Kさんの小説6-1

本文

選択する生徒会


~プロローグ~

時は秋。
秋の兆しに、軽い熱さを感じるひと時。
ここ、北海道のとある地域には、異常気象が押し寄せ、局地的豪雨をもたらすと言う。
既にここ碧陽学園にも、それを予感させる雨滴が反射し、音を木霊させていた。
そんな静けさを漂わせる音を、元気よく跳ね返さんとばかりに声を高らかとする美少女がここに一人。


~水曜日~

《杉崎鍵視点》

「外面も内面も、その人自身の全てなのよっ!!」
会長がいつものように小さな胸を張ってなにかの本の受け売りを偉そうに語っていた。
物凄く納得、とばかりに苦笑する生徒会メンバー達。
「会長の小さいソレは、柔らかく、それでいて自身を強く主張している気がします」
「そこっ! セクハラ発言禁止っ!!」
出だしのセクハラ発言は会長に一蹴りされてしまった。
俺は『いや、だってですね』と反論してみる。
すると深夏が『そうだぞ、鍵』と、俺の言葉を割って入ってきた。
「そんなことじゃ嫌われて当然だ」
「なら自重したらハーレムが出来ると?」
「んなもん、知らん」
「酷いっ!?」
そして二蹴りされてしまう。
「真冬、いい加減に杉崎先輩はハーレムを諦めるべきだと思います」
「返して!? 黙示録などを除いて尚描かれている計8冊の生徒会の一存シリーズの文字一つ一つを返して!?」
真冬ちゃんには根本を一刀両断されるという悲劇。
「大丈夫ですよ、杉崎先輩。これは非公式の二次創作ssですから」
「メメタァな発言も禁止っ!」
いきなりネタバレが発動するところだった……。
「生徒会長として、仕方なく杉崎に同意するわ……」
「ちょっと『仕方なく』っていう言葉につっかえたけれど気にしないことにします!」
会長は本心でズバッと言うから余計心が……痛いっ!
こうなったら頼るしかないと、麗しの美女であり生徒会室の女神、知弦さんに応答する。
「知弦さん」
「現実的にはあり得ないと言っても過言じゃないわよ?」
「全くもってその通りですよ、えぇ。……しくしく」
知弦さんに至っては心を読まれていたと言う一方通行な愛。
まるでこの雨のように降り続く愛(罵声95%)を受け止めるのは至難の技だ。
じめじめとした空気の中、この生徒会室はツンツンとした空気に満ち溢れていた。
「なら何で杉崎はそんなもの目指すのよ」
会長が疑問符を敢えて付属させないという新手の戦法を発動した。
全く、あれほど説明してもやっぱり理解してくれないか……今更ながら、この言葉を使おう。
「そんなの決まってるじゃないですか、俺は主人公ですよ?」
少し得意気に言って見せる。

……うわぁ、軽く引かれてるよ。

「それがどうした、セクハラ大明神」
「何か凄い名前を頂いたけどスルーしておこう」
あながち間違っても居ない名に困惑しつつも、言葉を続ける。
「物語の主人公には、大抵は奇跡を起こすという神がかり的な力『主人公補正』というものがありますからね」
「成程、その主人公様は物語のエンディング直前で、主人公らしい死に様を晒すのね」
「殺さないで!? しかも何ですか晒すって!!」
知弦さん、さり気なく俺のハーレムをBAD ENDに繋げようとしているっ!?
「偉い人は、そうハーレムハーレムなんて言わないと思うのだけれど」
「かと言って放っておくと、百合展開が発動しそうですが」
「キー君にとっては、私達4人の百合が完成してしまえば『いばらのみち』だものね」
「ある意味、『ばらのみち』だと思います!」
「あらお上手。真冬ちゃん、座布団マイナス2枚」
「はいです!」
「引かれたっ!? 何故か上手と称されたのに自然な形で山を2段も引かれたっ!?」


「とにかくっ!!」
机を壊れない程度の力で叩き、言葉を放つ。
「俺は、ハーレムを諦めるつもりはありません!!」
『へー』
「……へ?」
余りにも普通の対応に唖然とする。
「いや、別に否定してたわけじゃないのよ」
知弦さんがすかさずに言う。
「何だろう、遠回りに事実上の否定をされている気がする」
「だな。大丈夫だ鍵、あたしは全力で否定する」
「大丈夫詐欺も程ほどにしてくれないかな、かな」
ストレートなら良いという問題でもない。
「でも考えてみれば、杉崎先輩がこんなになってしまったのって、真冬達にも一応責任がありますよね」
「『こんな』って何だ『こんな』って! 姉妹揃って安心詐欺か!!」
「キー君落ち着きなさい、またアカちゃんに怒られるわよ」
「うっ、すみません……ん?」
よく見ると、知弦さんの手に本が…何々。

目障りなアイツを速やかに消す、百の手段

ぞっ、続編出てるっ!?
「生まれてきてごめんなさい」
ゴシゴシゴシゴシ
「あぁっ! 杉崎先輩が床に穴が空く程の勢いで頭を擦りつけてますっ!」
「冗談よキー君、落ち着かないと見えるものも見えなくなるってことを教えようとしただけだから」
「ホッ、良かったぁ……」
「見えてきたでしょう? 己の『死』が」
「もう一度っ! もう一度だけ俺にチャンスをっ!!」
「何のチャンスっ!? てか何で私っ!?」
取りあえず生き延びる為に、会長に頭を下げる。
「会長。せめて、生きる権利を下さい」
「……コホン。いいわ、あげる」
「やった!」

「貴様にオ○ーナを買う権利をやろうっ!!」

「離せ深夏っ! この小人に人生の荒波をたたき込んでやるんだっ!!」
「おっ、落ち着け鍵!」


~その日の夜~

「ふぅ……」
静けさが溢れる夜、自室にて俺はウトウトしていた。
「ゆったり たっぷり の~んびり♪」
三日月なホテルのBGMを脳内再生しながら、さぁ何をしようと考える。
ゆっくりゆったりな意識の中、取りあえず風呂に入ろうと立ちあがる。
うん、普通の生活サイクルの筈だ。

「ふぅ……」
本日二回目の意気消沈(お休み)タイム。
最近は帰宅すると、いつもこんな感じである。

プルルルルッ!!

ん、電話だ……こんな夜中に誰だろうか。
一旦浴槽から出て、受話器の子機を手に取る。
あれ、この番号は……。
「れっつぱぁりぃ」
「いきなり物騒な祭りが始まった!?」

会長だった。

「もう夜中なのに随分とテンション高いのね」
「そりゃこっちの台詞ですって! まぁ、さっきまで浴槽でいい旅夢気分でしたから」
「何だ、お風呂入ってたの、ごめんごめん」
夜中にこのテンション、更にはこのフランク加減。これが生徒会長だと、誰が捉えるだろうか。
「いや、それは別に構いませんが……。会長から電話だなんて、珍しいこともありますね。告白ですか?」
「凄く自然に告白を催促するのやめようよっ! ちょっと明日のことで話があるだけだよっ!」
会長が慌てふためく。電話越しでも愛らしいです、会長。
「成程。それで、明日一体どんな厄介事に巻き込まれるのでしょう」
早速用件を聞こうじゃないか。


「不思議探索よっ!!」
「どこのSOSな団長ですか!?」
ホントに厄介事だった。
人を振り回すと言う点では完全に一致しているのだが……。
「ははっ、冗談冗談。本当はね――」
まぁどうせ、ハイリスクノーリターンな感じの行事を――

「遊園地に行こうかなぁって」

前言撤回。
「会長、遂にその気になりましたかっ!」
「杉崎とは絶対にフラグ立てないから」
先ほどの盛り上がりを凄まじい勢いで右下がりさせる会長。俺、撃沈。
「うぅっ……そんなこと言って、本当は朝帰りしたいんでしょう?」
「杉崎と同じケダモノにしないで!」
「さり気なく酷いっ!?」
「それに、二人で行くわけじゃないわ」
「……へ?」
伝わらないと分かっていつつも首をかしげる。

「生徒会の皆でいくのよっ! その名も、子供たちと生徒会の親睦を深めようの会!!」

勝手に他人である子供たちが巻き込まれている上に、その子供たち側に会長が加わっていることが容易に予想できた。
ま、来年は内地の姉妹もいることだし、三年組みも来年は卒業だ。
ちょっと複雑だけど……最後の思い出づくりってところだろう。
……ん?
「会長、それはいつの話ですか」
「ふぇ? 明日だけど」
「オウナンテコト……」
「まぁいいじゃない、明日はなんたら記念日でお休み何だからさっ!」
「適当に正当化しようったって駄目です。まぁ予定がないのが幸いですが……」


  • 最終更新:2010-09-27 18:03:49

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