Kさんの小説6-4

~金曜日~

《杉崎鍵視点》

「物事の大小は、人それぞれの想いに比例するのよ」
会長がいつものように小さな胸を張ってなにかの本の受け売りを偉そうに語っていた。
知弦さんは『うーん……もきゅぅ』と、愛らしいが途轍もなく疲れ果てた顔をしていらした。
今日は体育があったせいか、三年生の知弦さんと一応三年生の会長は、少し熱を帯びている。
その証拠なのか、会長の受け売り名言に"!"が付いていなかった。
それを予想し、全員分のお茶を購買部で買った訳だが……何の因果か、牛乳とお茶、と言った形になった。
「もう冬も近いって言うのに……暑いというより熱いわね」
そう言って知弦さんは、常時携帯しているミネラルウォーターを取り出す。
俺もそれに合わせるかのように、何故か風流なコップに『あったかい』のお茶を注いだ。
……相変わらずこの生徒会室で美少女に囲まれながら啜るお茶は上手い。
「こら杉崎! 聞き流さないの!!」
「何故俺だけ名指しなんですか!? 知弦さんも、ましてや皆、会長の言葉なんて聞いてなかったじゃないですか!!」
「そうですよ会長さん、杉崎先輩に名指しをするなんて可哀想です」
「それが余計に問題なのよ!」
まぁまぁ、と、すっかりご立腹の会長をなだめる。
「ズズッ……そんで、今日の議題の本質は何だよ」
お茶を啜り、深夏が呆れた表情で問う。

「つまり、価値観とは人それぞれのものであり、受け入れるも否かもその人次第、というわけよ!!」

会長の提示した本物の議題に、俺は『さすが会長!』と続ける。
「俺はその言葉、とても心に響きましたよ」
「ほっ、本当? 杉崎にしては上出来ね!」
「はい! 物事の大小。会長を見ていれば分かります!!」
「……ふぇ?」
一度お茶を啜り、力説に必要となる十分な水分を確保し、喉も潤ってきた所で口を開く。

「例え会長の胸が小さくても、その価値観は分かるやつだけに分かるという事です!!」

「うにゃーっ!! そんな価値観は分かってもらわなくて結構だよ!!」
「ふむ……仕方ないですね。会長の本質はロリですが……そこまで言うなら、この牛乳でも飲んで下さい」
「そっ、そんなもの要らないもんっ!!」
とか言いつつ、華麗に俺の手から奪われる牛乳パック。
「真冬ちゃんにまで大きさで負けるし……むぅ。ちゅーちゅー」
『…………』
完全に会長をスルーする生徒会役員。
皆そんなに会長の相手が面倒なのか…なんなら代わりに俺が相手をしてやろうかな。性的な意味で。
「うっ! 今猛烈な寒気と悪寒がっ!?」


「そういえば……」
知弦さんが静かに口を開いた。
「胸の大きさは生まれつきの成長ホルモンやらで左右されるけど、揉むと大きくなるって良く聞くわね。あれって本当なのかしら?」
何を言い出すんだこのクールビューティーは。
「それは聞いたことありますね。いや、変な意味ではないのですが。逆に、牛乳での成長はあまり聞きませんよね」
「えぇっ!? じゃぁ何で私に牛乳渡したの!?」
「健やかに育ってくださいね」
華麗に無視。
「揉むと大きく、ねぇ……恐ろしい話だ」
深夏が妙に考え深そうな顔をしていた。
「なんだ深夏。お前はもう十分だと思うぞ……少なくとも会長に比べれば」
「さりげなく私をいじめないでよ!!」
「お前はあたしの何処を見てるんだよ」
「胸ですが何か」
「うん、そこまではっきり言われるとは思わなんだ」
「照れる仕草一つ見せないとは……さすが深夏。デレる気配の無い正統派ツンデレである」
「あたしはツンデレじゃねぇっ!!」
「ぐぇぁ!?」
しまった、モノローグのつもりが……ガクッ。
「まさか深夏、胸が大きくなることを望んでいるのかしら? だとしたら意外と欲張りなのね」
「知弦さん……逆だ、逆」
『……はい?』
深夏を除く、生徒会全員の目が、キョトンとしながら深夏を見つめる。
「……最近になって想うんだ、邪魔だなって」
少し陰りの見える眼をし、深夏は続ける。
「この大きさが不満なんだ、あたしは運動がしたくても、この無駄な胸のせいで思ったよりも動けないんだよ」
「……深夏。貴女はもう少し、場を読める子だと思っていたわ」
「え? だって知弦さんも、肩凝って嫌じゃないのか? "こんなもの"」
このトンデモ発言の後、会長の目がクリムゾンフレア状態に変化する。
「ほぅ……深夏、それは私達に対する挑戦状かしら?」
「私達っ!? 何故か真冬までその私達に入ってる気がします!!」
なるほど、しかし真冬ちゃんの大きさはそれはそれで素晴らしい価値が――

「そんなにいらないなら、私達に分けなさいよ!!」

なんて無茶を仰るんだこのロリ会長は。
「簡便してくれ、そんな移植医療をする金は無いっての」
まるで金さえあれば移植するかのような発言が聞こえたが、敢えて聞かなかったことにした。
「そうですよ会長! そんなことしていいはずがない!!」
「あら、今日はキー君がまともに見え――」

「会長の蟻地獄も、真冬ちゃんの緩やかな丘も、ましてや深夏の滑り台だって、自然の摂理で成り立っている場所に人の手を加えちゃいけないんですよ!!」

「るような気がしたけど、そんなことは無かったわ」
「何だか私凹んでないっ!? 大きさ以前にメリハリも何もあったもんじゃないわよっ!! というか、蟻地獄ってチョイスがどうもおかしいんじゃない!?」
「緩やかな丘とは失礼な、ですっ! 真冬はこう見えても、人並みにはあります、人並みにはっ!!」
「何だよ滑り台って!? 明らかに二人の砂原と違って人口の遊具が設置されてるじゃねぇか!!」
「はっはー、照れるな深夏。顔が赤いぞ」
「照れてねぇ!! もし赤いのなら、それはお前に対する怒りがあたしの体の中の血液を沸騰させた結果だ!!」
「待って!? そんなどっかのキャベツ社長みたいなことになったら、死亡という名のBAD ENDに直行だよ!?」
「きょーじん★むてき★さいきょー!!」
「お姉ちゃんが壊れたっ!?」


しかし何というか……。
「うぅむ……胸を揉み夏」
「鍵、遠い先祖に会わせてやる、覚悟しておけ」
「揉み夏じゃ言いにくいか……むむぅ」
「いや、言い方の問題じゃねぇからなっ!?」
「そうねぇ、深夏のあだ名にしても『も』を付けるだけじゃナンセンスね……」
「知弦さんも何参戦してんだ!?」
頼もしい仲間が一人増えてくれた。これはおいしい。
「そういえば深夏、数学得意だったよな?」
全身の血液が沸騰しているらしい状態から回復した深夏に問いかける。
「え……あ、まぁ得意っちゃ得意だが……」

「おっπr2(パイアールじじょう)とか凄く響きが素敵だと思うんだが――」

突如として、深夏が俺の右腕を掴む。
……あれ?
「ちょっ、深夏!? その関節はそっち側に曲がらなアッー!!」

ベキョンッ!!

『……………………………………』

とても現実味溢れる、リアルな鈍音が生徒会室に響き渡る。

「……すっ、杉崎! この牛乳あげるからっ!!」
「会長の飲みかけというのは嬉しいのですが、カルシウムを摂取しても手遅れだと思います」
「まっ、真冬は近くの病院に連絡を!!」
「その気遣いも確かに嬉しいのだけれども、とても辛い深刻をされると思うんだ」
「今のはキー君が悪いわ」
「ですよね、反省してます。あと、凄く痛いです。骨が泣いてます」
「片方じゃ後味悪いわね……深夏、左腕もやっておしまい」
「そうですね、それは名案です…………えっ!?」
「……続行……倍プッシュだ」
「もしもし林檎? 今までハッキリと言えなかったけど、俺、林檎のこと大好きだったよ。今まで――」

バキョンッ!!

「ありがとう、君とアリエール」
「うっし」
「うっし、じゃないからねっ!?俺の大事な大事な腕が左右両方とも壊れるという重大ハプニングを前にして言う言葉とは思えないからねっ!?」
良いさ……愛、しっかり受け取りまし……ぐふっ。
こうして真昼間から、俺は両腕の骨を、てこの原理もビックリな物理的パワーによって粉砕されたのであった。


~生徒会終了後の帰路~

《椎名深夏視点》

「今日もなんだかんだで疲れたぜ……」
因みに、鍵の腕は驚異的な自然治癒力で回復……しなかった。
と言うか何だ、昨日の大車輪幽閉事件(ただの故障)について誰も触れないどころか、いつも以上にふざけた会議だった気が……。
「何だかとても曖昧で上手い表現だね。でもお姉ちゃん、楽しそうだったよ?」
「そうかぁ?」
ま、これを楽しいのに自覚出来ていないってことは、それほどその日常が日常らしくなってきたのかもな。
「でも、こんな日々が続くと、何時か疲れ果てて動けなくなりそうだ」
「そうだね……。でも、真冬達に残された時間は、もう少ないよ……」
真冬の言葉に、一瞬足が止まる。
……そっか。来年の卒業式と共に、内地直行だしな。
「早くドナーを探さないとな」
「命の時間っ!? 真冬達には余命すら残されていないのっ!?」
「冗談だって。でも、何だか……」
「……やっぱり、辛い?」
「へっ!?」
心を読まれた気がする。姉として、少し恥ずかしい。
「皆と別れるのが、辛い……?」
「その……辛くないって言ったら、嘘になるけど……」
「そっか……。真冬も辛くない、とは言い切れないかも……」
真冬が口を重く開いて、静かな口調で続ける。
「いつも冷静な紅葉先輩と会えなくなるのも辛い、ちょっとややこしいけど、周りを明るくしてくれる会長さんと会えなくなるのも辛い」
少し歯切れの悪い妹が、堪らなく心配になる。
そして、それと同時に、生徒会の皆のこと、そしてなにより、一人のことが気になってしまう。
「それに……」
そんなあたしの心情を知ってか知らずか、真冬は少し思いとどまりながらも、遠慮しがちに言葉を放つ。
「折角想いを伝えられた杉崎先輩に会えなくなるのも……辛い」
「―――っ!?」
一瞬、心が締め付けられるように痛くなった。
……何だろう、この気持ち。
その時は唐突だったために、思考することが出来なかった。
が、無意識のうちに気付いていたのかもしれない。

この気持ちは、あの時と同じなのだと。

「あっ……あのさ」
「ん?」
「真冬は、その……本当に鍵のことが好きなのか……?」

《椎名真冬視点》

突然、心に刺さるような何かを感じました。
何でしょう……この気持ち。
「……お姉ちゃんは」
「へ?」
「お姉ちゃんは……杉崎先輩のこと、嫌いなの?」
「えっ、あ、いやぁ……その……」
真冬はもう、確信していました。
「別に……嫌いってーか何というか……」
お姉ちゃんが……。
『…………』
一瞬、真冬達の間に沈黙が走りました。
気まずい状況、そんなことは分かっています。
それでも、真冬は言わなければいけなかった。
言ってしまえばきっと……もう、元には戻れないから。

「真冬は……好きだよ、杉崎先輩のこと」


~椎名家にて~

《椎名深夏視点》

「はぁ…………」
いつもより重いため息。
「…………」
いつもより長い沈黙。
分かっていた。真冬が、鍵に好意を抱いているのは。
「鍵が好き、か……好きなのか?」
姉としての気が籠った言葉を、誰も居ない天井に向かって呟く。
まるで重力に流されるかのように、はたまた天井から折り返されるかのように、その言葉は、私の心に跳ね返ってきて……。
「なっ、これじゃまるであたしが鍵のことを好きみたいに……」
……好きなんだよな、鍵のこと……でも……。
「だぁ~っもう!! 何でこういう時、素直に慣れないかなぁ……あたしって……」
実際、鍵への好意を自覚した筈だし、あたしは――

「お姉ちゃん、入るよ?」

いきなりの我が妹、参上。
「まっ、真冬!? ……ノックくらいしてくれ」
「あ、あぁ、ごめんつい……お姉ちゃん、どうかしたの?」
「いや、何でも! 何でもないぞ、うん」
つい自分でもおかしいと分かる程、動揺してしまう。
まさかあたしが鍵のことで頭を悩ませていた、なんて言えない訳だが。
「お姉ちゃん、聞きたいことがあるの……」
「真冬……なぁ、やっぱりあたしは――」

「やっぱり、ポテチはコンソメだと思うんだ」

「バッキャルゥ! 漢ならのりしおだろうがっ!!」
「いやっ、真冬女だけど!?」
「あぁ、悪い。余りに深刻な顔して深刻な雰囲気のなか深刻な足取りで深刻そうに口を開いて深刻そうに喋りかけて来たもんだからさ」
「真冬はどれだけ深刻なのっ!? と言うかお姉ちゃん、ポテチは梅とか言ってなかったっ!?」
「やっぱり梅は酸っぱい。そしてのりしおだけは譲れない」
「梅が酸っぱいというほぼ当然のことをおかしいという理由で路線変更っ!?」
「まぁあたしがのりしおに目覚めたのにはある理由があるんだが、それを説明するにはまず、紀元前に戻らなければ――」
「おっ、お……お姉ちゃん。もうひとつあるんだけどね」
真冬があたしのジャスティス、―のりしおの奇跡―エピソードを中断する。ここからが重要なんだけどな。
「杉崎先輩のこと、好き?」
「……へ?」
唐突に、異常なほど唐突に。
「好き?」
「うっ……」
単刀直入な我が妹の言葉。
鍵が好きなのか否かを、あたしは今問われてる。
好きだ。あたしは、鍵を既に異性として認めている筈だった。
あたしは自分の気持ちに嘘を吐くのは嫌いだし、他人に嘘を吐くのも嫌だ。
あの時、認めてしまえばこんなに楽なのだと知った筈だった。
このままでは駄目なのだと、自分自身が認めた筈だった。
あの時と同じだ。
今ここで、好きだと言えばいい。
そうすれば、このモヤモヤも解消されるし、何より鍵に対して、もう少し素直になれそうな気がする。
それなのに……。
「…………」
あたしは、その一言を言えなかった。
「……」
「好き、じゃ……ないんだ?」
「―――ッ!!」
その時の真冬の目は、曇り一つない、純粋に透き通った宝石のように光っていた。


《椎名真冬視点》

真冬はこの質問に、全てをぶつけました。
薄々、気づいていたんです。

お姉ちゃんが、杉崎先輩を異様に意識していることを。

はたから見れば、すぐに恋だと分かります。
ましてや、いつも近くにいる実の妹が、気付かない筈がない。
だからこそ、分かっているからこそ、気づいてほしくは無かった。
もしお姉ちゃんが杉崎先輩を好きになってしまえば、真冬は勝てる気がしなかったから。
でも、今まで真冬の面倒を見てくれた、誰よりも大切なお姉ちゃんに……そんなこと、したくなかった。
出来る訳が……無かった。

想っているのに伝えられない気持ちを、お姉ちゃんに味わってほしくないから。

だから真冬は、正々堂々、実の姉と戦う事にしました。
後悔してほしくないから、嫌いになってほしくないから、自信を無くしてほしくないから。
それでもお姉ちゃんが、好きじゃないと言えば、それまでです。
でも、もしお姉ちゃんが好きだと言えば、真冬はお姉ちゃんと正々堂々と戦います。
杉崎先輩がハーレムを目指そうと、真冬は自分のやり方で先輩に……鍵先輩に明確な想いを伝えたい。

お姉ちゃんには……負けたくない!

「……真冬、部屋、戻るね」
「えっ……あ、あぁ」
「……そうだ、お姉ちゃん」
「何だ、真冬」
「……明日、暇?」
「明日、ねぇ……明日は特に何もないし、暇っちゃ暇だな」
「そっか。うん、分かったよ」

「もしもし?」
「もしもし? 真冬だよ真冬っ!」


~土曜日~

《杉崎鍵視点》

「一体……どうなって居やがるっ!!」
会長は会議の議題を紙に書きなぐりながら。
知弦さんは何やら怪しい手つきでパソコンを弄りながら。
深夏は何処からか持ってきたサンドバッグを砂が零れるほどに叩きながら。
真冬ちゃんは鬼のような形相でテレビ画面と向き合いながら。

何故か……(また)トランプをやっていた。

さぁ、ここで一万五千年前まで遡ってみましょう。
「杉崎、戻りすぎ」
「おっと失礼。それでは、話は数時間前に戻る……」

プルルルルッ!!

「ファンファンウィーヒッタステーッステー 同じ風の中、っと……ん?」
折角人がスギザイルを楽しんでいたと言うのに、電話がかかってきた。とはいえ、俺に電話をしてくる人物など限られている。
一体どんな美少女からのお誘いだろうか。でへへ。

「もしもし?」
「もしもし? 真冬だよ真冬っ!」
「まさかのまふまふ詐欺っ!?」

真冬ちゃんだった。

ソーダ飴大好きっ娘を思い出し、少し微笑む。
が、そんな出来る主人公らしい回想もつかの間。

「ちょっと今から、生徒会のメンバーでお泊まりでもしませんか? 場所は真冬の家で――」

「OK、ジョン。確認を始める。俺、携帯電話持った? カメラ持った? 避妊具持った?」
「ジョンっ! 誰ですかジョンっ! そして避妊具は勿論カメラも要らないですっ!!」
「ふむ……今日は安全日か……。了解しました!」
「いやいやいやっ! そういう意味ではなくてですねっ!?」
「ハッ! まっ、まさか真冬ちゃん、今すぐにでも俺の子供が……HAHAHA、駄目じゃないか真冬ちゃん。こういう事は、もう少し考えないと――」

「……電話、切りますよ?」

「待ってぇっ! 生徒会メンバーで俺だけ、置いていかないでぇっ!!」
除け者にされるところだった。既に似たような扱いなのは、この際気にしないでおく。
「そこまで言うのなら……真冬も鬼ではありません。先輩、真冬に、自覚の無いまま世界を改変する力をくださいっ!」
そして彼女は鬼だった。何と言う鬼畜条件。
「その為にはまず、俺がポニーテール萌えになる必要がありそうなんだ」
「ポニーテールの中目黒先輩を杉崎先輩が……マーベラス!」
「それを素晴らしいと捉えられてしまうと、俺はすっごく不憫な気がします」
「さながら、同じ金銀時代の単身種族なのに、エ○パムなどと違って未だに進化系が出されないハ○ーセンのようです」
「きっと、ブラック・ホワイトではやってくれるさ……って、それ今重要!?」
「割と、です」
「割と重要なんだっ!?」


そして今に至る。うん、至る。
「ほらほら。折角集まったんだし、何かしましょ」
「いや、そんな怪しい画面のパソコンを弄っている貴女が言うべきことなのでしょうか」
何だろう、素人では分かりそうもない数字の羅列が広がっている。
あんまり深く追求すると、その深さの分戻ってこれなくなりそうなので、スルーすることにした。
「まぁ、椎名家に居るんですし、真冬ちゃんの好きなゲームでもやって盛り上がりましょうか」
「駄目です、このテレビは、真冬が先客です!」
最初からテレビでゲームをやっていたのに何を言うか。
しかし、気付けば真昼間の訪問から一時間。つまり十二時を過ぎているのだ。
「……見れなくたって、いいとも」
『(見たかったんだっ! こいつ、絶対いいとも見たかったんだっ!!)』
「……ま、土曜日だからやってないけど」
『(ハメられたっ!?)』
「女の子が『ハメられた』とか言っちゃダメですよー」
「杉崎先輩って、無関心の間だけ、女の子と心の会話ができるんでしょうか……」
「それはそれで、ぞっ、とする話だな」
「……会長、好きです」
「ほら見ろっ! 無関心なのに、告白への軽薄さは変わってないぞ、コイツ!!」
「前も言ったけれど、少しは会話に混ぜてあげないとね」
「わーいわーい」

「ウザい杉崎は放っておいて、トランプでもやるわよ」

『やめてぇえええええええええええええええええええええ!!』
最悪の一言だった。
「もうウザくて良いですっ! 会長が望むなら、ゾウリムシにだってなって見せます! ミジンコと共存してみせますっ!」
『っ!?』
「だから、トランプはやめてぇええええええええええええ!!」
「けっ、鍵が……あそこまで言うなんてっ!」
「杉崎……お願いっ☆」
「ふっ、やれやれ。仕方がありませんね」
『折れたっ!?』
と、総ツッコミを受けるものの、皆諦めた様子で、落ちついたようだ。
「それでは始めましょうか、会長……いや、ベルセルク」
「だからベルセルクっ! 何でベルセルクっ!! 何で私前からベルセルクっ!?」
「どうせやるなら、この前やり残したゲームとかがいいな」
「とは言っても、真冬は地球上のトランプゲームをやり尽くした感が……」
「無視っ!? 全員での無視っ!?」
「なら、アカちゃんが難しいからと言ってやらなかった『ダウト』でもやろうかしら」


「で、今に至る訳です」
「誰に話してるんだよ、お前」

※会長にダウトのルールを説明中...。

「それじゃぁ配りますけど……どうします、枚数」
「五人いるのに五十二枚だと割が合わないわね……付属のジョーカー二枚ともう一枚プラスしようかしら」
「ジョーカーが三枚だと一方的ですね……ここは前の時みたいに、五十二枚の内の二枚をランダムに抜くってのはどうですか?」
「それで行こうぜっ! そんじゃ、ランダムで二枚抜くぜっ!!」
「待って! ただやるだけじゃつまらないわ……罰として、負けた人は最初に勝った人の奴隷になるということでっ!!」
「いいの? 言いだしっぺは負ける法則があるのよ、アカちゃん」
「ふっふーん♪ 私は生徒会長、桜野くりむだよっ? 私が負けるなんてありえないってばぁ♪」
かつてここまで綺麗な死亡フラグを、俺は見たことが無い。

こうして、何が抜かれたのか分からない二枚のカードに気を配りつつ、一人十枚ずつのダウトを始める。
五人で仲良く円陣に座り、壮絶な殺気が張り詰める中、ジャンケンで順番を決める。
結果、知弦さん、会長、深夏、俺、真冬ちゃんの順番となった。
はてさて、俺の手札は……うほっ。
2 3 4×2 7 8 10 J K×2
まぁまぁ、と言ったところか。
「それじゃぁ、私が最初ね。Aよ」

『ち ょ っ と ま て』

何が起きたかって? 簡単な話さ。
知弦さん、行き成り手札十枚をAだと言って床にドーン!!
ダウト、と言う前にツッコんでしまったあたり、俺達は完全に芸人である。
「ダッ……ダウトだよ知弦っ!」
会長が思い切ってダウト宣言。貴方は偉い。
「ふふふ……本当にいいのかしら、アカちゃん」
「ふひゃっ! や、やっぱダウト無しっ! 今の無しっ!!」
会長が思いきれずダウト撤回。貴方は間違ってない。
「いやいやいや、今のはどう考えてもダウトが正解だろ会長さんっ!」
謎の会話テクにより、会長は一瞬躊躇ってしまったようだ。
知弦さんはまるで当たり前のように、手札を戻す。
狙っている……っ! この美少女、初手からダウトを宣告させることによって、自分の手札の減りを抑えたっ!!
ダウトは普通に、手札を無くせば勝ちとなる。
だが、最初から手札を補充しておけば、確実に対応したカードを出せる上に、相手のダウトを誘う事だってできるっ!!
「ふふふ……キー君、やはりダウトは好きみたいね」
「もちろんですよ、嘘か本当か、ツンかデレか、似たようなものです」
「ふふふ……さすがね、キー君」
「ふっふっふ……知弦さんこそ……」
『(一体、あの二人に何が……っ!?)』


※ここからは、心の声付きの会話をお楽しみください。

「それじゃ、会長のターンですよ(この勝負……長い戦いになりそうだぜ……っ!!)」
「うん……はい、A(さすがにこれなら……)」
『ダウトォオオオーッ!!』
「えぇっ!? 皆……何でわかったのぉっ!?(自身あったのにぃ~!)」
「自身も何も、会長さん……何故カードを五枚も?(最高でも四枚なのに……)」
「バレバレどころか四枚の内一枚を誰かが持っている時点ですでに有り得ない暴挙ですから(やはり……ベルセルクっ!!)」
そして深夏のターン。
「あたしのターン、ドロー!! あたしは手札から、フィールド魔法、オレイカルコスの結界を発動っ!!(これでこの部屋は、闇の闘技場となった……)」
「そういうゲームじゃねぇからこれっ!!(闇のゲーム……恐ろしや)」
「マインドクラッシュ!!(鍵。あたしの洗脳術、なめんなよっ!!)」
バリーン!
俺の心の中で、何かが砕ける音がした。
「って待ちなさい! 闇のゲーム禁止っ!!(危うく本気で洗脳されるところだったぜ……)」
「ったくワガママだよなぁ、鍵。ホラ、Aだ(この自然な感じ、バレるわけがねぇぜっ!)」

「みっ、深夏ダウトっ!!(私、カッコイイ!!)」

「Ω ΩΩ<ナ、ナンダッテー!!(Ω ΩΩ<ナ、ナンダッテー!!)」
何故か深夏は一人三役をしていた。
「ベルセルク会長、何故見破れたんですか?(珍しいこともあるもんだ)」
「わっ、私くらいになれば、相手が嘘ついてるかどうかなんて見抜けるものなんだよっ!!(実は思いつきで……。そしてベルセルクにはもうツッコまない)」
「くぅっ、ベルセルクさんを侮っていたみたいだ(これは油断できねぇ……)」
「ベッ、ベルセルクさんって何だろう……(テレビゲームに集中したいです……)」

「よし俺のターンだなっ!!(ヤバい、Aが一枚も無い……。だが、ここで戸惑っていては間違いなく知弦さんあたりに悟られるっ!ここまでAは一枚も出ていない。一気出しという暴挙に出た知弦さんとベルセルク会長が持っているとしたら……いや待て、知弦さんと会長が持っていなくとも、真冬ちゃんが四枚を KEEPしている可能性だってある。その場合、間違いなく俺はこのカードのいずれかを出す意味が無い。更には、二枚をランダムに抜くというシステムが、偶然Aを引きぬいた可能性もある。余計に俺のカードが通る確率が無くなってきているだと……っ!!よし、ここは4を一枚だそう。二枚というストックがある分、惜しくは無い。二枚出しは危険すぎる上に、この状況で4を失った場合ベルセルク会長などでダウトが発動、そして俺に4の順番が回ってくる可能性が高すぎる。一巡目から何故2すら出ないのかと思っていたが、これを上手く利用すれば……)」
この間役0.2秒。


「じゃ、俺はAっと(頼む……通れっ!!)」
『…………』
よし、通ったっ!!
「と思いきやダウト(あたしの目は誤魔化せないぜ)」
「何……だと……っ!!(あの僅か0.2秒間の目の動きを読み取られていたとでも言うのか……)」
だがこれでハッキリした。
真冬ちゃんはダウトを宣言しなかった。つまり、Aを四枚持っていない。
つまりAを持っているのはやはり、知弦さんとベルセルク会長の二人の可能性もある。
『…………(こいつぁ、面白くなってきやがったぜ!!)』
その時、全員の心が悪い意味で繋がった気がした。
「では真冬のターン!! 聖なるバリア-ミラーフォース-(決まった……真冬、魔法の筒を決めたとき以上のカッコよさですっ!!)」
「真冬ちゃんもダウトォッ!!(やっぱりこの台詞、カッコいいっ!!)」
会長がダウトを宣言する。
これで会長が手札を増やしまくると……って、何故かこの二人の表情が似てるような……一体何を考えているのだろうか。
「えぇっ!? 何で分かったんですか!?(がーん! 真冬、サイクロンを食らってしまいました……ガクリ)」
「わっ、私くらいに(以下略 (またまたなんとなくだけどね)」
「じゃぁ私ね、A(Aはアカちゃんかしら……)」
「ダウトォッ!!(私、キマってるぅ!!)」
「まさか……ベルセルクっ!!(会長が全てのAを……だからあんなにダウトを連発していたのかっ!!)」
「私のターン! Aを四枚っ!!(決まってる……これで生徒会のヒロインとしてまた一歩高みに近づけたわっ!!)」
『間違いない……奴は本物のベルセルクっ!!(A四枚的な意味で)』
「ダウトよ(まさか、ね……)」
「ギクッ!(何故……何故分かった!!)」
わーお、これって……。
「ベルセルク……これ……(こっ、これは……)」

~本音晒しageタイム終了~

『…………あれ?』
「ふっふっふ、実は全部Aじゃなかったんだよっ! 私ったら騙しの天才ねっ!!」
「結局騙せませんでしたけどね」
「どうなってんだ……Aを誰も持ってないなんて……」
深夏以外の生徒会役員も、無言のまま、困惑を隠せていなかった。


「まぁいいや。ゲームしようぜ、真冬」
「待たんかっ! 三行前の疑惑はどこ行ったよ!?」
完全に、消えた四枚のAをスルーし始めた深夏。
「うっせーな。グダグダ言ってると、パトリオットぶちかますぞ」
「愛国心パネェ、お引き取り願います」
「お姉ちゃん、スマ○ラってどこに置いてあるっけ?」
「確か奥の箱の中だったと思うぞー」
「おっ、ス○ブラなら最高で四人はできるなっ」
「悪い、真冬の使い込み方が半端無くて今コントローラー二つしかないんだ」
「二人用だと……? 許せるっ……!!」
理由:美少女であるから。
「って! 一体どんな風に使い込めばコントローラーが壊れるんだ!?」
「すっ、すみません……皆がニコニコする動画サイト用のプレイ動画で良く購入するんですけど……」
「……けど?」
「その度にレバーやらボタンやら壊しちゃうんですよねっ☆」
「取りあえずツッコミ所しかないことは分かった」
「妹よ、☆付ければ何でも許されるわけじゃないんだぜ」
「全くもってその通りだよっ! というか白熱の仕方おかしいでしょっ!?」
「真冬の投稿した動画にはいつも『レバガチャブレイカー』『破壊力の変わらないただ一つの指』『どうしてこうなった』のタグが付いてるくらいです」
「いつもっ!? 本当に毎回コントローラーブレイクしてんの!?」
「一体幾つ買いなおしたっけな……幾つだっけ?」
「思い出せないくらい壊してるということも分かったよっ!」
「確か、全部白い奴だった気がする」
「白? 確かにGCコンは白があるけど……」
因みに、真冬ちゃんが壊したものとは、全てGCコンだと言う。
なるほど、リモコン派ではなくGCコン派なのね。
「あぁ、あれは元々色が付いていたものなんですけど、指を高速に動かしすぎて塗装が剥がれてしまったんですよ」
「君は、任○堂に心から謝罪するべきだと思うんだ」

塗装の問題は聞かなかったと言い聞かせ、深夏と真冬ちゃんの試合が始まった。


~三十分後~

随分と長い闘いだな……スマブラとは思えないぜ。
何故この姉妹は、ここまで戦闘、そしてゲームという要素に滅法強いのだろうか。
でも、おかしいよねこれ。何でこんなに時間が過ぎているのに、彼女達のル○ージは残機5の0%なんだろう。タフガイすぎるだろ、この弟。
これはもう、任○堂も真っ青なのではないだろうか。永遠の二番手の独壇場だった。
「それよりも真冬ちゃんっ! 塗装っ! 塗装剥がれてるっ!!」
「アカちゃん、あれは元から白かったのよ」
「いやいやいや知弦さん、間違いなく元はオレンジだったんですがっ!?」
見なかったことにはできなかった。そろそろレバガチャブレイクの時間だろうか。
上級生組二人と共に見守る中、人間PARの異名を持つ真冬ちゃんのAURAが……変わった。
「ほぅ……中々やるじゃないか!」
『…………』
「っく……小癪なっ!」
『(真冬ちゃん、完全に台詞が悪役だぁああっ!)』
「くっ……こうなったら奥の手っ! お姉ちゃん、覚悟っ!!」
「ちょっ、真冬何を――」

「もっと腕にシルバー巻くとかSA★」

「ルールとマナーを守って楽しくデュエルしよう」
と言ったところで、最早このゲームにルールという壁は存在しなかった。
「汚いなさすが廃人きたない」
「これこそが百九式目の策"もっと腕にシルバー巻くとかさ"です」
まさかの百九式目伏線が拾われてしまっていた。
と言うよりも、良く分からん鎖で繋がれたままというのも可哀想なので、深夏を解放してやる。
「大丈夫か、深夏」
「あぁ、大丈夫だ。……真冬、てめぇはあたしを怒らせた」
『っ!?』
「絶対に……恨み晴らすからなぁぁぁああああっ!!」

どうやら俺は、とんでもないモンスターを召喚してしまったようだ。


「真冬……覚悟はできてるな? 十ツ星神器……魔王っ!!」
「待て待て待て待て待て待て待て待てっ!?」
何故お前は、想いを力に変える生物神器を持っているんだ。
本格的に天界人説が広まってきているのは、敢えて呑み込んでおこう。喉の奥底に。
「鍵、あたしのパワーを見て、腰抜かすんじゃないぞ」
「深夏こそ、俺に凄いパワーを見せて、腰を抜かさせるんじゃないぞ」
「言ってる内容が同じ何だけどっ!?」
会長が、珍しくツッコミ担当状態。
そもそも、何故俺に聞くんだ、深夏よ。
雌雄(?)を決する戦いの火蓋が切って落とされようとしていたまさにその時――

「やっと見つけましたわ。杉崎鍵とそのハーレム達」

わたくし、参上な様子でやってきた方が。
『勝手にハーレムにされてるっ!?』
「心温まる、ナイスな一言でしたね」
グッジョブ、リリシアさん。
「で、何か御用ですか、リリシアさん。そもそも何故俺がここに居ると分かったんですか? 後はあれですか、ビーズを爆弾にでも変えにきたんですか?」
「一つ目の質問の前に、二つ目の質問が気になるのですがっ!?」
「あいや、流れ的に言ってみたんです。声優繋がり的な意味で」
「にーさま、にーさま! そーゆーメタメタなはつげんはしちゃいけないんだよー?」
アルミニウム星人、登場。
「エリスちゃん居たんだ。こんにちは」
「こんにちは、にーさま!」
「わたくしに(まともな)挨拶が無いのは仕様と見ましたわ……」
『…………ロリコンだからね……』
「こらこらこらこら、俺は決してロリコンではないっ!」
なんだかとても複雑な気分だ。
一歩間違えれば、俺は、エリスちゃんをさらっていたかもしれない。
「そんなことはさせませんわ」
「あなたも何ですね、以心伝心 Ver一方通行」
これはもう確定事項なのだろうか……俺、発言どころか思想の自由すらも奪われて無い?
「で、本当に何しに来たんですか」
「特にわたくしから用件はありませんことよ」
尚更、何故来たんだこの先輩。
「あのね、あのねっ。エリスが、にーさまにあいたいっていったら、よろこんでしょーだくしてくれたのっ!」
「そっ、そうなんだ……。相変わらず、言葉の知識も凄いね」

「うん! エリス、しょーらいは、にーさまのおよめさんだもんっ!」

『っ!?』
あ、何これ。あれですか、また嫉妬ですか。やだなぁもう、皆ツンデレ何だから――
『…………(刺すような視線)』
「何で毎回俺が睨みつけられるんですか!? エリスちゃんではなく、エリスちゃんが来たときの俺が気にいらないんですか!?」
……嫉妬じゃないね、目線暴力だね。


「だっ、大体ですね!」
ここぞとばかりに、流れに身を任せて反論を試みる。
「この生徒会は、不思議空間すぎます!」
「今に始まったことじゃないと思います……」
真冬ちゃんは目の位置一つ変えず、ゲームの液晶画面と向き合いつつも、小さく聞こえづらい嘆息をした。
我ながら、愚問だったようだ。
「にーさま、にーさま! これこれー」
エリスちゃんが、何かを見つけたような顔をし、これと呼ぶものを見せてくる。
『……原作っ!?』
リリシアさんも含む、計六名が、意外なものを見るような目でエリスちゃんの持つ原作を見つめる。
このままでは始まらないと思い、とりあえずエリスちゃんに話の続きを催促してみた。
「……えーっと、エリスちゃん。原作の第六巻『生徒会の六花』がどうかしたのかな?」
「ここだよ、にーさま!」
ポンポン、と指でとある箇所を指すエリスちゃん。
どこを指したかと思えば、ページ数すら印刷されていない、事実的4ページ目の"生徒会の配置"を示した箇所だった。
正確には、そのページの上部分……。
『こく……ばん……?』
またまたエリスちゃんを除く六人が、顔をキョトンとさせる。
「でね、ひゃくページめ~♪」
ルンルン気分で今度はページが捲られてゆく。
「第四話~抗う生徒会~ ……? これがどうかしたの?」
「はちぎょーめっ!」
うんうん、八行目ね……ハッ!?
バシィンッ!
「ひゃうっ」
何故会長がっ!? いや会長、声が可愛いですけど、今はとてもそんなこと気にしてられる状況じゃないです。
俺はその事実を察知したと同時に、取りあえず原作を取り上げる。
「エリスちゃん。皆が敢えて黙っていたようなことを、ここで根掘り葉掘り遺骨まで掘りだしてはいけないんだよ」
「何、キー君。その慈愛に満ち溢れた表情は」
「だって、こくばんじゃなくてはくば、ふわっ!」
とっさにエリスちゃんの口を塞ぐ。俺、完全に犯罪者を見るような目線を感じるんだが……。
まぁいい。このままでは、セッキーナに迷惑がかかると思うんだ、うん。
「本人に多大な迷惑もかけることだし、ここは引き下がろう、エリスちゃん」
ちなみに、現在はちゃんとホワイトボードに修正されております、ご安心下さい。
「ちみちみ……それならホラ、わたすものがあるんじゃないかね」

「このソーダ飴、とってもおいしいよエリスちゃん」

「っ!? それ、真冬のソーダ飴ですっ!! あぁ、尊い命が……」
「何故だろう。普段の皆からの接し方を思い出してみたら、ソーダ飴のほうが優遇されている気がしてならないよ!?」
「杉崎の命って尊いの?」
「聞かないでっ!? そこで聞かれるとどうしようもなく辛いからっ!!」
俺の命、儚すぎるよっ!



  • 最終更新:2010-09-27 18:20:47

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