行くと、長い時間並ぶことになるから、ファストパスとらない?」
「どっちでもいい。」
「そっか。じゃ行こう! 最初になに乗りたい?」
そう言ってパンフレットを差し出す。
「・・・・・。」
雪海は一しきりパンフレットを眺めると、あるアトラクションを凝視する。
これは・・・「プーさんのハニーハント」か。
これは確かに、人気のある乗り物だ。
だが・・・まさか雪海がプーさんに興味を持つとは・・・。
とりあえず、一番に乗るものは決まりだ。
「じゃあ、プーさん行こっか。」
「え? 別に、乗りたいわけじゃ・・・。」
「いいからいいから。行こう。」
「・・・・・。」
そういって僕は、雪海の手を引く。
正直、かなり勇気のいる行為だ。
振り払われる可能性はもちろん、最悪帰ってしまうことも考えられる。
だが、驚くことに彼女は、特に何もせずに引かれてきた。
嬉しくて、ニヤけそうになる顔をなんとか引き締め、ハニーハントへと向かう。


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来る前は、暇つぶし程度に考えていた遊園地だが、
いざ来たとなると気持ちがわずかながらでも高ぶってしまう。
仕方・・・ないのだろう。
ぼくは昔から、こういったテーマパークなどには興味が無かった。
他の幼少期の子に比べれば、変、だったのかもしれない。
だから、春秋がここに連れてきてくれたのは少なからず嬉しかった。
だからといって、彼に心を動かされたわけでもない。
所詮は暇つぶしだ。

園内にはまだ朝だというのに人が多かった。
これが、あと少し時間がたてば倍以上になることを考えると、ウンザリする。
と、春秋がぼくに話しかけてきた。
「今列に行くと、長い時間並ぶことになるから、ファストパスとらない?」
どうでもいい。ぼくに聞かないでほしい。
「どっちでもいい。」
そう答えると、
「そっか。じゃ行こう! 最初になに乗りたい?」
そういって彼は、ぼくにパンフレットを差し出す。
絶叫系を探してみる。あった。他には・・・あった。
意外と多い。その中でぼくは、一番惹かれた「スペース・マウンテン」に決める。
これがいい。
彼にそう告げようとする。
そのとき、「スペース・マウンテン」の上、
「ファンタジーランド」と書かれているエリアの一番右側にあるアトラクション。
それに目がいった。このキャラクターは・・・確か春秋がくれた日記にあったやつだ。
アトラクション名は・・・。

「プーさんのハニーハント」

・・・プー、さん?
プーさんというキャラクターなのか、これは?
ネーミングセンスに激しい驚きを隠せない。
だが・・・。
春秋がくれたときはそうでもなかったが、まじまじと見ると意外と可愛い。
今日日記を持ってきていたし、あとでじっくり見てみよう。
春秋も、意外とセンスがいいじゃないか・・・。
そういえば、今日は春秋のおごりだ。
プーさんのグッズでも大量に買ってもらおう。
ぼくがこのアトラクションを見つめながらそう思っていると、
これに乗りたいと勘違いしたのか、
「じゃあ、プーさん行こっか。」
と言ってきた。いや、別に乗りたくて見てたわけじゃない。
そう抗議しても、聞く耳持たず、と言ったところか、
嬉しそうにぼくの手を引いて歩き出した。
振り払ってやろうと思ったが、そんな考えは不思議とすぐに消えた。
・・・たまには、こういうのも悪くないか。
そう思ってぼくは、目の前でやたらニヤけているのを隠そうとしているやつの顔を見つめていた。


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ふふふ、やったぞ、大成功だ!
雪海が最初にプーさんをチョイスしてくれたおかげで、かなり雰囲気がやわらかくなってる!
それにしても、プーさんが好きだったなんて、本当に意外だ。
ジャンプとか好きだから、バズとかに食いつくかもと思ったんだけど・・・。
雪海も女の子だから、やっぱりそういうのが好きなのかな?
それにしても・・・ファストパス取れなかったなぁ・・・。
まさか売り切れるとは思わなかった・・・。
おかげで二時間も待つハメになるとは。
時間はすっかりお昼時だ。
困ったな・・・。中途半端な時間だと、どこも席がいっぱいだよなぁ・・・。
う~ん・・・。
「ねぇ、春秋。」
「ん?」
「お昼にしない?」
「うん、そうしようと思ったんだけど、どこの店も席がいっぱいだと思うんだ・・・。」
「それなら、大丈夫だと思う。適当なところに座れれば。」
「え・・・? どうして?」
「お弁当、作ってきたから。」


・・・・・・・・・・・はい?
「え? お、お弁当?」
「うん。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・なに?」
「う、うわぁぁぁぁっぁぁぁ!!!!」
「!? ・・・・え? どうしたの?」
「いや、だってお弁当でしょ!? 雪海のお弁当なんでしょ!? 
 これを喜ばないバカが一体どこにいると・・・!?」
生きてて・・・・・良かった!!!!!
その後僕達は、適当な場所に座り、主に僕が雪海の弁当を心から堪能したのだった。


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キモかった。
春秋をこれほどまでにキモいと思ったことは無かった。
たかがお弁当で泣くなんて、さすがに予想していなかった。
すぐに彼から離れたかったが、これを放っておくといつまでもこの状態で
泣きかねなかったため、できるだけ急いで彼を人気の無い場所まで誘導した。
そのあとは、まぁ言わずもがな。
なにか食べては「おいしいおいしい。」しか言わなかった。
同じものを二回続けて食べているのに気付いてないんだろうか。
それなのにただ「おいしいおいしい。」しか言わない。
もっと他の褒め言葉は無いのだろうか。
少しイラッときた。
だが、なぜだろうか。
母さんも少し手伝ってくれたとはいえ、ぼくが作った料理をこれほどまでおいしそうに
食べてくれるのは、不思議と気持ちが良い。
彼の食べっぷりに呆れつつも、その顔から目を離すことができなかった。
さすがは美少年、顔は均整が取れており、確かに女子に人気があるはずだ。
その顔が、今はぼくの料理で完全にほころんでいる。
・・・無邪気な子供みたいで、可愛いな。
そう思い、口元が少しゆがんだ。
ぼくの視線に気がついたのか、彼がこちらを向く。
あわてて口を隠そうとするが、間に合わなかった。
春秋は、ぼくの顔を見ると、なぜか顔を赤くした。
「あ、あまり見ないでくれ。恥ずかしいから。」

― ドクン、―

「・・・っ!」
なぜだろう。心臓の動きが激しくなった。
いつもなら、あんな顔されたら気持ち悪いと一蹴していたのに。
なぜ、今のあの顔に、心が動いたのか。
軽く狼狽したのが春秋に分かったのか、彼がこちらに来た。
「どうしたの? 具合が悪くなった?」
うるさい。
そう言おうと、顔を上げる。

「な・・・っ・・・!」

顔が、近い。
距離は、15センチあるかないか。
顔が近すぎて、声が出ない。

―ドクン、ドクン、ドクン、―

心臓の鼓動が、どんどん早くなってゆく。
「大丈夫? もう少し、ここで休もうか?」
うるさい。
心ではそう思っていても、声に出来ない。
早く、離れて。
声に、出来なかった。
「顔、真っ赤になってる・・・。風邪でも引いたのかな・・・。」
そう言って勝手に納得し、彼は少し離れる。
今しか、ない。
ぼくは思い切り立って、彼を突き飛ばす。
「うお・・・っと!!!」
運動神経がいいため、あれぐらいでは倒れなかった。
「ど、どうしたの?」
「なんでも・・・ない。」
「ホントに? 顔、真っ赤だよ?」
「大丈夫だから。」
「そっか・・・。じゃあ、もう行こうか?」
気がつくと、お弁当の中身はもう空っぽだった。
そんなにおいしかったのか・・・。
そう思って、彼がぼくのお弁当にがっつくシーンが思い出され、
同時に、あの顔までが脳内にリフレインされる。
「・・・っ。」
雑念を必死に振り払う。
なんでもなかった。あれは、なんでもなかったんだ。
そう無理やり思って、お弁当を片付ける。
「おいしかったよ。」
そういって、笑顔を見せてくる。

―ドクン、―

まただ。ぼくは顔が赤くなるのを隠すように、春秋を秒間10連続で殴った。


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                ・
                ・
時刻はもう夜だ。時間がたつのは本当に早い。
楽しい時間は、なおさら過ぎるのが早いものだ。
あの後、雪海は急に赤くなって僕をタコ殴りにして、
スタスタと先に行ってしまった。
すぐに追いついたが、それからは一向にしゃべろうとしてくれなかった。
仕方ないため、「スペース・マウンテン」や「スプラッシュ・マウンテン」などの
絶叫系に乗ることを伝えると、とって変わってご機嫌がよくなった。
無表情、無口などは変わってないけど。
そして今、隣にはあらかたの絶叫に乗って満足している雪海と、
乗り終わってトイレに直行し、かつ息切れを起こしている僕がいます。
やはり、この雪海が絶叫好きなんて信じられないな・・・。
富士急だけは、絶対に誘わないようにしよう・・・。
とりあえず今の時刻は6時。
あと一個アトラクションに乗って、お土産でも買って帰るパターンかな?
さて、ラストは何に乗るんだろう?
「雪海。」
「なに?」
「ラストのアトラクションだよ。何に乗りたい?」
「・・・・・。」
結構真剣に考えてるようだ。
ってことは、楽しめたってことかな? やった! 来たかいがあった!
「・・・春秋。」
「ん? 決まった?」
「・・・ハニーハントが良い。」
・・・・大体予想してたけど、やっぱりか・・・・。


並ぶのにあまり時間は必要なかった。この時間帯はパレードをやっているためだ。
雪海は、パレードよりこっちが良いと言ったので、すんなりと入ることが出来た。
ラストの締めには相応しかったかもしれない。
これに乗っていて、雪海は本当にプーさんが好きなんだなと、つくづく思った。
だって、これに乗っているときの雪海は、本当に子供のように、
目を輝かせているのだから。
もう、決めた。
帰り際に、また告白しよう。
ふられても構わない。
また、頑張ればいい。
春秋は、そう思う。


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春秋は、なんでぼくに告白したんだろうか。
ぼくは、いいところなんて何もない。
普通の女の子とは明らかに違う。
ダウナーで、何事にもあまりやる気なんて起きない。
そんなぼくに、あんなにも熱心についてきてくれる。
どれだけ突き放しても、無視しても、悪口を言っても、
いつものように笑顔を浮かべてやってくる。
みんなにいつも見せるような笑顔ではなく、
ぼくだけに見せてくる笑顔を。
みんなには見せない一面も、ぼくにだけは見せてくる。
今日一日だけで、ぼくは、今まで知らなかった彼を知った。
そして、そんな彼に心が動いた。
考えられないな・・・。
つい昨日までどうでもよいと考えていた春秋が、
今はこんなにも近い存在になっているような気がする。
これは、恋、というものなのだろうか。
今までそんな感情抱いたこと無かったし、抱きたいと思ったことも無かった。
だが、恐らくこれは、恋、なのだろう。
・・・認めたくないものだな・・・。
一度ふって、しかも今まであまり相手にもしなかった男を好きになるなんて。
だけど、こんな感情を初めて抱かせた男も、春秋だ。

・・・・・。

告白、というのを、してみようか・・・。
帰り際でいい。春秋のように、シンプルに伝えればいいだけだ。
好き―。 そう、一言で。


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そんなこんなで、最後のアトラクションを楽しんだ後、
近くのプーさんグッズが売ってる場所に移動した。
はぁ~・・・。すごいな・・・。
辺り一面、プーさんのぬいぐるみだらけだ。
雪海も、少女マンガの女の子ばりに目が輝いてる・・・。無表情だけど。
奥まで進むと、なにやら高価そうなものがずらずらと並んでいた。
指輪、時計、ネックレス・・・。どれも万越えだ。
一番高いもので、諭吉が10枚も飛ぶ・・・。
おごる、みたいなこと言ったけど、さすがにこんなものは買えないぞ・・・。
だが、雪海の目は違うほうを向いていた。
奥に一つ、ポツンとあるショーケースの中、金色に輝く、プーさんの顔を形どったのであろう
熊のネックレスだ。
価格は・・・まぁ結構するな。
雪海はそれを見つめていた。
まぁ、大した痛手にはならないかな?
と、春秋は財布を手に持つが、雪海はそこを去る。
代わりに、抱き心地が良さそうなプーさんのぬいぐるみをこちらに差し出した。
「これ。おごって。」
「え? いや、でm「これでいい。」
なかば強引に買わされたぬいぐるみだが、
それでも彼女は満足そうに、そして無表情にそれを抱きしめていた。

もうすぐ時刻は8時。
ワールドバザールを抜けて、ランドの門を目指す。
僕は、そこで立ち止まった。
「どうしたの?」
「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる! その辺で待ってて!!」
「・・・早くしてよ。」
そう言われたのもつかの間、僕は例の店へむかって走り出す。
まだ、買われてなければいいけど・・・。

「はぁ・・・はぁ・・・。」
息を切らして、店の中に転がりこむ。
確か、一番奥のショーケースに・・・。

・・・・・あった。まだ、残ってた。
僕は店員を呼んで、こう言った。
「すみません、これください!」


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ぼくは電車の中で寝ていた。
だから、ぼくたちの降りる駅からディズニーまでがすぐ近くにあるように感じられた。

駅で、春秋が送ってくれると言った。
正直、嬉しかった。
告白、するつもりだったのだから。
駅からぼくの家まで、ぼく達は一言も喋らなかった。
春秋はどうだったのか知らないが、ぼくは恥ずかしかったから。
本当にどうしてしまったのだろうか、ぼくは。
昨日の今日とは考えられないほど変わってしまったのが、身に染みて分かる。
でも、そうなれたのは春秋のおかげだと考えると、イヤでも無くなった。
・・・本当に、不思議だ。
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緊張・・・するなぁ。
告白すると同時に、ネックレス渡すんだもんなぁ。
僕にそんな大芸、できるんだろうか・・・。
でも、ここまで来たらやるしかないんだ。
そのために買ったプレゼントだろう?
決して安くなかったけど、でも彼女に送るんだったら許せるんだ。
今日何回目か分かんないけど、行くぞ!! 男春秋!!
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もうすぐ、ぼくの家に着く。
そうしたら、後はもう告白するだけだ。
勇気を、出すだけだ。
春秋に出来るんだから、ぼくにも出来る。
大丈夫だ。一言だけで、いいんだ。
あと、少しで、ぼくの家の前だ。

―ドクン、―

ん・・・。またか・・・。
落ち着こう。深呼吸をして・・・。


そして、ぼくの家に、着いた。
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雪海が立ち止まった。ここが、雪海の家か・・・。
結構大きんだなぁ・・・。
って違う違う。
ふぅ、一回深呼吸だ。落ち着こう。
まず、こちらを振り向かせよう・・・。
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ついに、着いてしまった。
明かりはない。出かけているのだろうか。
でも、好都合かもしれない。
こんなところ、見られたくない。
あの時、春秋も勇気を出したんだろうか・・・。
なら、ぼくも出すだけだ・・・。
そうだ、まずは名前言って、呼びかけないと・・・。


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            「「ねぇ春秋(雪海)。」」

「「!?」」
双方が驚いた。
まさか、かぶるとは思わなかったのだろう。
比較的早く立ち直った春秋が、雪海に言う。
「ゆ、雪海からで、いいよ。」
「あ、うん、ありがとう・・・。」
春秋は、雪海があの時のように顔を赤くしているのに気がつかなかった。
だから、次に雪海が発する言葉も想像できなかっただろう。




「ぼくは・・・春秋が、好きだ。」




二人の間は、静まり返っていた。
5分は過ぎただろう。
春秋が、動く。
「・・・・!?」
雪海は息を呑んだ。
なぜなら、春秋に抱きしめられていたから。
「は・・・春秋・・・!?」
「ごめん、でも、今はこうして居たいんだ・・・。」


また、少し時が過ぎる。
やがて、春秋が顔をあげ、雪海を見つめた。
「先に言われちゃったね」
「え・・・?」
「僕も、告白しようと思ってたんだ。」
そういうと、雪海は顔を赤らめた。
「好きだよ・・・雪海。」
そして、雪海に顔を近づけ、キスをした。
唇と唇が触れ合うだけの、軽いキス。
だけど、それでも二人が互いを意識するのに十分だった。
「雪海、家にあがっても、大丈夫かな?」



雪海は、ベッドへと横たわる。
「春秋・・・何するの?」
「さっきの続きだよ。雪海も分かってるだろう?」
確かに、あの一瞬だけで、こういうことをしたいと思う自分がいた。
前々からこういう行為のことは知っていたが、特に気にすることも無かったのだ。
春秋は、雪海の髪をやさしく撫でると、その唇にキスをした。
今度のは、ちゃんとした、大人のキス。
「ん・・・ふぅん・・・ちゅむ・・」
こういうことに慣れていないのか、顔を紅潮させてゆく。
「んちゅ・・・んむ・・・こくん」
あ、飲んだ。
「ふむ・・・んん・・・ぷはっ」
「ごめん、ちょっと苦しかった?」
「ん・・・。だいじょうぶ・・・。」
とは言っているものの、雪海の顔はいつものような冷たい顔ではなかった。
顔を真っ赤にし、目をトロンとさせている。息遣いがもう激しい。
「もしかして、キス好き?」
「そ・・そんなわけ・・・ひゃんっ」
そう言ってる間に、服越しから豊かな乳房を触る。
「ちょ・・あん・・どこ触って・・・あ・・・」
反抗する雪海が可愛くて、春秋はブラウスをたくしあげ、ブラの中に手を潜り込ませる。
「雪海って・・・結構胸大きいよね・・・。」
「な・・なに言って・・あんっ!!」
春秋は、完全に突起している乳首をこねくりまわしていた。
「あん・・・そ・そこは、おねがい、だめぇぇ・・!」
「もしかして、乳首弱い?」
「そ・・んな・・ことは・・あ、あぁぁん!!」
「ん? 乳首だけでもうイッたのかな?」
「はぁ・・はぁ・・!? んあっ!!」
「もうこんなに濡れてる・・・。」
春秋は、雪海の秘部を優しくなぞってゆく。
「くぁ、うっ・・・ん、はぁん・・!」
「一本、入れるよ?」
そういって春秋は、未だ入られたことの無い聖域に指を入れてゆく。
「んあぁっ!!」
雪海の全身に、電流のような刺激が走った。
「ひぅっ、あ、あっ・・・!」
春秋は、雪海の中から愛液が更に出てくるのを感じると、指を二本に増やし、
動かすペースを少しずつ速めていく。
「んっ! あん・・あ・・あっ!!」
「雪海、聞こえる? 雪海のここ、すごくいやらしい音たててるよ?」
「うっ・・うるさっ・・・ふぁっ・・ん!!」
春秋は指を動かすペースをどんどんあげていく。
「あっ、だ、だめっ・・! なんか・・へんなのが・・あっ、あっ、あぁぁ・・・!!!」
また、イッた。雪海はすでにグロッキーだが、まだ一つ、大きいのが残っている。
「雪海、大丈夫?」
「ん・・ぁあ・・・だい、じょう、ぶ・・・。」
いや、そんなグッタリして言われても説得力ないよ。
まぁ、大丈夫じゃなくても続くけどね。


「じゃあ、雪海、ちょっと寝て。」
「・・・うん。」
彼女が横になるのを確認すると、大きく腫れ上がった自分の分身をとりだす。
「・・・・・ふぁ・・。」
「いや、雪海、初めて見るから驚くのは分かるんだけど、あまり直視しないでくれるかな?」
「え? あ、ごめん・・・。」
そう言って恥ずかしがる雪海の頭を撫で、彼女の秘部の中心に、分身をあてがう。
そして、ゆっくりと、彼女の中に入れてゆく。
先端部分が温かな感触に包まれた瞬間、春秋の全身を、ゾクリとした快感が駆け巡った。
「ゆ、雪海。痛かったら、すぐ言ってね?」
「だいじょうぶ。がまん・・するから・・・。」
春秋は、モノを更に奥へと進ませてゆく。
途中、プツン、という音がしたと同時、雪海の顔が痛みに歪んだ。
「はぁ・・・っ、くぅっ」
「大丈夫、雪海? 痛いか?」
雪海は、破瓜の痛みに涙を浮かべていた。
「へ、へいき・・だよ・・・。」
それから、痛みが引くまで、少し待つ。
「もう・・・動いて、いいよ・・・」
「本当に? 大丈夫なのか?」
「うん。だから・・・動いて・・・。」
そう言われ、春秋はゆっくり、ピストン運動を開始する。
「うっ、んん・・あっ・・」
腰を振り、突くと共に、彼女は甘い声を出す。
そして動くたびに、雪海の膣内が圧迫され、それがたまらない刺激となり、
春秋を襲ってゆく。
「すご・・いっ、雪海のなか、すごい、気持ちいいよ・・っ」
「あっ、そういうことっ、あんっ、言わないで・・・っ、おかしくなる・・・!」
「いいよ・・! おかしくなっても・・・っ! もっと、気持ちよくなって・・!」
春秋のピストン運動は更に激しくなり、パン、パンと肉体が触れ合う音が強くなってゆく。
「あ、だめ・・っ、また、くる、なにかくるの、はぁっ・・ん、んあぁっ!
 も、もうだめ・・・っ、くぅっ、きちゃう、きちゃうのぉぉぉ!!」
「僕も、そろそろ、やばい・・かも・・っ」
「あっ、あぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「だ、だめだ、なかに・・っ、出すよっ!!」
そして春秋はモノを突き上げ、雪海の深い場所で精を放つ。

―ドクッ、ドクッ、ドクッ―

「あ、はる、あきのが・・・っ、中に、出てる・・・っ!」
雪海は、春秋の全てを受け取った。
              ・
              ・
              ・
              ・
              ・
「・・・・雪海。」
「・・・・・・。」
「返事ぐらいしてくれよ・・・。」
「・・・・・・。」
今、春秋はぼくに謝っている。
いきなりやって、しかも中出しまでされたのだから、普通だろう。
ぼくもイヤでは無いが、了承無しにされると傷つく。
「頼むから、許してくれって・・・。」
「・・・・・・。」
断固として、無視を決め込む。
「じゃあ、コレ見て機嫌直してくれ。」
そういって無理やり春秋のほうへ向かせると、
なにやら小さい箱があった。
「・・・・・なにこれ?」
「開けてからのお楽しみ。」
そう言われ、開けてみる。


そこには、ぼくが欲しかったネックレスが入っていた。
本当はこれが欲しかったのだが、値段的に見てやめたのだ。
「どう? 驚いた? これで許してくれないか?」

・・・・・。
本当に春秋は、全く・・・。

― ぎゅっ、―

「おっと!? ・・・雪海? どうしたの、急に抱きついて・・・。」
「・・・・ありがと。」
「・・・うん。どういたしまして。」
そしてぼくは、更にこう言う。
「春秋。」
「ん? なんだい?」
「・・・また行こうね。」
「もちろん!」
「富士急ハイランドに。」
「・・・・・・・・。」


ぼくの人生の楽しみは、やっとスタートしたかもしれない。



参考情報

前編(中線まで)は2010/03/31(水) 02:24:03~2010/03/31(水) 02:25:47で3レスで投稿。
後編(中線から)は2010/03/31(水) 22:49:34~2010/03/31(水) 22:55:04で10レスで投稿。



  • 最終更新:2010-07-08 19:53:28

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