大輝さんの小説1

本文

カタカタカタ…

夕方の生徒会室。俺、杉崎鍵はいつも通り他の生徒会メンバーを見送ったあと、雑務をしていた。今日はなかなか多いので、ちょっと遅くなりそうだ。また警備員さんに迷惑かける前に終わらせないと…。
そう思っていた時、ガラガラッと生徒会室のドアが開いた。いつもドアに背を向けて作業しているので、誰が来たかはわからない。
「真儀瑠先生っすか?今日はちょっと多いんで、時間かかりますよ」
だが、入ってきた人物は何も答えない。不思議に思い俺は振り向こうとしたが、振り向く前に後ろに人肌の温かさと、柔らかい感覚を感じた。
「私よ、キー君。頑張ってるわね。」
…え?
「知弦さん?なんでここに…さっき帰ったんじゃないんですか?」
確か知弦さんは会長達と一緒に校門を出たはずだ。窓から見てたし。…わざわざ戻って来た?Why?なぜ?
「アカちゃんに忘れ物って言って戻って来たのよ。」
「なんでです?戻って来ても俺が雑務してるだけなのに…」
「だからよ。」知弦さんが耳元で囁く。
「私はキー君に用事があったの。」
「俺に?なら、生徒会の時に言えばよかったじゃないですか。」
「それじゃダメなのよ。二人きりじゃないと…」
背中の、柔らかい感覚が増した。
「知弦さん?」
だが緊張で胸が高鳴って、その感覚を楽しむ余裕はない。
「キー君、私のこと好きよね?」
「え?あ、あぁ、はい」
今なぜここで訊ねてくるのだろう。知弦さんの声で頭がまわらない。
「なら、今から私と……ヤらない?キー君。」
「はい?」
今この先輩はなんと言った?ヤラナイ?何を?
「キー君は私と愛し合いたいのよね。なら、今すぐに……私、キー君が欲しいの。もう待ちきれないわ…」
知弦さんは、俺の制服に手をかけた。
「知弦さん…」
俺は、その手をとり、言った。


「ふざけないでください。」


「え?」
知弦さんは予想外の答えに驚いた。
「なんで?キー君、私のこと……好きじゃないの?」
「確かに俺は知弦さんが好きです。愛し合いたいです。」
「なら、なんで……?」
知弦さんはあり得ないというような表情で、俺を見つめた。
「だから、俺は知弦さんの性欲処理の道具なんかではありません。そんなひん曲がった関係なら、俺はいりません。」
「っ!!」
「今日はこれで切り上げます。知弦さん、また明日ですね」
そう言い残し、俺は生徒会室をあとにした。

現在、午前11時半、俺は札幌駅にいた。
真冬ちゃんとゲームを買いに来たのだ。
何でも新作の予約を俺名義と自分名義の2つしたらしく(事前に確認をしたらしいが俺はそんなことを頼まれた記憶はない。)どうしても一緒に来てほしいと言われ、俺が真冬ちゃんのお願いを断われるわけもなく今現在となる。真冬ちゃんは開店前に行きたいと言っていたが、予約してるんだから俺のことも考えてくれとなんとか納得させた。 そして10分後。
「あ、せんぱーい!!」
「や、真冬ちゃん」
「待ちました?」
「いや、今来たとこだよ。」
「とか言って、実は二時間ぐらい待ってたとかはないんですかぁ~?」
「さすがに今日はないねー」
昨日の雑務がなかなか俺の体力を削ってくれて、ゆっくり睡眠してなかったら今日ここにいなかった。
「そういえば…」
「ん?」
「知弦先輩、最近来ませんね」
ビクッ。
「このところ学校にも来てないみたいですし、心配です……って先輩?どうしました?」
「いや、別に…」
「?まぁいいです、早くゲーム買いにいきましょう。今回の特典カードがですねー…」
あの日から3日ぐらいたっているのだが、知弦さんは生徒会どころか学校にも来ていない。本人は体調を崩したと言っていたようだけど、確実にあの時のことだろう。
彼女がそこまで深く考えらていたとは思いにくいが、実際にこのような状態になっているのは明らかに俺のせいだ。もっと違う言い方もあったろうに。久しぶりに軽い自己嫌悪になっている。
「杉崎先輩!何してるんですか?早く行きますよー!」
「あ、あぁ…」
このときはまだ気付いてなかった。俺の後ろに…


黒髪の、よく知っている女性がいたことを。



「では杉崎先輩、今日はありがとうございました。」
「なになに、気にしないでよ。俺は今日楽しかったからさ。」
「はい。あ、先輩あれ!」
「ん?」
真冬ちゃんが驚いた顔で俺の後ろを指さした。とりあえず振り向いてみるが、特に珍しいものは何もない。
「まふ」ゆちゃん、と続けようとしたとき。
「んっ…」
真冬ちゃんが俺の頬にキスをしていた。あまりにも予想外で固まってしまう。しかし、すぐに離れてしまった。
「あ、ちょっ、真冬ちゃん!?」
「えへへ…今日のお礼ですよ♪」
真冬ちゃんは真っ赤になりながら逃げるように走り出す。
「また明日ですよー、杉崎先輩!」
「あ、あぁ、また明日!!」
久しぶりに、純粋な自分に戻った気がした。
だけど。
世界は、最悪の方向に向かい始めていた。



次の日。
「あ、深夏おは…」


バキィィン!!


「がはっ!」
いきなり深夏に殴られた。突然のことに、頭がついていかない。
「鍵、テメェ…」
体を起こして見上げた深夏の眼は、とても暗かった。怒りと悲しみと失望と憎しみの色。


-純粋な殺意。


深夏からは、はっきりとそれを感じられた。
俺が立ち上がると、深夏は俺の胸ぐらをつかみあげ、叫んだ。
「真冬をどこにやった!?」
…え?
今、なんて言った?
「昨日テメェと出かけてから帰ってこねぇんだよ!!」
帰ってない。真冬ちゃんが?昨日確かに街で別れた。真冬ちゃんなら普段ならどこにも寄らずに帰るはずだ。
「携帯にも出ないし…鍵、テメェ何か知ってんじゃねえねのか!?おい!!」
目に涙を溜めながらそれでも泣かないよう、精一杯俺を睨み付ける。
「確かにお前は真冬の恋人だ。恋人同士イチャイチャするのはかまわない。夜泊まったってそりゃ恋人同士だからそういうこともあるさ。メールして水を差すのも嫌だったから我慢したんだ。だがな。朝にも帰ってこない、家には連絡を入れない、朝お前を見たら一人で、しかもあたしに何もないように笑っておはよう。どういうことだ!?」
大切な妹を無くした、心優しい姉がそこにいた。必死に、見つけ出す可能性があることから探しだそうとしてる…。
「……………」
「おい、何で黙ってるんだよ…本当はケンカでもして、先に行ってるんだろ?なぁ…」
「……………」
深夏の手を振り払う。
「鍵!?テメェ!!」
ちょうどそこに守が通りかかったので、すぐに腕を掴んで引き付ける。
「…守」
「うぉっとっと…なんだ杉崎か。ん、深夏も…どうした?」
「先生に、今日は体調不良で休むと伝えておいてくれ。」
そう守に告げ、俺は走り出す。
「おい!!まて鍵!!」
「ちょっ、二人とも!?」

守をほっといて、昨日真冬ちゃんと別れた場所まで走る。深夏も俺が逃げたと思ったのかついてきた。
「鍵!!おまっ」
「深夏!!」
「ッ!?」
苛立ちながら、俺は今必要のない会話はシャットアウトする。
「昨日真冬ちゃんと連絡が取れなくなったのはいつだ?」
「は?何で…」
「いつだ!?」
「お、おう…確か…」
深夏は携帯をいじりだす。この時間が、今はとても長く感じる。
「だいたい午後5時あたりだな」
その時間は……ちょうど別れたころだ。
「お前どうし…ってもういねぇ!?」
深夏を待ってる時間が惜しい。すぐに昨日一緒にまわった場所を重点的に探した。
「いない…」
まぁ、こんな簡単に見つかったら深夏が先に見つけるだろう。とりあえず深夏にメールをする。数分後、すぐに返事が来た。


『鍵!!お前今どこにいる!?』
そんなことはどうでもいい。質問に答えろ。連絡とか、何かあったか?
『いや…知弦さんとかにも一応連絡したけど…誰にも連絡来てないそうだ。』
わかった。
『鍵、お前、真冬と一緒だったんじゃないのか?』
まさか。しっかり昨日は別れたんだよ。
『そうか…。その、ごめん!!』
は?
『何も聞かずにお前を殴っちまって…よく考えたら、お前が連絡しないわけないのに…』
気にすんなよ。今は真冬ちゃんが優先だ。
『うん…何かあったらまた連絡する。』
了解。
「さて…」
あとはいつも行っている場所を探すか…ん?メール……。


『紅葉知弦』


ゾクッ
嫌な予感がした。
とりあえずメールを読む。
『真冬ちゃんを見つけたわ。今私の家にいるから、すぐに来れる?』
見つかった。よかった…。
『ただし、誰にも言わず、一人でくるのよ。待ってるわ。』
…?
なぜだ?
不思議に思いながらも、俺は知弦さんの家に向かった。

俺は、知弦さんの家の前にいる。呼び鈴に指を伸ばすが、何故か押すのを少し躊躇った。なんでかって?そんなの俺にもわからない。俺の中のセンサーが危険信号でも出したのだろうか。だが、これを押さないと真冬ちゃんに会えない。
俺は、そのまま指を伸ばした。

ピンポーン…

数秒後、ガチャッと家のドアが開く。そこには、私服姿の知弦さんがいた。
「よく来たわね。さぁ、中にどうぞ」
いつもと変わらない笑顔で俺を招き入れる。
だが、その奥に足が進まない。 石になったみたいだ。
「どうしたの、キー君。早く入りなさい」
「あ、はい、すいません…」
ここで立ち止まるわけにはいかない。真冬ちゃんはすぐそこだ。



「さぁどうぞ。ハーブティーよ」
「あ、はい、いただきます」
さすがに知弦さんが一人暮らしだと言っても、この家に来るといつも緊張してしまう。そういう時、いつも知弦さんがこうやってハーブティーを淹れてくれる。温かいうちにいただかないと悪いと思い、カップに口をつけた。
「知弦さん」
「ん?」
「真冬ちゃんはどこですか?」
「………」
知弦さんが黙り込む。
「知弦さん…?…っ!」
なんだ…視界が…狭く……あ……れ……?
「大丈夫よ。ただの睡眠薬だから。すぐに連れていってあげる…」
知弦さんが俺を抱き締めてくる。あ、温かい…。
そこで、俺の意識は切れた。



ヴヴヴ…
「………う……」
…………どこだ…ここ…?……部屋?
目の前には知弦さんと…暗くてよく見えないが誰かもう一人。そして何かの機械音が鳴り響いている。
「あら、キー君おはよう。」
いつもの微笑を俺に向ける。
「知弦さん…?」
立ち上がろうとすると、体が動かない。そこでやっと自分の体が縛られていることがわかる。
「知弦さん!!どういうことですか!?」
「あら?キー君が真冬ちゃんに会いたいって言うから連れてきたのだけど…」
「………?」
そう言うと、知弦さんは部屋の残りの電気をつけた。そこには。
「イクッ!!イきますッ!!真冬、またイッちゃいますぅぅぅッ!!」
「真冬ちゃん!!」
目隠しをつけられ服を剥がされ、体の至るところに攻め具をつけられて縛りつけられている真冬ちゃんがいた。
「知弦さん!!これはどういうことですか!!」
「どういうことって?」
「なんで…真冬ちゃんに、こんな、こんな…」
「なんでって、当然でしょう」
「なっ!?」
知弦さんは当たり前のように言う。
「私のキー君に手を出したのだから、ちょっとお仕置きしてあげたのよ」
「………」
ちょっとまて…なんでだよ…
「もっと他のほうがよかった?なら…」
「………さい……」
「どうしたの?キー君。」
「今すぐ真冬ちゃんを放してください!!」
「……なんで?」
「そんなことはどうでもいいです。早く真冬ちゃんを放してください。」
「嫌よ。まだお仕置きは済んでないもの」
「早く!!」
「……仕方ないわね…キー君のお願いなら聞かないわけにはいかないわ…」
………よかった…
「でも、そうね…条件をつけるわ」
え?
「……条件…?」
「えぇ」
知弦さんはにっこり笑って、言った。
「真冬ちゃんの目の前で、私と一つになりなさい、キー君。」
「!!」
そういうと知弦さんは真冬ちゃんの目隠しを外し、こちらを向かせた。
「……あれ…杉崎、先輩…?」
「真冬ちゃん!!」
無事ではないが、やっと真冬ちゃんに会えた。
だが、再会を喜んでいる時間は少なかった。
「さぁ、キー君。やりましょう。」
そういうと、知弦さんは服を脱ぎだす。
「え?先、輩?」
真冬ちゃんはこれから何があるのか予想できてないようだ。
「ごめん、真冬ちゃん…」
俺は心の底から真冬ちゃんに謝った。

下着だけになった知弦さんは、俺のズボンを脱がし、俺のモノを取り出した。
「これが…キー君の……はむ…」
そう呟くと、まだ勃ってもいないモノをくわえた。
「っ…」
本能的に体が反応してしまう。
「あら…これだけで?体は正直ね」
「……」
「…ふーん…何も言わないつもりなのね……れろ…」
「っ!!」
「ふふ…はむ…ちゅ…じゅずず…」
「くぅっ!!」
なんだこれ、くそっ…どこで覚えたんだ!?
「…じゅる…じゅっ…ちゅる、はぁ…んん…ちゅ……おいしい…じゅぷ…」
「くぁあっ!!」
くそ、くそ…真冬ちゃんが見てるのに…
「はぁ…いい声で、…ちゅる…じゅぷっ…啼くじゃない……あむ…ずっ…ちゅう…ちゅぷっ…んっ…じゅずず……」
知弦さんは、俺のモノに夢中でしゃぶりついている。元が美人だ。ここまでされたら…
「……じゅる…れろ……もう…ちゅうっ…んっ…イきそう?…んちゅっ…びくびく……じゅずずぅ…してる…」
「ぁああっ」
ダメだ、耐えろ!!
「…我慢なんて……ちゅ…ずっ…無駄よ……ちゅう …ぅっ!…」
知弦さんがおもいっきり吸い付く。
「あああ!!」
ビュルッ、ビュルッ、ビュル!!
「んん!!ん、ん、んむ、ぅっ…」
出してしまった…俺の大馬鹿野郎!!
「んん…んぐ…ごくっ、ん、んぅ……おいしいわよ、キー君…ん…」
知弦さんは俺の精を残さないように舐めとっていく。ちくしょう、死にたい…
「でも、キー君はまだ元気みたいね」
「!!」
どうやら俺の分身は、舐めてもらってまた反応しやがったようだ。
「私、もう待てないわ。早く…一つになりましょう?」
嫌だ…こんな…こんな…
「すっかり私のココも濡れちゃって…ふふ」
そう言うと、知弦さんは下着を脱ぎ捨て、俺の体に向かい合う体制になり俺の分身を自分の秘所にあてがった。そして…
「ん……あぁ、あああぁぁっ…!!」
知弦さんは、自分で腰を落とし、処女膜を突き破った。
「知弦さん!?」
はぁはぁ、と息を荒くしながら笑っている。
「いいのよ、これで…さぁ…動きましょう?」
「なっ!?」
確か破ってすぐは普通痛くて動けないはずだ。
「早く、キー君の……ちょうだい?」
「くぅ!!」
この人、まさか……俺が欲しいだけでこんな無茶してんのか!?
「ほら……気持ち、いいでしょう?」
知弦さんは笑顔を崩さない。だが、体はもう無理しているのがはっきりわかる。
「はぁ…く、あぁ、ん……………ひゃっ…あ、あっ、や…ううん…私も、気持ちいいから……あぅんっ……」
知弦さんは腰のスピードを上げた。だが、こんな痛々しい知弦さんは見たくない。
「っ!キィ、君…?」
そう思うと、自然に腰が動いていた。
「早く中に出せばいいんですよね?」
「え?えぇ…」
「なら、もう少しで俺イきますから、知弦さんは動かないでください。」
早く、終わらせないと…。


「あ、あっ、あぅん、あああぁぁ!!きゃぁん!!」
本当に快感に変わってきたようで、知弦さんの声が部屋の中に響く。
「くっ!知弦さん、どうですか?気持ちいいですかっ?」
「あぅんっ!!気持ち、いい!!イき、そう…!!もっと、もっとキー君を感じさせて!!ああっ…もっとぉ!!」
「俺もイきます!!一緒に!!」
「キー君!!キィくぅん!!…はぁぁぁあぁぁっ!!」
ドクッ!ビュク、ビュク、ビュル!!!
知弦さんの中に、俺の精液が流れ込む。
「あああ…ああ…」
その知弦さんは恍惚とした表情で、俺に抱きついてきた。
「これで、キー君は私のものよ……長かったわ……」
「知弦さん……」
「愛してるわ、キー君…ん…」
初めての、キス。
「ほんとは初めにやるべきだけど…許してね。キー君」
そして。
「………う…えぐっ……うぅ…せん…ぱい……」
俺達の後ろでは、真冬ちゃんが泣いていた。

それから二週間ぐらいたった頃。
「知弦さん、そこの書類取ってください」
「はい、キー君」
「ありがとっす」
今は放課後、生徒会の会議が終わったあと、二人で雑務をしていた。
あの一件から、知弦さんは学校に来るようになり、生徒会は前のように動き始めた。


-二つほど例外を残して。


「いつも言ってますけど、会長たちと一緒に帰っていいんですよ?」
「嫌よ」
そう言うと、知弦さんは俺に後ろから抱きつく。
「キー君のいない家に帰っても仕方ないでしょう?それに、キー君と一緒にいたいもの。」
「ですか」
あれから、俺は知弦さんの意見で知弦さん家に居候することになった。
知弦さんいわく、「恋人なんだし、一緒に生活してもいいじゃない」だそうだ。
今もこんな感じだし、家に帰ってからもべったり。
男ならこんなかわいい女性と一緒に暮らせるなんて羨ましいと思うだろうし、正直俺が第三者の立場にいれば羨ましく思う。
でも今一緒にいるのは愛とか恋とかの感情ではない。この人から俺が離れてしまえば確実に知弦さんは壊れる。過去の繰り返しなんざまっぴらごめんだ。
そう思いながら、最近やっと笑ってくれた真冬ちゃんのことを思い出す。
もう一つの変わったこと。

真冬ちゃんが俺への告白を取り消した。

そりゃそうだ。俺は知弦さんと関係を持った。それが真冬ちゃんの目の前でなのだ。相当ショックだっただろう。
それから真冬ちゃんと話すことは少なくなってしまった。
「はい、これで今日は終わりです。帰りますか、知弦さん」
「えぇ、早く帰りましょ」
そして二人で校門を出る。もちろん手をつないで。
「早く帰って夕飯でも作りますか」
「あー、キー君…私の仕事を取る気?」
「この前みたいにうなぎの頭を怖く切られるとひやひやしますからね」
「ひどいわね。もっとまともな食事よ。カレーとか」
「また王道ですね。でも時間がないので却下です。手早く鳥の唐揚げにします。」
「もぅ…私にも手伝わせてね、キー君」
「はいはい、それじゃさっさと帰りますよ」
そんな会話をしながら、紅葉家に帰るのであった。


ある日の生徒会室にて。
「じー………」
「ん?どうしたの真冬ちゃん」
話し合いを始めてからこっちをじっと見ていた(声を出しながらよくやったものだ)真冬ちゃんに聞いてみた。だが、
「いえ、別に」
そういうと真冬ちゃんはそっぽを向いてしまった。
なんなんだ?
気を取り直して会議に戻るが、また真冬がこっちを見ている。
「じー…………」
そこではたと気づく。真冬ちゃんは俺を見ているのではなく、俺の隣に(深夏を押し退けて)座っている知弦さんを見ているようだ。
そして、知弦さんを見ている時の表情……普通な感じに振るまっているが、目が普通じゃない。そして、その目を俺は知っている。
あれは、真冬ちゃんが行方不明になったとき、深夏がしていた目と同じだ。
それに気づいて体が震える。姉妹とは、こんなところまで似るのか…。
今にも飛びかかってしまいそうな雰囲気。
今日の生徒会が何事もなく終わってくれて本当によかった。


「キー君」
「どうしましたか?知弦さん」
「ごめんなさい、実は今日用事があるから一緒に帰れないの……夕飯は私が作るから…」
「あ、はい。わかりました。知弦さんのご飯、楽しみにしてます。」
「本当にごめんなさい…ありがとうね。」
「大丈夫ですよ、それでは気をつけて」
そう全員を見送り、俺は久しぶりに一人の雑務をはじめた。

「ん……もう帰るか…」
時計をみると夜8時。生徒会がだいたい6時に終わるから、あれから2時間ほど働いていたことになる。
「っと、電話電話…」
いつも一人で帰るときは連絡するようにと言われている。料理を仕上げるためだそうだ。手早く知弦さんの携帯にコールする。
『おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が……』
え…?番号を確認してもう一度コールする。
『おかけになった…』
………おかしい。
知弦さんは料理をしているのでも電源を切ることはない。電池が切れたとしてもすぐ居間で充電しているはずだ。
「……………」
嫌な予感がして、とりあえず急いで紅葉家に帰った。だが…
「やっぱり……」
家に明かりがない。いくら遅くなってもこの時間には家にいないことなんてなかった。
………なんだこれは。
心配になった俺は、生徒会メンバーや友人間に連絡したが、誰一人知弦さんの居場所は知らなかった。
会長はすぐに両親と探しに行くと言っていたし、深夏も今出かけているらしい真冬ちゃんに連絡をとり、別行動で探しに行ってくれているそうだ。
俺も探しに行くと言ったが「知弦は私達に任せて、とびきり美味しいご飯を用意してあげなさい」と会長に言われ、紅葉家に残った。
今俺にできるのは、疲れたわ、遅くなってごめんなさい。と笑いながら帰ってくる知弦さんを待ち、ご馳走を作って不安な気持ちを振り払うことだけだった。
料理の下準備ができた頃、俺の携帯に一件のメールが来た。差出人は……


『椎名真冬』


携帯を落としそうになった。まるで前の反対じゃないか…。
おそるおそるそのメールを読む。
『先輩を見つけました。今からうちの近くの公園に急いでこれます?』
よかった、内容は普通だ。了解、今行くよ。
『待ってます。』
だが、やっぱり俺は不安を拭いさることはできなかった。



「あ、杉崎先輩こっちです!」
「こんばんは、真冬ちゃ…ん……?」
真冬ちゃんは制服を着ていた。……どす黒い赤の。
見た限りの形も普段真冬ちゃんが着ているものと同じだ。ただ、赤い。
「…どうしましたか?」
「え…あ、いや、何でもない。で、知弦さんは?」
少し怯えながらも、俺は訊ねた。見たところ、ここには俺と真冬ちゃんしかいない。
「いるじゃないですか、先輩のすぐ後ろに」
……え?
言われて、後ろを向く。そこには。
「知…弦…さん……」
確かにいた。知弦さんはいた。



胸の真ん中や手首に、木の杭を突き刺され、木に貼り付けにされた姿で。



「……ごほっ!!、ぉえ…ごほっ、ごほっ!!」
その変わり果てた姿を見て、精神的に吐き気が襲ってくる。
「紅葉先輩はルールを破ったんです。」
真冬ちゃんは淡々と話し始めた。
「生徒会メンバーはみんな杉崎先輩のハーレムなんですよ。それを一人抜けて先輩を取ろうとしたんです。」
ああ、俺は……
「これで先輩を一人じめしようとする悪い人はいなくなりました。さぁ、帰りましょう先輩。」
真冬ちゃんはまるで天使のような笑顔を向けて言った。
「好きです。大好きです。杉崎先輩。これからも…ずっと、一緒ですよ…」


これが…俺の……



END



エピローグ



「うわぁ…」
俺はそれを見ると、冷や汗をかいた。
「はっ!!す、杉崎先輩!?」
俺に気づいて真冬ちゃんはおもしろいように跳ねた。
「真冬ちゃん………これは、ちょっと……」
「み、みみ、見ないでください!!」
涙目になりながらパソコンを抱え込む。
そう、今までの文は、真冬ちゃんのパソコンに書いてあったものだ。
「出来心なんです!!すいません、忘れてください!!お願いします!!」
「あ、ああ…」
泣き顔で懇願するし、俺も忘れたいからとりあえずうなずく。でも、少しブルーになった。
真冬ちゃんがこういう文を書くのは多分、この可能性を考えていたからなんだろう。
そんなことを考えさせているのかと思うと、正直自信をなくしてしまう。
「先輩?どうしました?」
いきなりしゃべらなくなった俺を心配に思ったのか、真冬ちゃんは上目遣いで俺の顔を覗きこむ。
「いや?…真冬ちゃんがこういうの書いてたのかーと思って身を引こうかなと」
「えぇっ!?真冬、嫌われたんですか!?」
「さぁねぇ…」
「ちょっ、そんな遠くをみて言わないでください!!」
「まぁ…頑張って♪」
「怖いです!!その笑顔が怖いですぅ!!」
今はこうして、いつも通りにおどけてみせる。



必ず、全員を幸せにすると誓って。



END

参考情報

前編(最初から中線まで)は2009/12/20(日) 10:36:05~2009/12/20(日) 16:08:01で2レスで投稿。
後編(中線から中線まで)は2009/12/20(日) 19:43:49~2009/12/21(月) 07:34:16で6レスで投稿。
エピローグは2009/12/24(木) 20:25:12で1レスで投稿。
大輝さんの生徒会の一存のエロ小説を創作してみるスレでの初作品。



  • 最終更新:2010-07-05 23:56:37

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