Kさんの小説5

本文

Your gift to Ver椎名深夏

~あなたへの贈り物~

涼やかな秋の朝。
9月上旬の残暑が嘘のように、北海道特有の凍てつく風が吹き込む。
学問の秋、運動の秋などと称され、人々の活動が最も活発になるこの時期とは裏腹に、あたしは自宅で静かに天井を見つめていた。
37.2℃、ぜってぇ狙ってんだろコレ・・・。
特別高いとも言えない体温。
しかし体はちっとも動いてはくれない。
思い返してみれば、夏の終盤から昨日にかけて、ずっと陸上部の助っ人をしていた。
長い間外に居たせいで気温の変化に対応しきれなかったのだろう。
「・・・やっちまったなぁ」
想っていた言葉が口から漏れる。
妹に安静にしてろと言われたものの、家では得にすることも無い。
が、ただ寝てるだけなんてあたしには耐えられそうにない。
こんなことを考えてしまうのは、あの生徒会がある日常が、それほど充実していたからだろうか。

どこか抜けているけど、いつも周りを和やかな気持ちにさせてくれる真冬が居て―――

常に冷静沈着だけど、時折にお茶目で年相応の女の子らしい知弦さんが居て―――

猪突猛進、トラブルメーカーだけど、誰よりも愛される会長さんが居て ―――

そして―――

あたし達四人を大切に想ってくれている、心優しい鍵が居る。
・・・(///
「だぁ~~っ!何こっ恥ずかしいこと言ってんだあたしは!!」
どうもあたしは素直じゃない。
鍵の言うツンデレでは断じてないが、生徒会のこととなるとあたしはいつも変だ。
「・・・皆、今頃どうしてるかな・・・っ!?」
無意識に、生徒会の皆のことを、心の白いキャンパスに描いてしまう。
もうだめだ、寝よう。
余計なことを捨て、今は風邪の治癒に専念しよう。いつもは変態のあいつも、そう言うはずだ・・・。
あ・・・。
やっぱり捨てきれなかった。

「んっ、うぅん・・・」
ふと眼を軽く見開く。
・・・誰?
「・・・深夏」
低く、優しいトーンであたしを呼ぶ声の主は、手をゆっくりとあたしの頭部に乗せ、これまた優しく撫で始める。
この感じ・・・ずっと昔にもこんなことがあったような・・・。
眠気がまだ残っているのか、はたまた風邪の症状なのか、薄らとしか眼を開けられず、その人物の正体が分からない。
けれど、覚えてる。
あたしは今動く神経一つ一つを集中させ、今までの道、記憶の回廊を辿ってゆく。
「・・・あんまり無理するなよ?」
っ!?
思い出した・・・でも、これってまさか―――

父・・・さん?

いや、そんなはずはない。実の父で会ってほしいと願うも、心の奥底で否定してしまうあたしが居た。
すると、突然あたしの前頭葉に存在していた重量が消えた。
「・・・じゃあな。また来るよ、深夏」
まっ、待って!行かないで!!
声はおろか、手を伸ばしても届かない。
その影は、ふらりと現れたかと思うと、すぐにあたしの前から姿を消してしまった。
一体誰だったのだろうか。
疑問ばかりが頭を過る。
考えれば考えるほど、胸が痛くなる。
それと同時に、眠気が再来して・・・。

「お姉ちゃん、起きてっ」
この声は・・・ッ!
「真冬ぅ!!」
「ひゃっ、ひゃい!?」
ちょっと大声だしちまったがそんなことはどうでもいい。
「なぁ真冬。今日の昼くらいに、この家に誰かいたか?」
「ふぇっ?え、えぇっとぉ・・・」
「・・・真冬?」
「まっ、真冬だけ!真冬だけだったよ、お姉ちゃん!」
・・・。
「何か隠してないか、真冬」
「かっ、隠してなんかないよぉ!!」
ん~・・・何か引っかかるな。
「どっ、どうかしたの?お姉ちゃん」
「あ…ありのまま今(さっき)起こった事を話すぜ!」
「なっ、何!?」
「あたしは頭に何か重みを感じて眼を開けたら、あたし達の本当の父親がいたんだ」
ま、実際本物かも分からないけどな。
「だけど、眼が完全に開かなくてよく分からなかった。そして、いつの間にかあたしの前から姿を消していたんだ!」
「へっ・・・へぇ~」
「げほっ、何を言っているのかわからねーと思うが、げほっ、 俺も何が起こったのかわからなかった・・・。
頭がげほっ、どうにかげほっ、なりそうだった…夢だとげほっ、か幻覚だとか
そんなチャチなもげほっ、んじゃあ断じてねえ。
もっと恐ろしいもののヘッ片ク鱗シッ、を味わったぜ…」
「恐ろしかったんだ・・・って、行数の無駄遣いだよっ!!後言うならげほげほ言わずにちゃんと言ってよ!
それに最後のはただのくしゃみだよね!?バッドタイミングすぎるよ!!」
真冬はスルー。
でも、もし実の父だったとしても、真冬が隠す理由が見当たらない。
やっぱり・・・夢だったのか。
「晩御飯、できてるから。食べよう?」
「あぁ、そうだな・・・!?」
何を言っているんだこいつは・・・。
「真冬が料理なんて出来るわけないだろう!」
「(ガーン!!)」
きゅうしょに あたった! ▼
こうかは ばつぐんだ! ▼
「うっ、もうお姉ちゃんにはあげない!」
「なっ!?病人を労れ真冬!!」
その後1時間粘り続けたが、結局晩飯は冷凍食品になった。
それにしても真冬のやつ、何作って・・・っ!?

―そこには、黄金に輝く鍋の姿が―

・・・ゴクリ。
葱とか韮とか生姜とか、風邪に良い&めちゃくちゃ上手そうな鍋だったとさ。
しかし、真冬があれほどの料理を作れるだろうか。
うーん・・・世界の七不思議のひとつだな。

「おはよう、真冬」
「え、あ、・・・おはよう」
翌々考えたら、料理出来ないだろ発言は相当応えたみたいだな。
「あー、その、昨日はごめんな」
「・・・うん。真冬も・・・ごめん」
「折角真冬があたしのこと気遣って作ってくれたのに、あの発言はなかったな」
「・・・え?」
「本当にごめん!」
「あ、そっ、その、あの・・・真冬、学校があるからっ!!」
ガチャッ
「・・・真冬~?」
なんか慌てて行っちまった。
昨日も変だったな、あいつ。
まぁいいか、あたしは寝よっと。
体調に関しては序所に収まってきてるけど、昨日の影が夢だったのかどうかを確かめたいしな。

―6時間後―

・・・まただ、また昨日と同じ、頭に誰かの手の重みが来る・・・。
リアリティが半端じゃねぇ・・・夢じゃないみたいだな。
「・・・深夏」
また昨日の声。
どこかで聞いたことがあるような声。
「何?」
「っ!?」
応答するや否や、その声の主は驚いたような声をだす。
「起きてたのか、深夏」
この声・・・昨日と同じだけど、父さん・・・じゃない。
この、優しい声の感じは・・・ッ―――

「けっ・・・鍵!?」
「ん、なんだ?」
案の定、あたしと同じ生徒会の役員で、同じ副会長の"杉崎鍵"そのものだった。
「何で人の家に乗り込んでんだよ」
「ひっ、人聞き悪いな。ただ、その・・・あの深夏が風邪で倒れてるって言うから心配でさ」
・・・なるほど。昨日の影も鍵だったってことか。
「心配してきてくれたのか、ありがとう」
これは、あたしの素直な気持ち。
「おっ・・・おう(///」
鍵が珍しく赤面してやがる。
「でもよぉ・・・」
「ん?」
「"あの"深夏って何だ!あのって何だあのって!!」
「えちょっ!?ギャァッー!!ギブギブ、死ぬってぇ!!」

「ふむふむ、なるほどな。昨日の黄金鍋もお前が家に来て作ったのか」
「は・・・はい」
鍵はすっかり衰弱していた。
「あっ、でも、真冬ちゃんは何もしなかったってわけじゃないんだ」
「ん?」
「昨日の帰り、雑務が終わって帰るときに、碧陽を出てすぐのところで大量の具材を抱えた真冬ちゃんを見たんだ」
「・・・真冬がか?」
「あぁ、例え料理が上手く出来なかったとしても、深夏の体調が心配で仕方なかったんだろうな」
「そんで、鍵が見るに見かねて家に来たってことだな」
全く、可愛い妹をもっちまったな。
「嬉しいんだけどさ・・・何で自分が来たことを真冬に言わせなかったんだ?」
「それは・・・俺が来たって知ったら、お前、皆に迷惑かけてる、とか思うだろ?」
「くっ、否定できない!」
「まっ、まだ完治してないなら安静にしてろって」
形勢逆転されちまった。
「それに、俺も真冬ちゃんに負けないくらい深夏が心配なんだぜ?」
「なぁっ!?(///」
こいつは本当にデリカシーってのがねぇのな。
「そういうこと・・・真顔で言うなよ、恥ずかしい・・・(///」
「ははっ、いつもの深夏だな。それじゃ、ちょっくら雑務が残ってるから帰るけど、本当に無理すんなよ?」
「ちょ、雑務って・・・今からか?」
「あぁ、心配すんなって、看病なんて何時でもしてやるよ」
「そっちじゃねぇよ!!」
「・・・俺なら、大丈夫だって」
まただ・・・。
また鍵は・・・そうやって強がっ・・・て・・・。
っ!?
ガクッ
「みっ、深夏!?」
そこから、あたしの意識は、無くなっていった。

「・・・うっ」
頭が・・・重い。
鍵の手から来る重みじゃない、ただ、精神的に来る重みだ。
「もう・・・夜かな」
「あぁ、ゴールデンタイムだな」
「へ?」
「全く、無理するなっつったそばから倒れんなよ」
「・・・鍵、お前まだいたのか?雑務はどうするんだよ」
「俺はやってないけど?」
「・・・あたしの、あたしの為に、残ってくれたのか?」
「うーん、まぁそれもあるけどな。本当は、あの三人がやってくれるって言いだして、今に至るわけだ」
会長さん達が・・・?珍しいこともあるな。
「でも深夏、熱が2℃くらい上がってたぞ?」
「ん、そうか。分かってはいたんだけど、無理しちまったのかもな。・・・ってぇ!?」
「何だ、どうした?」
「お前・・・あたしの熱を何時計った・・・」
「一度碧陽に戻って少し時間が経った時くらいだったかな。その時三人に戦力外通告されて戻ってきて、すぐだ」
「それで、なんの体温計を使って計った・・・?」
「脇式(キリッ」
「そうかそうか、ところで鍵、今思い浮かぶ色は何だ?(ニコニコ)」
「純白です!」
「極光壁ッ!!」
「ちょっ!?何で深夏がそれ使えっ・・・リ○ドおぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉおおおっ!!」

「それにしても、今日はなんか得した気分だったぜ。」
「何がだ?まぁ3行前ボコボコにされた奴が言うんだから余程のことなんだろうな」
「会長にはうさまろを一つ貰ったし、知弦さんにはクロコダイルの革で作られた高級鞭を貰うし、真冬ちゃんにはBL本を30巻一式」
「ちょっと待て!後の二つに色々とツッコませろ!つーか会長のが一番マシってどういうことだ!?」
「さぁな?なんか皆帰りざまに、プレゼントとか言ってくれたんだけど・・・」
プレゼント・・・?
!!
「鍵、お前今日誕生日だろ?」
「・・・あ」
「おいおい・・・自分で忘れてどうすんだよ」
「そんなこと言ってもなぁ。プレゼントらしきものが貰えなかったんだが」
「日ごろの行いが悪いからじゃねぇか?(笑)」
「おいおい、今の今まで深夏を看病してたのに、そりゃないぜ」
ま、それに関しては感謝してるけどな・・・。

「・・・父さん」

「父さん?いきなりどうした、深夏」
「・・・鍵が、あたしの本当の父さんに見えるんだ」
「マジか・・・前世ですでに香澄さんとフラグを立てていたんだな!」
「右手も・・・添えるだけっ―――」
ガチーン
渾身の頭突きがHITした。
「アッー!痛い痛い、真面目に聞くって!」

今思えば、自分だけに閉じ込めておくのが辛かった、誰かに聞いてほしかったのかもしれない。
「あたしは・・・本当の父親の顔を知らなかった」
そう言ってあたしは、父親に対する想いを、鍵に告白した。
「物心ついた時、既にあたしの前には居なかった」
「けど・・・薄らと、本当に薄らだけど・・・覚えてるんだ」
「・・・」
さっきとは打って変わって、鍵はその話を、ただ黙って聞き続けていた。
「でも、長い時間共に過ごしたわけでもない、だから、父親という存在を求めることはなかったんだ」
「声とか・・・温もりとか・・・。本当に優しい人だった。それだけが、あたしの心に残って、な」
そう、優しい声、暖かい温もり。
「すごく・・・似てるんだ」
「何にだ?」
「・・・お前だよ、鍵」
「おっ、・・・俺?」
鍵は呆気にとられたような表情であたしを見る。
「はははっ、不思議だよな、知らず知らずのうちに、父親の影を鍵に重ねていたなんてさ」
そう、確かに父と鍵は似ていた。
けれど、影を重ねたのはそれが理由じゃない。
本当に、無意識のうちに重ねていたんだ。
「・・・素直じゃないな、あたし」
「?」
「本当は・・・父というよりも、あたしを包んでくれる温かい温もり、優しさが欲しかったのかもしれない」
そう、母にはあって、あたしには無い席。
それでも、母と一度引いてしまった溝に、何か詰めるべきことがあったんだ。
優しさ、それだけでよかった。
寂しかった。
何時までも素直になれない自分を、責めたくて仕方がなかった。
「あたしが・・・家族を壊してしまったんだ。今は何ともなくても、その溝は完全には埋まらない。だから、綻び始める・・・」
「・・・深夏っ!」
鍵が、急にあたしを抱きしめる。
でも、驚かなかった。
いや、驚くどころの状態じゃなかったって感じだな。
あたしは泣いていた。ただひたすらに泣いていたんだ。
だから、鍵にこうしてほしかった。傍に居てほしかった。
ただ―――

鍵のぬくもりが、感じたかった。

「・・・なぁ、鍵」
「何だ?」
「・・・誕生日プレゼント、やろうか?」
「おっ、マジですか!あたしを貰ってくれ的な雰囲気が・・・んっ!?」
あぁあ・・・やっちまった。
一瞬、時が止まったような感じがした。
ゆっくりと唇を離すと、あたしと鍵の口には銀色の糸が引かれている。
「鍵、・・・・・・」
長い沈黙の後、覚悟を決めて、あたしは言った―――

好きだ。

「みっ・・・深夏?」
「・・・何だよ。自分から抱きしめたくせにこういう展開は予想だにしなかったのか?」
「あっ、あたりまえ・・・だろう(///」
おいおい、これじゃどっちがあたしでどっちが鍵か分からないじゃねぇか。
「おっ・・・俺の唇を奪うなんて・・・グスン」
「気色悪い言い方するなよ。あとあたしをケダモノを見るような眼で見つめるな!」
「いやいや、そんなことは想ってないさ。ん、胸に柔らかい感触が―――」
「ばっ!鍵てめぇ!!」
ドゴッ
「生命を糧とし、かの者を打ち砕け!!イノs―――」
「ちょっ、だから何で深夏はテ○ルズの技使えんd―――くぁwせdrftgyふじこlp;@:」
ったく、たまにはまともかと思ったらすぐこれだ。
「あー・・・ありがとな、深夏」
かと言って、面と向かって言われるとこっちも恥ずかしい。
「いいんだ、変態な所も含めて・・・好きだ(///」
あたしは何を言ってるんだ。
自分で自分が分からなくなってきたぜ・・・。
「深夏の誕生日の時、必ず何かおかえしをだな」
「あたしの誕生日、過ぎたばっかりなんだけど」
沈黙。
「まぁいいさ、来年の夏にはまた来れるしな。その代わり、約束だからな、ちゃんと覚えとけよ」
「おk、メモっておきます!」
「そう言うのは心のメモに書くべきじゃね!?というか目の前で紙にメモんな!」
「よし分かった、心のメモに書くぜ。その代わり、深夏の心と体にしっかりと刻んでおかないとな!」
「えちょっ、鍵お前何するつもりd、なっ、ふぁあぁああっ!!」

真冬に"ゆうべはおたのしみでしたね"って言われたが、それはまた別の話だ。

「・・・鍵」
ふと気がつけば、彼の名を呼んでいる自分がいた。
あたしは今、生徒会の皆と過ごした、想いでの場所へ向かっている。
皆と会い、楽しい時間を過ごすために、そして―――

約束を、果たすために。


「ふぅ、すっかり夜になっちまったな」
予定よりも到着が遅れたため、あたりはすっかり真っ暗だ。
「大丈夫かな・・・いくら約束の日とは言え、鍵にはアポをとってないし・・・」
突如、自分の心に陰りが射しこむ。
遅れてしまったこともあり、約束を覚えていないんじゃないか、そんな思いが脳裏に過る。
それでも、あたしの足は、無意識に記憶の回廊を辿り、ふと見上げればそこは―――

「帰ってきたぞ・・・鍵」

きっ、緊張してきた・・・。
なんて言おう。
入ったらなんて言おう。
自分らしくない、分かっているけど、動揺を隠すことはできなかった。
・・・深く、深く深呼吸をする。
あたしにに会うのは笑顔、そう言ってくれたよな。
鍵の言葉は、いつもあたしを支えてくれる。
いつものあたしらしい言葉で、あいつに会いに行けばいいか!

「ただいま!!」
扉を開けるや否や、元気よく挨拶した。
が、照明は点いているのに、何の音も聞こえやしない。
独りになってしまったのか、という不安を抱きつつ、リビングへ向かう・・・と―――
「この時間は帰ってるんじゃ・・・って、寝てるのかよ!」
まさかこんな早い時間に寝るなんて予想外だ・・・。
「まぁ、ここは鍵の部屋だし、鍵が何しようと勝手だけどよ・・・。」
ソファに仰向けになっているそいつは、手に料理本か何かを持ったまま就寝なさっていた。
「・・・深夏ぅ・・・むにゃむにゃ」
またこいつは・・・どんな夢を見て・・・ん?
ふと横を見ると、机の上には、鍵が自分で作ったと思われる、綺麗な装飾が施されたケーキと、華やかなリボンで包装された、白い箱。
そして、その包みに添えてある、二つ折りにされた一枚の赤い紙があった。
それを開くと、鍵らしく、少し気取った外国言葉が、金色で書かれていた。
「約束、覚えててくれたんだな・・・(///」
そう言って、あたしは苦笑する。
思い返せば、どんなに辛い時でも、あいつは傍に居てくれた。
今まで、一緒に過ごした時間。
そこに潜む、たくさんの楽しさ、悲しさ、恥ずかしさ、苦しさ、虚しさ、そして嬉しさ。
溢れそうになる全ての感情を言葉に抑え込み、それを、隣で寝息を立てている愛しい人に告げる。
そう、ぎこちないけど・・・優しくて暖かい。
そんな・・・そんな鍵が――

「ありがとう、・・・鍵」

・・・大好きだ。


  Happy Birthday to My Love

―愛する人へ、誕生日おめでとう―





Your gift to Ver杉崎鍵

~あなたへの贈り物~

「秋の筈なのに、気分はまだ夏だな・・・」
無意識のうちにそんな言葉を漏らす。
「あらキー君、私の季節を否定するのかしら?」
「いやいや、そんなことは微塵も思っていませぬ」
相変わらずのやり取り、まぁ、二人きりということもあって、結構静かに―――
「こら杉崎、知弦に変なことしてないでしょうね」
『あ、会長 (アカちゃん)居た(のね)んですね』
「居たよ!最初からずっと居たよぉ!!」
「すっ、すいません、見えませんでした」
「ムキーッ!喧嘩売ってるの!」
「ほらキー君、もうやめなさい」
さすが知弦さん、いつ何時も冷静でいらっしゃ―――
「もっと華麗に、かつ大胆に弄り倒さなきゃ・・・ね?ふふ」
らないいいいいいいいいいいい!!

「秋といえば、学問の秋、読書の秋、食欲の秋 ―――」
「性欲の秋!」
「えたーなるふぉーすぶりざーどぉ!!」
「何かもう本当すいません」
ガチャリ
「すみません、遅れました!」
色々と危険な雑談の最中、真冬ちゃんが入室した。
「随分遅かったのね、何かあったの?」
「それが、ですね・・・」

「深夏が風邪でダウンしてる?」
衝撃だった、熱血馬鹿は風邪ひk・・・いや、やめよう。
「それで、深夏は大丈夫なの?真冬ちゃん」
会長が曇り一つない純度100%の瞳を大きく見開き、尋ねる。
「はい、熱が上がるようなことはないんですけど、下がる気配も無いというか・・・」
「まぁ、深夏はよく部活の助っ人に出ていたし、無理もないわね」
「熱が大したことなくても、体の負担、披露との相乗効果は凄まじいですからね」
深夏の奴、無理してないといいけどな。
『・・・・・・』
「ん、何ですか皆」
「いや、杉崎ってさ」
「深夏のこととなると」
「凄く普通の男子生徒っぽくなりますよね」
「ちょっ、何それ!?俺は何時でも普通の男子生徒だよ!?」
三人の連携攻撃が、俺にクリーンヒットした。
「まぁ、杉崎と深夏は同級生だし、一番仲がいいのかもね」
「当たり前じゃないですか。俺と深夏は将来を誓い合った淫らな―――」
「あ・・・ごめんなさい、真冬、用事を思い出したので、これにて失礼します」
「へっ?真冬ちゃん帰っちゃうの?」
来て早々退場しようとする真冬ちゃんを、俺は一時引きとめる。
「すみません、姉が心配なもので・・・」
「そうね、今日はこれで終わりにしましょうか」
「えー何で、知弦」
会長が駄々をこねる。
「いいから、あ、キー君、雑務は明日皆でやりましょう。今日は帰っていいわ」
「いや、やりますよ。俺がやらないと、誰もやってくれそうにないですから」
「ふふっ、ごもっともね」

「・・・ふぅ、これで終了っと」
全国の杉崎鍵ファンの皆、いくぜ!
3 2 1
「ぺったんこ!!」
はいすいません調子乗りました。orz
「さってと、帰るかな」

最近になって思う。
俺は生徒会の皆が好きだ。
けど、一人だけ、好きという具合をずば抜けている奴がいる。

―――深夏だ。

会長の言うとおり、俺と深夏は同級生。
けどそれは関係ない、気付いたら、眼で深夏を追うようになっていた。
風邪か・・・あいつなら大丈夫だと思うけど・・・って―――
「おっとっと・・・」
な・・・何かいるぞ!
「ま・・・真冬ちゃん?」
「なっ、何ですか、杉崎先輩」
案の定、真冬ちゃんでしたとさ。
自分の体より数倍大きい袋を持って・・・。

「どこへいこうというのかね」

「バ○ス!!」
「あ~がぁ~!!あ~あ~目がぁ~目がぁ~!!あ~あ~目がぁ~あ~あ~!!」
・・・ってぇ!そんなことしてる場合じゃない。
「ど・・・どうしたの?」
「おっ、お姉ちゃんに・・・暖かいものでも作ってあげようかと思って」
何て健気な・・・深夏×真冬ちゃんでもいけるなっ!!
「変な妄想してないで手伝ってください!」
「3分間待ってやる!!」
「待ってるのはこっちです!!」
怒られてしまった。スギサキ・ケン・ウル・ラ○ュタは駄目なのか・・・。orz

今現在、俺は真冬ちゃんと共に、深夏用の"運が良ければ風邪が治るかもね☆デラックス鍋"を作成している。
「この湯気の差す方向に○ピュタがあるのだ!!」
「まだか、早くしろ!!」
真冬ちゃんもム○カワールドに取り込まれたようだ。
「そっ、そろそろ真面目に・・・」
「あーはいはい、了解だ」

―30分後―

「出来た・・・"運が良ければ風邪が治るかもね☆デラックス鍋"の完成だ!!」
「さすが先輩です・・・なんて美味しそうな"運が良ければ風邪が治るかもね☆デラックス鍋"!!」
「そうとも、この"運が良ければ風邪が治るかもね☆ デラックス鍋"には、葱やら韮やら生姜やら、風邪によく聞く具材が多いうえに、美味という、最強の鍋だ」
「真冬も、いざという時のためにこの"運が良ければ風邪が治るかもね☆デラックス鍋"の作り方をマスターしたいです!」
「真冬ちゃん、"運が良ければ風邪が治るかもね☆デラックス鍋"の習得、頑張りたまえ」
「はいっ!"運が良ければ風邪が治るかもね☆デラックス鍋"の師匠!!」

「・・・深夏」
返事は帰ってこない。
深夏の額に手を当てると、そこそこの高温であった。
俺は濡れ雑巾を取り出し、そっと乗せた。
「んっ・・・うぅん」
ま、この調子なら問題ないだろう。
「無理しないで、ゆっくり休めよ」
元気のない深夏なんて、深夏じゃないからな。
「・・・じゃあな。また来るよ、深夏」
ちょっと名残惜しいけど、風邪が治ればまたすぐに会えるだろうからな。

―翌日―

真冬ちゃんのお願いで、また来てしまった。
理由は姉妹喧嘩らしいんだけど・・・無理させてしまったらしく、病状が悪化したとか。
今はこうして寝てるけど、真冬ちゃんだけだと危なっかしいな。
会長にチャッカマンを持たせるようなものだ。

「・・・深夏」
「何?」
「ぬぉっ!?起きてたのか深夏」
いつものように、無意識状態で深夏の名前を呼んでいたら、急に返事が返ってきた。
「けっ、鍵?」
「ん、どうした?」
「何で人の家に勝ってに乗り込んでるんだ」
「おっ、おいおい、あの深夏が風邪ひいてるって言うから心配して来ちまったんだぞ?」
本心、それを伝えるのは、結構恥ずかしい。
俺の羞恥心が70%を示している時に―――
「心配してきてくれたのか、ありがとう」
「おっ・・・おう(///」
恥ずかしさMAX!!
深夏が見せた、急な女の子らしさに、俺の心は激しく DQNしますた。

「・・・父さん」

「・・・深夏、どうしたんだ?急に」

俺は深夏から、深夏の父親についての詳しい話を聞いた。
だけど・・・それはあまりに虚しい、本当に虚しすぎる過去だったんだ。
本当は心のどこかで父の温もりを求めていたこと。
素直になりたくても、自分からはどうすることもできなかったこと。
知らず知らずのうちに、父の面影を俺に重ねていたこと。
これ以上、誰も失いたくないという強い願い。
それは・・・あまりにも切ない想いだった。
けど、それを聞いて、改めて分かった。
深夏には、父親以前に、もっと必要なものがある。
それは―――
「俺が・・・俺が守って見せる」
「・・・鍵?」
そうだ、深夏を守る・・・守ることができる力がある存在。
「もう、深夏を悲しませたく・・・ないんだ」
今までの俺では考えられないような、思い切った告白。
だけどそれは・・・俺の、心からの本音だった。
「・・・ぅっ・・・けぅ・・・っ!」
耐えに耐えきれず、一筋の涙を流している目の前の彼女を、俺はそっと抱きしめる。
「深夏・・・もう、離さないぞ」
そう言って俺は、自らの手を深夏の頭部に乗せ、ゆっくりと撫でてやる。
「だから、もう泣くな。深夏を笑顔にさせるのが・・・俺の、俺だけの仕事なんだからな」
「っ!鍵ぅっ!!」
深夏には・・・溝っていう、もうひとつの空席があったんだ。
それは、とても深く、暗い溝。
それを・・・俺が埋めて見せる。
俺じゃなきゃ・・・俺じゃなきゃ駄目なんだ!

「深夏・・・」
「鍵・・・」
息がとまるような、甘い口づけを落とす。

―――このまま、時が止まってしまえばいいのに

そんなことが思える、今がとても幸せだった。
「・・・脱がすぞ」
「ぉ・・・ぉぅ・・・(///」
いつもとは違う、女の子らしい深夏。
その深夏の声は、今にも消えてしまいそうな程に小さかった。
上を脱がすと、一度見た(見ざるを得なかった)純白の下着が現れた。
純白が嫌な奴は、脳内変換すればいいさ。
ま、どんな下着だろうと、気に入らないってだけで居やがる奴に、深夏を愛する資格はねぇだろ。
・・・言ってみたかった!!(ぁ
背に手をまわして、ホックを外しにかかる。
恥ずかしいのか、少し抵抗気味な深夏だが、最終的には俺を受け入れてくれた。
「綺麗だよ、深夏」
「んぅっ・・・(///」
いつもとのギャップに合わさり、この初々しさだ、恐ろしい破壊力だぜ・・・。
そして、俺は深夏の胸に手を伸ばし、右の突起に口を近づける。
・・・チュプッ
「んっ・・・ひぁぅ、鍵・・・」
「深夏、気持ちいか?」
「ぅ・・・ぅん。凄く・・・いい」
内心、ホッとし、胸をなでおろす。
「じゃぁ・・・こっちも、な」
「っ!?」
そう言って、俺の手は、深夏の秘部へと伸びる。
「ははっ、大洪水だな(笑)」
「うっ、うるせーんだよ童貞っ!!(///」
「あがっ!?」
深夏の打撃技ではない、ただ一言、"童貞"の双文字が、俺の腹部を貫いた。
「それは・・・言わないでくれ」
「あ・・・悪ぃ」

深夏の秘部へ侵入した俺の指は、処女膜の一歩手前まで進行し、じゃじゃ馬のように暴れ狂う。
「んんっ!?あっ、くっ、んぁあっ!」
「深夏・・・」
愛しい彼女の名前を呼び、また、深い口づけをする。
「もう、いいかな」
「けほっ、あぁ、もう・・・」
「っ、深夏、体調悪いなら・・・やめようか?」
ここまで来て何だが、急に心配になってきた。
「ここまでしておいて・・・それはねぇだろ(///」
ですよねー☆
「それに、安静。ようは、あたしが動かなければいいんだ」
「そっ・・・それはそうだけどさ」
「だから・・・鍵が動いてくれよ、なっ」
了解です!
すっかり硬化し、はち切れんばかりの自身を、深夏の秘部へ宛がい、ゆっくりと挿入する。
「んっ・・・痛っ」
「大丈夫か?深夏」
「だっ、大丈夫・・・だから、もっ・・・動いて、いいぞ(///」
深夏の了承を得た俺は、なるべく痛くないように腰を動かしていく。
白いシーツに血が付着してしまったが、未来の嫁の寝台くらい自腹でなんとかするさ!
「んっぅ、ぁんっ、んあっあぁぅ!」
「うっ、く、深夏・・・っ」
深夏の中は、温かくて、とても心地よかった。
でも、それとは別に、違う暖かさと、嬉しいという感情が芽生える。
深夏から伝わる、深夏のぬくもり。
傍に居て、守ってやれるという嬉しさ。
「うあっ、けっ、鍵ぅ!もっ・・・イクっぅ!」
「俺も・・・っく、出すぞ、深夏っ―――」

「んぅっ、あっぁああああああああああああああああああああ!!」

俺は深夏の中に、自らの欲を吐き出した。
余談だが、キスをし過ぎて俺に風邪が移り、次は深夏が上に乗って動く羽目になったとさ。

「ぃよっし!これで完璧だな」
深夏が内地へ転校し、会長、知弦さんも碧陽を卒業した。
それでも、ちょくちょく三人で会っては、楽しい雑談を繰り広げている。
そして昨日の雑談により、深夏に渡すプレゼントが決まった。
もちろん、自作ケーキも用意してみた。
が、もうすぐ夜だというのに、深夏はなかなかやってこない。
今日は来れなくなってしまったのだろうか。
真相を知るすべはない。
ただ一つ言えることは―――

「すっげぇ眠い」

さすがに徹夜はよくないな、うん。
だが寝るわけにはいかない!
きっと・・・、きっとこの力作やプレゼントを見れば、喜んでくれる筈だ。
「深夏の・・・二人だけの、最高の誕生日にしてやりたいからな」
そう言って、妄想の世界へ、俺はダイブする。
羞恥心を帯びた、深夏の笑顔を思い浮かべれば、眠気なんて―――

・・・吹っ飛ばなかった。

「うぅ・・・ん」
瞼から伝わる、朝の陽ざし。
ふと眼が覚め、体を起こそうとして―――
ドサッ
『痛っ!?』
・・・あ。
「おっ、・・・おはよう、深夏」
「・・・ん?・・・鍵ぅ」
駄目だ・・・寝ぼけてる。
つーか何時の間に俺の家に・・・。
「ほら深夏、朝だぞ~って・・・」
この時、俺はある異変を悟った。
「・・・なぁ、深夏」
「ん?・・・なぁに鍵」
「何で・・・そのドレス着てるんだ?」
「・・・っ!?」
みなつは しょうきを とりもどした! ▼
みなつは こんらん してしまった! ▼
「ちっ、違うんだ!これは、あの、その・・・何というか(///」
「・・・(微笑ましい視線)」
「えっと、・・・似合ってる、か?」
何を言い出すかと思えば・・・。
そんなの決まってんだろ―――
「あぁ!すっげぇ似合ってるよ」
その言葉を聞いた深夏は、頬を赤らめつつ、安心感を帯びた表情をした。
「そっ、そうだよな!鍵が選んでくれたんだし・・・ぇへへ(///」
やっぱり、深夏も女の子なんだな・・・。
「おいこら、今あたしにものすごく失礼なこと考えてなかったか?」
「滅相もございません!」
男ではないけど、漢なのかもしれないな・・・。
深夏らしくていいじゃねぇか。
「・・・深夏」
「何だ?けっんむっ!?」
不意に深夏の唇を、自らの唇で塞ぐ。
「なっ!・・・あぅ・・・(///」
口を離した時には、もう情緒不安定だった。
こいつは・・・いつ見ても可愛いな。
俺はそんな愛しい茹でダコ様をゆっくりと抱きしめる。
一日遅れちまったけど、俺らしいと言えば問題ないな!
そう言って、深夏と視線を合わせた俺は―――

「誕生日おめでとう。大好きだ、深夏」

ここにある小さな幸せを、ずっと守ると誓った。

  Happy Birthday to My Love

―愛する人へ、誕生日おめでとう―



参考情報

2010/01/06(水) 00:41:04~2010/01/06(水) 00:50:13で21レスで投稿。
Kさんの生徒会の一存のエロ小説を創作してみるスレで5作品目。



  • 最終更新:2010-07-06 02:11:06

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